第9話 第二章 『森のコテッジ』③ 手違い
文字数 1,007文字
慌ててなだめようとしたが、かわいそうな負傷兵は怒ったように消毒液のボトルを掴むと、献身的な看護師目がけて投げつけた。
が、危険を察知してサッと身を避けた晃子は、その素早い動きのために手に持っていたキャンドルのロウを数滴こぼした・・手負いの若者の肌の上に。
今度は悲鳴も上がらない。ただ一瞬その目が大きく見開き、青い炎の矢が空間に浮かんだ。が、何も焼き尽くすほどの威力はなく・・消えた。
その後はただ両腕に顔を埋めて、何やら呪いの言葉を吐いている。
晃子は消毒液のボトルを拾い上げると、もう一つの武器・・手にしたキャンドルを見つめた。
火のない室内に長くいるうちに底冷えがしてくる。
傷ついた相手のことはしばらくソッとしておき、ちょっと別の部屋を探索してみることにした。
コテッジは外観からは一部二階建てのようだ。が、このリビングのもう一つのドアから続くスペースとその先のキッチン以外の扉は全て設錠してある。階段部分もそんな扉の中らしい。
ロウソクの柔らかな灯りに照らし出されたキッチンは、すぐにでも料理がしたくなるような快適な設えだ。が、棚の中には、ヤカンと小さな鍋、数枚の皿やカップがあるだけ。
しかしその先の収納倉庫の棚に並んだ箱の中には、沢山の食器類や調理器具がしまわれていた。いくつか取り出してみると、全てブランド物の高級品だ。
・・晃子は突然、自分が見知らぬ人の家に不法侵入をしていることに気づいた。このコテッジの当主がもし今、突然やって来たら・・。
が、リビングの床に寝ころんでいる異形の存在に、なぜかその心配は全くないような気がした。
倉庫の奥のドアを開けると水道管やガスボンベが設置してあり、その棚には乾いた薪が積んである。そこから外に出る扉を開けてみると、強い日射しが気持ち良かった。
その光で、段ボールの中に入っている新聞の束の一枚を取り出して見てみると・・その日付は数年前のものだ。
晃子は何本かの薪と古新聞を持って、リビングに戻った。
新聞と細かい薪に火を点け、よく乾いた薪を乗せた。そのうち一気に勢いよく燃え出し、太い薪を何本か加える。
やがて辺りの空気が溶け出したように柔らさを増し、部屋の中を漂いはじめる。
燃える炎が温かな色合いをもたらす中・・ソファを盾に翼の闇を被って眠る姿は、すっかり空気の中に溶け込んでしまっているようで・・本当にそこにいるのか気配すら断っている。
が、危険を察知してサッと身を避けた晃子は、その素早い動きのために手に持っていたキャンドルのロウを数滴こぼした・・手負いの若者の肌の上に。
今度は悲鳴も上がらない。ただ一瞬その目が大きく見開き、青い炎の矢が空間に浮かんだ。が、何も焼き尽くすほどの威力はなく・・消えた。
その後はただ両腕に顔を埋めて、何やら呪いの言葉を吐いている。
晃子は消毒液のボトルを拾い上げると、もう一つの武器・・手にしたキャンドルを見つめた。
火のない室内に長くいるうちに底冷えがしてくる。
傷ついた相手のことはしばらくソッとしておき、ちょっと別の部屋を探索してみることにした。
コテッジは外観からは一部二階建てのようだ。が、このリビングのもう一つのドアから続くスペースとその先のキッチン以外の扉は全て設錠してある。階段部分もそんな扉の中らしい。
ロウソクの柔らかな灯りに照らし出されたキッチンは、すぐにでも料理がしたくなるような快適な設えだ。が、棚の中には、ヤカンと小さな鍋、数枚の皿やカップがあるだけ。
しかしその先の収納倉庫の棚に並んだ箱の中には、沢山の食器類や調理器具がしまわれていた。いくつか取り出してみると、全てブランド物の高級品だ。
・・晃子は突然、自分が見知らぬ人の家に不法侵入をしていることに気づいた。このコテッジの当主がもし今、突然やって来たら・・。
が、リビングの床に寝ころんでいる異形の存在に、なぜかその心配は全くないような気がした。
倉庫の奥のドアを開けると水道管やガスボンベが設置してあり、その棚には乾いた薪が積んである。そこから外に出る扉を開けてみると、強い日射しが気持ち良かった。
その光で、段ボールの中に入っている新聞の束の一枚を取り出して見てみると・・その日付は数年前のものだ。
晃子は何本かの薪と古新聞を持って、リビングに戻った。
新聞と細かい薪に火を点け、よく乾いた薪を乗せた。そのうち一気に勢いよく燃え出し、太い薪を何本か加える。
やがて辺りの空気が溶け出したように柔らさを増し、部屋の中を漂いはじめる。
燃える炎が温かな色合いをもたらす中・・ソファを盾に翼の闇を被って眠る姿は、すっかり空気の中に溶け込んでしまっているようで・・本当にそこにいるのか気配すら断っている。