8月5日(木)【11】2回目の乗り換えでいつも寝てしまう

文字数 481文字

「あっつ」

 玄関に入ると、11日ぶんの熱気がたまっていた。久しぶりの家の匂い。

「あきクーラーつけて」
「うん」

 ぼくはたたみ部屋に上がり、暗闇の中に腕を突き上げて蛍光灯のヒモを引っぱる。5分すすめている柱時計は21時22分を指していた。

 母とぼくは、4時間17分の電車旅を終えた。おばあちゃん家から運んだ斜め掛けのボストンバッグは、昨年よりも楽に運べた。

 クーラーのスイッチを押すと、カビのにおいが最大風速で顔面にあたる。田舎の太陽光をため込んだ顔と腕と足から、火照りを解放する。焼けた肌のかおりがする。

 いそぎTシャツを脱いで洗濯カゴにぶちこむと、遅れて冷え始めた冷気をまんべんなく上半身にまぶした。

 取り分けておいた衣類をパンパンビニール袋から取り出し、洗濯カゴへ。濡れた透明ビニール袋から歯ブラシセット取り出し、元いた台所へ戻す。

 1万円ぶん厚くなった財布から1万円札を抜き取ると、勉強机右斜め上の小引き出しを開き、お札専用財布に折れないようにさし込む。1万円ぶん軽くなったマジックテープ財布と並べてしまったら、慣例の帰還セレモニー《ただいまお布団ダイブ》。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み