第1話 月と太陽

文字数 2,085文字

みんなは月と太陽と聞くとどのようなイメージを思い浮かべるだろうか?

月というと、暗闇で明るく輝き、優しく周りを照らすような感じ。人によっては知性や母性のような感じだと言う人もいる。

月の輝きは姉の絵奈のようだ。姉の絵奈は小さな頃から、人より何でもやれば優れていて、知性もあり品があり、少しおとなしめな優等生タイプで優しく、男の子から人気があった。

じゃあ太陽はどうだろうか。

私の中で太陽のイメージは暖かい光の時もあるけど、真夏なんかは太陽の光は暑苦しくて曇ってほしくて太陽隠れろなんて思ったりもする、そんなイメージ。
そう、私達双子で言えばこの太陽に当たるのが私。

あくまで勝手に例えているだけだけど、太陽の私は顔は絵奈とそっくりなのに、暑苦しいのか男子からモテない…というか男扱いされることが多い…

私が好きになる男の子は小さな頃、幼稚園、小学校といつも絵奈を好きになる子ばかりだった…

小学生の5、6年生になってくると女子で発育のいい子なんかは体型が変わってくる。

私達のママのお父さん。藤堂側の私の祖父のお母さんにあたる曽祖母はフィンランド人らしく、祖父はハーフにあたり、ママはクォーター。その次に当たる絵奈と私はワンエイスというらしいけど、聞いたこともないし、友達に説明するのも面倒くさいので、聞かれた時にはおじいちゃんがハーフだからってしか言わない。というか私自身あんまり良く分からない。

絵奈と私の瞳はおじいちゃんとママと同じできれいな青い目をしている。

遠くなってはいるが海外の血も入っているからなのか、絵奈と私は成長が早く、周りの子より少し大人びて見られることは多かった。

それはママも同じだったらしい。

中学校の入学式でも絵奈と私は周りの子より少し大人びているのか、自分でも初めて来た制服なのに新入生感をあまり感じられなかった。

髪の長い絵奈は中学1年生なのに3年生の女子の先輩とか下手すれば女子高生にも見えるくらいだ…

小学生の頃、顔は同じなんだからと思って、私も髪を伸ばしてみたことがある。

そしたら絵奈に間違われて告白されたこともある…

絵奈、絵奈と勘違いされて呼ばれたり、間違って告白されるのにも疲れて、私は伸ばした髪を再びバッサリ切って元の髪型に戻した…

すると、絵奈と間違われることはなくなった。

ママと藤堂の祖母は髪の長い時の私でも絵奈と間違えたりはしなかった。パパに山本家の祖父母と藤堂家の祖父はたまにだけど絵奈と私を髪の長い時は間違えた…

親族にも間違われるくらいなので、絵奈にテストを交換して受けようよって言ったら、「紗羅はいいけど、私のテスト紗羅が受けたらひどいことになるじゃん」って言われた…

言われたことはごもっともですよ…

自分のことを太陽に例えていいのかはわからないけど、月のような姉の山本 絵奈、太陽のような私(山本 紗羅)の中学生生活がいよいよ始まろうとしていた。

丸山台中学校の入学式の日、新入生の私と姉の絵奈。

クラス分けは小学生の頃はずっと何故か6年間同じクラスだったのに中学校での1年生は私と絵奈は隣のクラスとなった。

丸山台中学校の新入生代表の挨拶は私の姉である山本 絵奈が務める。

ハーフとクォーターの次のワンエイスというものに当たる、私と絵奈は遠くはなるが、海外の血が入っている為に見た目は少し大人びているのか、小学生高学年の時には既に中学生に見られていたし、制服を来た今日の入学式は近所のおばちゃんに高校生と間違われた…

新入生代表なのに新入生っぽくない上級生かそれより年上にしか見えない絵奈に親達や他の生徒達も少し驚いていた。

(私も一応同じ顔してるんだけどな…)と思ったけど、みんなは、絵奈に夢中…

私はそういうのは向いてないし、もちろん選ばれたことはない。

いつも沢山の拍手を浴びるのは絵奈ばかり…

そんな私にも1つだけ絵奈よりも恵まれた才能がある。

それは音楽の才能だ。もちろん絵奈も普通の人より才能があると言われる。

でも、音楽だけは今まで絵奈に負けたことはない。ピアノは完敗というか、私は幼少期に既に投げ出したけど…

絵奈も中学生になる少し前にピアノを辞めた。

ピアノの先生に凄く才能があるのにもったいないと残念がられたみたいだけど、絵奈と私には同じ夢がある。

かつて、私の祖母、藤堂 紗絵は一時代を、築いたトップアーティストの成瀬 紗絵だった。

同じく母の山本 紬も祖母と同じトップアーティストとして活躍した成瀬 紬。

そして、成瀬側の曽祖母も昔売れないモデルだったらしい。

実の祖母である、成瀬 絵里というママの実母も歌手になるはずだったらしい。

そんな人達と同じ血が流れている絵奈と私。

絵奈も私も中学生になったら部活には入らない。

何故なら、二人ともママ(成瀬 紬)と二人の祖母(成瀬 絵里と紗絵)も入った、T.Kアカデミー東京校のオーディションを受けて通うつもりだから。


同世代や他の人にも負けたくないけど、これだけは絵奈にだけは絶対に負けたくないし、譲れない。

私は歌手になるんだ!!



※山本 紗羅 12歳 丸山台中学校1年生




※山本 絵奈 12歳 丸山台中学校1年生



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み