蕪を切れば良いのだ!

文字数 977文字

 さて、気持ちが(ふさ)ぐ話しか聞こえてきませんね。
 そんな時こそ、おバカな話を書こうじゃありませんか!

 昨日、私はとても疲れていました。というか、今週はずっと、とても疲れ続けていました。
 日中、仕事中に夜ご飯は何にしようかと想像しました。少し前に買った鶏つくね、蕪、舞茸が冷蔵庫に眠っています。そろそろ古くなっちゃうし、あれを食べなくちゃいけない。鶏だしスープをとって、つくねと蕪と舞茸を煮込み、卵で閉じようと考えていました。疲れているし、身体に優しそうです。
 しかし、仕事から帰ってきた私は、疲れていたので夕飯の準備をするのが心底いやでした。
 冷蔵庫の中には、作り置きのシチューもあります。簡単に、あれを温めて食べれば良いのではないかという気もします。
 しかし鶏つくねと蕪と舞茸は先週買った物、そろそろ食べなくちゃいけない……、なにより今日はシチューの気分じゃない。
 ご飯の準備が面倒くさい、でもつくねスープを作った方が良い……その狭間で揺れ動いた私は、必死に自分に言い聞かせました。
・鶏だしスープ…市販の出汁パックを煮出すだけ
・舞茸…手でほぐすだけ
・つくね(生)…市販の出来合いのもの、火を通せば良い
 つまり、調理らしい調理といえば、蕪の皮をむいて切るところだけです。
 でも面倒くさい! でもつくねスープ作るべき! でも面倒くさい! でもつくねと蕪と舞茸そろそろ使わなくちゃ!

 うおおおおぉぉぉぉーーーっ!

 となった、私は、
「蕪を切れば良いのだ!」
「蕪を切るだけで良いのだ!」
「蕪を切れば良いのだ!」
「蕪を切るだけで良いのだ!」
 と叫びながら冷蔵庫を開け、つくねと蕪と舞茸と卵を取りだし、まな板と包丁を準備しました。
 ここまで準備したら、もう作るしかないっ…!
「蕪を切れば良いのだ!」
「蕪を切るだけで良いのだ!」
 叫び、いよいよ自分を鼓舞します。

 ……。
 ふと、一人きりで「蕪を切れば良いのだ!」と叫び続けている自分を冷静に眺め、その滑稽さに笑いました。
 バカバカしすぎる話ですみません。
 いい年した女が「蕪を切れば良いのだ!」と叫び続ける様を想像して、少しでもクスリとして頂ければ幸いです。

追伸
 ちなみに叫びながら作った鶏つくねと蕪と舞茸の卵とじスープはとても美味しく、ペロリと完食しちゃいました。
 後方視的に言うと、作って良かった。

二〇二一年一月七日
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