第3話 サンドボックス

文字数 1,797文字

 第1話に書いたとおり、私が最初にアマチュア作家が投稿できるオンライン小説に出会ったのは、「アルファポリス」だった。もう二十年くらい前だったと思う。
 その後、アニオタ……失礼、アニメファンで、社会人になってからその業界に関わるようになった子供たち(娘と息子)から、「小説家になろう」の話を初めて耳にしたのは何年前だったろう?
 『君の膵臓を食べたい』の大ヒットをきっかけにちょっと読んでみたが、自分にはピンとこなかった。おそらくピックアップも良くなかったとは思うが、子供たちも「なろうは父には合わないよ」と言っていた。

 そもそも私は、ファンタジーが苦手なのかもしれない。
 世界三大ファンタジーと言われる中で、私が好きな作品は『アースシー(ゲド戦記)』だけ。『指輪物語』も『ナルニア国物語』も途中で挫折したし、四番目のファンタジー『ハリー・ポッター』もピンとこなかったくらいだから、ラノベやオンライン小説で主流を占めるファンタジーを理解する感性が欠けているのだろう。
 『ゲド戦記』は、ファンタジーと言うよりSF作家のアーシュラ・K・ルグィンの世界観が好きなのだと思うし、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』が好きなのは、大人も楽しめる児童文学だからだろうか? じゃ、ハリーポッターはなぜダメなの? と言われてしまうかもしれないが、それは好み=感性の問題。

 話が少し違う方向に行ってしまった。
 『君の膵臓を食べたい』のタイトルに私は強く惹かれたが、すでに「本屋大賞」として紹介された後だった。私にとっては、文学賞入選作でも世間に知られた作家の作品でもない、久々に読んだ知らない作家(失礼)の小説だった。
 その『キミスイ』が、「小説家になろう」に投稿する前に「文学賞に落選し続けた」と何かの記事で読んで、なるほど……と思った。余命宣告された少女と少年の出会いという「よくある話」に、読者の期待や予想を裏切る「衝撃の結末」。これは評価が別れるかもしれない……と。
 それにしても、この小説を「小説家になろう」からピックアップするのは、砂嵐のあとの砂漠で宝物を掘り当てるくらいの感じだったのではないかと思った。

 自分の僅かな経験で語るのもどうかと思うが、小説を「磨けば輝く原石」に、投稿するサイトを「砂」に喩えると……
「小説家になろう」は時々「砂嵐」に見舞われる「砂漠」のように見える。
「エブリスタ」は「砂丘」で、一度原石を落としたら誰も拾ってくれない。
 一方で、「NOVEL DAYS」は「砂場=サンドボックス」のように感じた。

 それはそのまま読者数の違いでしょ? と言われてしまうかもしれないし、システム開発の現場で使われる「サンドボックス」は周囲のシステムから保護された環境だから、IT系の仕事をしている人は逆に違和感を感じるかもしれない。
 しかし「NOVEL DAYS」は、主催している講談社があまり作家に干渉しない——よく言えば自由な雰囲気、悪い言い方をすると放置プレイ的(笑)な——環境が、私のように経験の浅い作家にとっては「書きやすい」「投稿しやすい」自由に遊べる砂場のような雰囲気になっていると感じる。
 NOVEL DAYS全体が、書き手同士の緩いコミュニティーの場になってるのかもしれないが、作家と作家の距離感が近いと感じるし、ある日突然よその子が入ってきて遊んでいても、「あなただれ? 出て行って」と言われてしまう団地の砂場のような排他的な雰囲気は感じない。(笑)

 その一方で書き手の作家さんたちはかなりレベルが高いように思う。須崎さんのようにプロの小説家もいらっしゃるし、小説家ではなくても、なんらかの作家さんやライターさんが多いのだろう。

 私にとってもう一つ欠かせない要素がある。それは「大人」が主流であること。
 さすがにNOVEL DAYSでも私は最高齢だと思うが、第2話で触れたオープンコミュニティーのアマチュア作家には、中高生が多いのに驚いた。そんな彼らから見たら、私など「お前はもう死んでいる」部類だろう。

 前2話より少し短いけれど、今日はこの辺で。
 年寄りはついつい話が長くなるので、適当なところで切り上げる知恵も身につけないと。(笑)
 次は、NOVEL DAYSでの作家さんとの関係性を少し書いてみようと思う。
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