夜道1

文字数 1,697文字

バスが来るまで30分ある、歩いて帰って20分
酔っぱらってるしどうしようかと思ったけど、秋の涼しい風に歩いて帰るのもいいかもしれないと、最近出て来たお腹の事や、今日食べた唐揚げの事や、健康のことなど何だかんだ考えて、結局歩いて帰ることにした。
同棲を解消したばかりの一人暮らしは、かなーり気楽にしている。
「もう、ゆう君にはついていけない」とかって言われたけど、浮気してたのか他に好きな男が出来たんだろうな、正直言うとショックよりもホッとした気持ちが強いのに自分でも驚いた。
好きという気持ちよりも、うざいという気持ちの方が勝っていたって事に本当に驚いた。

夜風に汗ばんだ体が冷えていく、月は明るく道を照らしていて何だか気分が良い、えーと、昔ならった歴史の授業だったっけ?
もちづきがどーとかって和歌だったっけ?えらーい人がこの世の春を歌にしたんだよなたしか・・
藤原のなんちゃら、なんだっけ?あー、そこまで出てきてるふじわらの?
右手にコンビニ左手に公園、この道を抜けて右に曲がり坂を上がって、もう少しでマンション到着!一人じゃちっと家賃がきついけど広いしなー、えっと、もちづきの欠けたることも・・?
とかだった、ふじわらのーーー?なんてことを思いながらダラダラと家路に向かっていた。

コンビニからだったか、シッカリと見ていなかったのでわからない、女の子が泣きながら駈けてきた黄色いワンピースに髪をボブに切りそろえた女の子、5歳?4歳?
小さな子の事はよくわからないが、周りを見渡しながらスマホを出して警察に通報すべきかどうするか?だって深夜10時、いや、今どきの親は10時ならありなのか?
コンビニから出て来た?母娘げんかか?
など思考をめぐらしながら、とりあえずコンビニに入って、女の子とコンビニに入ったら変な疑いをもたれることなく、そうだ、そのままコンビニに預けたらいいんだ、そう、そうしよう

女の子は真っすぐにこちらに来た。
顔を抑えて泣きじゃくっている「・・・が・・が見てる・・」あーもうめんどくせー
知らねえよ、知らないがこのままにして何かあったらこちらの責任にされてもかなわない、コンビニの監視カメラには映っているだろうし
「えっと、どうしたかなぁ?コンビニから来たのかな?パパとママも一緒かな?」
「あっ・・・あ・・・見てるっ・・から・」
「そっかそっかうーん、コンビニ戻ろうねー」
手を引くべきか背中を押すべきか、どうしよう?
黄色いワンピースから華奢な足とサンダル、と、つむじが見える、足も手もケガの様子はない
あーもう、コンビニを振り返り公園をみて、道を見渡して、誰も来ている様子はない

こっちが泣かしているとかって思われないよな?あーめんどくさいなぁもう、さっさとコンビニにつれていってオサラバしよう、さっきまでいい気持ちだったのに
マジでめんどくさ、虐待とかしらんし

しゃがんで、声をかける「だいじょうぶだよーコンビニ戻ろうねー」
「あっく・・うっ・・みえ、みえるのだいじょうぶ・・っく」
「うーん、だいじょうぶだよーだいじょうぶだからもどろうかぁ?」
「もどるとぉ・・だいじょうぶっ・・なの?みえるのぉ・・」
半歩こちらに寄ってきた、心を許してくれたのか
何言ってんだかしらねーけど、あんたをコンビニに連れて行ったらこっちが大丈夫なんですよ
あー早く帰りたい、歩いて帰るんじゃなかった。

ゆっくりと顔をあげてこちらを向いた女の子の
眼窩をみて思わず小さな悲鳴をあげた
そこには目が無く真っ黒とぽっかりした穴があいていた。
あまりの衝撃に腰を抜かしたのか立てない、這うように後ろにさがった。

「みえるの、わたしがみえるの、だいじょうぶになるの?」
女の子の後ろに目玉が空に浮かんで、女の子を見ていた。

あひ!情けない悲鳴をあげて何とか立ち上がろうとするが、眼球が自分の眼球が
目の奥でぐるりと回転した。
あぐがぁー!出る!出ていく、慌てて両手で両掌で目を抑えるが、間に合わない
嗚呼、ああああ、うずくまって両手で顔を押さえている俺の背中がみえた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み