『マタニティ・ショック！』
文字数 3,697文字
「これはばっちりわかりますよー。幸せに吐き気って、つまり、『つわり』、ですよね」
（どうしたのかしら、いつもなら栞理はこういう超解釈大好きですのに、すこし妙ですわね……）
そんなとき、君たちは言う。『私の幸せににはなんの取り柄もない！ 貧しくて、汚くて、みじめに自己満足しているだけ。だが私の幸せには、生存していることを正当化させよう！』
そんなとき、君たちは言う。『私の理性にはなんの取り柄もない！～
～（理性、徳、正義についての取り柄がない云々を中略）～
そんなとき、君たちは言う。『私の同情にはなんの取り柄もない！ 同情とは、人間たちを愛する者が
そういうことを君たちは、もう言ったか？ そういうことを、もう叫んだか？ ああ、そういうことを叫んでいる君たちを、聞いたことがあったなら！
「『私たち』とわからないチームに混ぜないでくれたまえ。
これは、先ほどの『君たちが体験する最大のこと』にかかっている言葉なのだよ。
ひとみ君、ツァラトゥストラを一言で言うと、どういう人物だと君は思う？」
「そうなんですかあ……」
頭の上にクエスチョンマークをつけて首をかしげていると、早乙女先輩が湯気の立つポットをもって帰ってきた。
「なるほど、もしプラスが１００あったとしても、マイナス１が掛け算されると、マイナス１００になる。
１００×（－１）＝－１００
ということか。面白いな」
「まあまあ、もうちょっとですわ。
その、マイナス方向の掛け算が、先ほどの『体験する最大のこと』なのかしら。とおもったんですの」
そうすると大きな値ほど、むしろ逆転してしまうということだな」
とにかく数字がでてくると脳は緊急停止してしまうのだ。
それでは、おみごとついでにひとつ、これ、なんですけど」
もちろんキリスト教には「前世」という概念はない。
しかし転生モノが流行っている昨今、何が起きるかわからない。
もしほんとうに前世だとしたら、栞理先輩の男の子だった時代の姿が読めるんだわ。なんて、ひとみの微妙な胸はなぜだか高鳴るのだった。
