(四)

文字数 220文字

 しばらくするとビルから明が出て来るのが見えた。
 明は私の方へ歩いてきて「ここで何しているの?」と聞いてきた。
「あんたこそ、こんなところで何してたのよ」
 私は背の低い明を見上げるようにしながらそう答えた。
「大事な人と会ってた」
「大事な人って、木下のこと?」
「違う」
「じゃあ、誰なのよ」
「誰だっていいだろう」
「誰もいないんでしょう」
「いるよ」
「ウソ。だったら。このビルの中にいるの?」
「このビルにはいないよ」
「じゃあ、どこにいるのよ」

(続く)
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