第18話 直感

文字数 887文字

とはいえ誠一は横山が言うことが信じられなかった。
サチに連絡をしてみようと思った。
ただもしそれが祥子だとしたら、二人だけにしか分からない質問をした場合、それが誠一だとばれてしまう。
だから誠一は思い切ったことを考えていた。

「もしよければ会いませんか?」

この質問だと唐突過ぎるかもしれない。
あれから連絡のやりとりを一度もしていないのだ。
どうすれば不審がられずに質問できるのだろうか。
誠一は考えた。

「他にもおすすめなカフェはありますか?」

これで行こう。
ある意味掛けではあった。
確実な方法ではない。
でもそれくらい遠回しに聞くしか可能性はないと思った。

数日後、連絡が返ってきた。

「神保町に絵本専門の本屋があるんですが、そこは好きです。本屋の中に小さいカフェがあります」

誠一は賭けた。

「実はそこに一度行ってみたいと思っていました。そこには今度いつ行く予定ですか? もしご一緒できたら嬉しいです」

これは祥子に対する裏切りになるのだろうか。
誠一はメールを送る時に躊躇った。
でもその気持ちに祥子のためだと弁解した。
誠一の葛藤とは別に、サチからは意外とあっさり連絡が返ってきた。

「ハジメさんのご都合はいかがですか?」

サチと会うのは週末に決まった。
一応、横山にも連絡をし、サチが祥子だった時のために横山にも来てもらうことにした。
待ち合わせ場所には横山にいてもらい、誠一は別の場所で隠れていた。
誠一の不安は的中した。
そこに来たのは祥子だった。
ただ祥子一人ではなく、幸恵も一緒に来ていた。
どういうことだ。
サチがやはり祥子だったというのか?
それともサチは幸恵か?
店内が狭いため、誠一が店に入るとばれてしまうのは明らかだった。
仕方なしに、誠一は横山に終わったら連絡をもらうようにメールを打った。




「サチは祥子さんだった」

それから横山から言われた言葉は意外な言葉だった。
実際祥子が来るのを目撃したのにも関わらず、誠一はまだ横山の言葉を信じられなかった。
何かの間違いだ。
それは誠一の直感がそう言っていた。
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