満月亭くろふね
文字数 3,845文字
きょうはてんこ盛りの日だ。
お客さんのいない店内で、カウンターの隅っこに座り、ひとり夕ご飯を食べる。
油通しをした野菜がシャキッとうまい。
下の方からほじり出すように引っ張り出した縮れ麺は、スープとからんで味わい濃厚。
厚く切ったチャーシューは、ほどけていくほど柔らか――
ってことは知っている。
でも、一枚しか入れてくれてないから、それはもうちょっと後回し。
裏メニューっていうより、まかないなのだが、父さんの作る料理はどれも最高。
けれども、繁盛するか否かはそれとは関係ないらしい。
もともと流行ってないラーメン店だけど、隣の「とどろき屋」が休みだと、なおのこと人が来ないのだ。
とどろき屋は一応とんかつ屋だ。
このあいだ両親がケンカしたとき、母さんを誘い、「父さんへの当てつけ」という名の偵察にいったら、やっぱり、出しているのはとんかつだけじゃなかった。
生姜焼き定食や豚バラ炙り丼、角煮に冷しゃぶに豚こまのカリカリ揚げとか、もう、メニュー見ているだけでおなかすくシステムが発動した。
豚を食いたきゃここへ行けとSNSで話題になっただけのことはある。
店主は小さいころから知っているが、強面で見た目どおりの頑固さ。
うちの父さんはお客さんに文句を言われてペコペコ頭を下げる方だが、とどろき屋のおっちゃんは「ここは俺の領分だ。出て行け」といったとかいわないとか、そんな炎上騒ぎも物ともせず、どっしりと構えている。
逆に怖いもの見たさというのか、おっちゃんの人柄込みでの繁盛店。
ご飯時ともなれば行列ができることもしばしば。
待ちきれない人たちがうちへも流れてくるというわけ。
うちは創業からずっと木曜日が定休日で、とどろき屋は火曜日が定休日。
とどろき屋が繁盛するにつれ、火曜日の人通りの少なさはじわりじわりと当たり前になっていった。
だからといって定休日を同じにするというのは父さんにとって敗北宣言みたいなものらしい。
日本男児たるもの、戦い続けなければならないと、こだわり方が別の方へ向いている。
プライドってやつが邪魔するのよ、と母さんがため息交じりになげいていたからそうだったのだろう。
けれどもあるとき学校から帰ってくると、火曜日なのに店が休みだった。
一番最初は具合が悪くて休みにしたのかと心配したのに、次の週も次の週も火曜日が休みで、これはどうやら白旗を揚げているぞと、あえて確認してみるのもあわれに思って、今の今までそっとしておいている。
そうとなれば仕入れも無駄がなくなり、極端に食材を余らせることはなくなったのだが、とどろき屋は一ヶ月に一回か二回、不定期に臨時休業となる日がある。
それが今日だった。
父さんもSNSを駆使してなんとか手を打てばいいのに、そういったことには無頓着だ。
もしかしたらとどろき屋の臨時休業を知らずに、いつもより人来ないなぐらいの呑気さで営業しているのかもしれない。
食べ盛りのぼくとしては肉の量も増し増しでお願いしたいのだけど、チャーシューは保存が利く食材なので仕方がない。
うちの店はギリギリ赤字にならない程度の経営状況らしいから、父さんには贅沢はいえないのだ。
シャキシャキ野菜とこってりスープを食べ尽くし、店舗の二階部分にある自宅へと戻った。
自分の部屋からは通りがよく見える。
たしかに、今日は人通りが少ない。
こんな日だからこそ、とどろき屋のおっちゃんが、うちの店の明かりに照らされて歩いているところがよく見えたのだ。
とどろき屋のおっちゃんは、臨時休業の夜に限って出かけている。
それを知ったときにはぼくの冒険心がくすぐられた。
日が落ちた時間にこっそり家を抜け出すのはよくないことだとわかっている。
でも、もし何かあったら大声を上げれば、屈強な体つきをしたとどろき屋のおっちゃんが助けてくれるのではないかと、さほど不安ではなかった。
そのとどろき屋のおっちゃんが、それこそ狼男にでも変身してしまわない限りは。
やはり今日も満月の晩だった。
とどろき屋は満月の日に臨時休業になっていたのだった。
その発見を父さんに教えてあげる前に突き止めたかった。
とどろき屋のおっちゃんはどこへ行っているのかを。
父さんは営業中。
母さんは一家の大黒柱として外へ働きに出ていて、今日は遅くなると言っていた。
抜け出すにはちょうどいい。
おっちゃんはいつもうちの前を通って駅方向へ歩いている。
ぼくは防犯ブザーを手に持ち、陰に潜んでおっちゃんが通りかかるのを待ち伏せた。
ぺた、ぺた、ぺたと、独特な足音が聞こえてきた。
おっちゃんだ。着流しに羽織り、雪駄という格好からして興味をそそる。
店でのおっちゃんは年季の入った白い調理服に、コック帽代わりのねじりはちまきで、寡黙に仕事をしている。
いつもとは明らかに違う和装。意外にもしっかりとした着こなし。
そんな目立つ格好でまさか不倫ってことはないだろうから、イヤな現場を目撃してしまうこともなさそうだった。
おっちゃんは周りを気にせず目的地に向かった。
初めての尾行は拍子抜けするほど簡単だった。
おっちゃんは駅へと入っていく道へは折れずに直進し、通りからすこし入ったところにやってきた。
民家、だろうか。引き戸の玄関も、続き間となっている広い掃き出し窓も全部開けっぱなしで、明かりに照らされて中の様子が丸見えだった。
そこにいたのはひしめき合った和装のおじさんたち。
扇子で顔を扇いでいる人もいれば、正座して念仏のようなものを唱えている人もいる。
生け垣の外側でその様子を見ていたら、「なにしてる?」と突然肩をつかまれて、飛び跳ねるくらいに驚いてしまったぼくは、手に持っていた防犯ブザーのひもを抜いてしまい、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「うわっうわっ」
「なんだよなんだよ」
ぼくも声をかけてきたおじさんも慌てふためいていると、家の中にいた人たちもどうしたどうしたと集まって、ぼくが防犯ブザーの音を止めるころには、和装のおじさんたちにぐるりと囲まれていた。
やいのやいの騒がれて、ぼくはパニック寸前だった。
「なにがあったんだ」
「俺はなんもしてねぇよ」
「あれ? きみはラーメン屋のせがれじゃないか?」
そういって一歩前に出てきたのは、とどろき屋のおっちゃんだった。
唯一知っているおじさんに気づいてもらえて、いくらか落ち着いてきた。
「どうしたの」
「ごめんなさい。おじさんがどこへ行くのか気になって……」
「なんだよ。だったら声をかけてくれたらよかったのに」
「そりゃあ、そんなに怖そうな顔してたらビビっちまうだろ」
背中が丸まったおじさんが、閉じた扇子でとどろき屋のおっちゃんの鼻先を指した。
「もう、師匠、やめてくださいよ。マフィアじゃないんですから」
とどろき屋のおっちゃんはおどけて言った。
それより、ケタケタと悪びれずに笑う、このさえないおじさんがとどろき屋さんの師匠?
ぼくの顔に疑問の色が出ていたのか、とどろき屋のおっちゃんはいった。
「この人はね、落語協会にも所属している真打ち――ああ、真打ちってのはね、平たく言えば一流の落語家。弟子もとれるの。それで、この俺も落語を教えてもらってるんだ」
「教えるっていっても、こいつは満月の晩しかこないの。だから『満月亭くろふね』って名前をつけてやった。いい名前だろ?」
「はい……」
そんなに機嫌良く言われたらうなずくしかない。
人騒がせな坊主だとはいわれたが、何のお咎 めもなく、親御さんに連絡とって迎えに来てもらえと電話をかけさせてくれた。
父さんは馬鹿野郎、手間をかけさせやがってと、怒っていた。どうせ暇なんだからとは心で思っておいて、素直に謝った。
おじさんたちは開けっぴろげの家に戻っていったが、とどろき屋のおっちゃんは責任を感じているのか、門の前で一緒に父さんを待ってくれた。
満月の明かりはピンスポットのようで、その実、辺り一帯を照らしている。
「夜道を歩きやすいから満月の晩なんですか?」
そう聞くとおっちゃんは豪快に笑った。
「そんなこと考えたこともなかった。ただ、月一回くらいがちょうどいい塩梅だと思ったんだよな。気負わずに続けられそうというか。頑張れることと頑張れないことを区分けすれば楽しくなる」
「うちの父さんも母さんも無気力で、休みの日はどっちが飯作るかでもめてるくらいです」
「そんなときは自分が家事を買って出ればいい。うちの娘はよく手伝いをしてくれるぞ」
「へぇ。えらいですね」
「あ、うちの娘がいくらかわいいからといっても、俺の目が青いうちは指一本触れさせねぇよ」
いきなりスイッチが入っておののく。
ぼくが固まっていると、おっちゃんは扇子を手のひらでパチンと叩いた。
「あ、これ、落語の噺に盛り込もうって考えてるやつね」
「怖すぎて笑えませんよ」
「師匠にもいわれたよ」
とどろき屋のおっちゃんは目が青くて、顔立ちもアジア系ではない。
どこからきたのか、いつから日本にいるのか、それとも生まれたときからいるのか、日本語が堪能だからわからない。豚肉料理もどこか日本的だし。
「おじさんが狼男じゃないと確認できてよかったです」
「それで声をかけられなかったのか――って、おい!」
料理はうまいおっちゃんだけど、ノリツッコミはいけてない。
「おじさん、笑いのセンスないですよ」
「扇子だけに」
親父ギャグならうちの父さんと張り合えそうだった。
お客さんのいない店内で、カウンターの隅っこに座り、ひとり夕ご飯を食べる。
油通しをした野菜がシャキッとうまい。
下の方からほじり出すように引っ張り出した縮れ麺は、スープとからんで味わい濃厚。
厚く切ったチャーシューは、ほどけていくほど柔らか――
ってことは知っている。
でも、一枚しか入れてくれてないから、それはもうちょっと後回し。
裏メニューっていうより、まかないなのだが、父さんの作る料理はどれも最高。
けれども、繁盛するか否かはそれとは関係ないらしい。
もともと流行ってないラーメン店だけど、隣の「とどろき屋」が休みだと、なおのこと人が来ないのだ。
とどろき屋は一応とんかつ屋だ。
このあいだ両親がケンカしたとき、母さんを誘い、「父さんへの当てつけ」という名の偵察にいったら、やっぱり、出しているのはとんかつだけじゃなかった。
生姜焼き定食や豚バラ炙り丼、角煮に冷しゃぶに豚こまのカリカリ揚げとか、もう、メニュー見ているだけでおなかすくシステムが発動した。
豚を食いたきゃここへ行けとSNSで話題になっただけのことはある。
店主は小さいころから知っているが、強面で見た目どおりの頑固さ。
うちの父さんはお客さんに文句を言われてペコペコ頭を下げる方だが、とどろき屋のおっちゃんは「ここは俺の領分だ。出て行け」といったとかいわないとか、そんな炎上騒ぎも物ともせず、どっしりと構えている。
逆に怖いもの見たさというのか、おっちゃんの人柄込みでの繁盛店。
ご飯時ともなれば行列ができることもしばしば。
待ちきれない人たちがうちへも流れてくるというわけ。
うちは創業からずっと木曜日が定休日で、とどろき屋は火曜日が定休日。
とどろき屋が繁盛するにつれ、火曜日の人通りの少なさはじわりじわりと当たり前になっていった。
だからといって定休日を同じにするというのは父さんにとって敗北宣言みたいなものらしい。
日本男児たるもの、戦い続けなければならないと、こだわり方が別の方へ向いている。
プライドってやつが邪魔するのよ、と母さんがため息交じりになげいていたからそうだったのだろう。
けれどもあるとき学校から帰ってくると、火曜日なのに店が休みだった。
一番最初は具合が悪くて休みにしたのかと心配したのに、次の週も次の週も火曜日が休みで、これはどうやら白旗を揚げているぞと、あえて確認してみるのもあわれに思って、今の今までそっとしておいている。
そうとなれば仕入れも無駄がなくなり、極端に食材を余らせることはなくなったのだが、とどろき屋は一ヶ月に一回か二回、不定期に臨時休業となる日がある。
それが今日だった。
父さんもSNSを駆使してなんとか手を打てばいいのに、そういったことには無頓着だ。
もしかしたらとどろき屋の臨時休業を知らずに、いつもより人来ないなぐらいの呑気さで営業しているのかもしれない。
食べ盛りのぼくとしては肉の量も増し増しでお願いしたいのだけど、チャーシューは保存が利く食材なので仕方がない。
うちの店はギリギリ赤字にならない程度の経営状況らしいから、父さんには贅沢はいえないのだ。
シャキシャキ野菜とこってりスープを食べ尽くし、店舗の二階部分にある自宅へと戻った。
自分の部屋からは通りがよく見える。
たしかに、今日は人通りが少ない。
こんな日だからこそ、とどろき屋のおっちゃんが、うちの店の明かりに照らされて歩いているところがよく見えたのだ。
とどろき屋のおっちゃんは、臨時休業の夜に限って出かけている。
それを知ったときにはぼくの冒険心がくすぐられた。
日が落ちた時間にこっそり家を抜け出すのはよくないことだとわかっている。
でも、もし何かあったら大声を上げれば、屈強な体つきをしたとどろき屋のおっちゃんが助けてくれるのではないかと、さほど不安ではなかった。
そのとどろき屋のおっちゃんが、それこそ狼男にでも変身してしまわない限りは。
やはり今日も満月の晩だった。
とどろき屋は満月の日に臨時休業になっていたのだった。
その発見を父さんに教えてあげる前に突き止めたかった。
とどろき屋のおっちゃんはどこへ行っているのかを。
父さんは営業中。
母さんは一家の大黒柱として外へ働きに出ていて、今日は遅くなると言っていた。
抜け出すにはちょうどいい。
おっちゃんはいつもうちの前を通って駅方向へ歩いている。
ぼくは防犯ブザーを手に持ち、陰に潜んでおっちゃんが通りかかるのを待ち伏せた。
ぺた、ぺた、ぺたと、独特な足音が聞こえてきた。
おっちゃんだ。着流しに羽織り、雪駄という格好からして興味をそそる。
店でのおっちゃんは年季の入った白い調理服に、コック帽代わりのねじりはちまきで、寡黙に仕事をしている。
いつもとは明らかに違う和装。意外にもしっかりとした着こなし。
そんな目立つ格好でまさか不倫ってことはないだろうから、イヤな現場を目撃してしまうこともなさそうだった。
おっちゃんは周りを気にせず目的地に向かった。
初めての尾行は拍子抜けするほど簡単だった。
おっちゃんは駅へと入っていく道へは折れずに直進し、通りからすこし入ったところにやってきた。
民家、だろうか。引き戸の玄関も、続き間となっている広い掃き出し窓も全部開けっぱなしで、明かりに照らされて中の様子が丸見えだった。
そこにいたのはひしめき合った和装のおじさんたち。
扇子で顔を扇いでいる人もいれば、正座して念仏のようなものを唱えている人もいる。
生け垣の外側でその様子を見ていたら、「なにしてる?」と突然肩をつかまれて、飛び跳ねるくらいに驚いてしまったぼくは、手に持っていた防犯ブザーのひもを抜いてしまい、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「うわっうわっ」
「なんだよなんだよ」
ぼくも声をかけてきたおじさんも慌てふためいていると、家の中にいた人たちもどうしたどうしたと集まって、ぼくが防犯ブザーの音を止めるころには、和装のおじさんたちにぐるりと囲まれていた。
やいのやいの騒がれて、ぼくはパニック寸前だった。
「なにがあったんだ」
「俺はなんもしてねぇよ」
「あれ? きみはラーメン屋のせがれじゃないか?」
そういって一歩前に出てきたのは、とどろき屋のおっちゃんだった。
唯一知っているおじさんに気づいてもらえて、いくらか落ち着いてきた。
「どうしたの」
「ごめんなさい。おじさんがどこへ行くのか気になって……」
「なんだよ。だったら声をかけてくれたらよかったのに」
「そりゃあ、そんなに怖そうな顔してたらビビっちまうだろ」
背中が丸まったおじさんが、閉じた扇子でとどろき屋のおっちゃんの鼻先を指した。
「もう、師匠、やめてくださいよ。マフィアじゃないんですから」
とどろき屋のおっちゃんはおどけて言った。
それより、ケタケタと悪びれずに笑う、このさえないおじさんがとどろき屋さんの師匠?
ぼくの顔に疑問の色が出ていたのか、とどろき屋のおっちゃんはいった。
「この人はね、落語協会にも所属している真打ち――ああ、真打ちってのはね、平たく言えば一流の落語家。弟子もとれるの。それで、この俺も落語を教えてもらってるんだ」
「教えるっていっても、こいつは満月の晩しかこないの。だから『満月亭くろふね』って名前をつけてやった。いい名前だろ?」
「はい……」
そんなに機嫌良く言われたらうなずくしかない。
人騒がせな坊主だとはいわれたが、何のお
父さんは馬鹿野郎、手間をかけさせやがってと、怒っていた。どうせ暇なんだからとは心で思っておいて、素直に謝った。
おじさんたちは開けっぴろげの家に戻っていったが、とどろき屋のおっちゃんは責任を感じているのか、門の前で一緒に父さんを待ってくれた。
満月の明かりはピンスポットのようで、その実、辺り一帯を照らしている。
「夜道を歩きやすいから満月の晩なんですか?」
そう聞くとおっちゃんは豪快に笑った。
「そんなこと考えたこともなかった。ただ、月一回くらいがちょうどいい塩梅だと思ったんだよな。気負わずに続けられそうというか。頑張れることと頑張れないことを区分けすれば楽しくなる」
「うちの父さんも母さんも無気力で、休みの日はどっちが飯作るかでもめてるくらいです」
「そんなときは自分が家事を買って出ればいい。うちの娘はよく手伝いをしてくれるぞ」
「へぇ。えらいですね」
「あ、うちの娘がいくらかわいいからといっても、俺の目が青いうちは指一本触れさせねぇよ」
いきなりスイッチが入っておののく。
ぼくが固まっていると、おっちゃんは扇子を手のひらでパチンと叩いた。
「あ、これ、落語の噺に盛り込もうって考えてるやつね」
「怖すぎて笑えませんよ」
「師匠にもいわれたよ」
とどろき屋のおっちゃんは目が青くて、顔立ちもアジア系ではない。
どこからきたのか、いつから日本にいるのか、それとも生まれたときからいるのか、日本語が堪能だからわからない。豚肉料理もどこか日本的だし。
「おじさんが狼男じゃないと確認できてよかったです」
「それで声をかけられなかったのか――って、おい!」
料理はうまいおっちゃんだけど、ノリツッコミはいけてない。
「おじさん、笑いのセンスないですよ」
「扇子だけに」
親父ギャグならうちの父さんと張り合えそうだった。