第71話 オムカレーセット

文字数 341文字

 彼は、顔色が悪く、話すのも辛そうだった。有希は、後先も考えずに、実家まで押しかけて来たことを後悔した。
 これでは、本当に彼に嫌われてしまう。いや、もしかすると、こういうところを嫌われて、別れを告げられたのだろうか……。
 自己嫌悪に陥りながら、一人店舗に戻ると、彼の母親が、にこやかに迎えてくれた。
 
「もう、お話はすんだの?」
「はい」
「よかったら、何か召し上がって行ったら? でも、この時間じゃ、お夕飯に差し障るかしらね」
「いえ。夜は、いつも一人なんです。今日は、ここで夕飯にしようかな」
「あらうれしい。じゃあ、これ」
 彼の母親が、メニュー表を差し出した。
 こんなことをしたら、余計に嫌われてしまうかもしれない。そう思い至ったのは、オムカレーセットとアイスティーを注文した後だった。
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