Stage4 オーク軍団
文字数 3,460文字
リリィを連れ去った、サイコパス脳筋物理魔法使いが指定した時間。その時間は、人通りもまばらで、朝早くから皇居マラソンみたいなトレーニングをしている人しかいなかった。
「遅い! まさか、逃げた!?」
「アリスさまは、目の前の敵から逃げることはしませんー!」
「さー、どうだか」
「むー、待ってたら来ますぅー! 絶対来るんですぅー!」
しかし、そんなリリィの願いむなしく、お昼を回ってもアリスは姿を現さなかった。
「ううう。ぐすっ。アリスさま、なんで・・・・・・」
リリィは完全に涙目になっており、今すぐにでも泣き出しそうであった。時間が経てば経つほど、リリィの目尻に浮かぶ涙のつぶは大きくなっており、サイコパス脳筋物理魔法使いが本物の悪者だったら、すぐにでも悪堕ちできそうな様子であった。
「あー、もう! なんで来ないのよ!」
「うおおおおおおおおお!」
「ん? げっ!」
遠くから、砂煙を上げならこちらに向かって走ってくる人影が見えた。綺麗な赤髪が風になびいていた。そして、その後ろからモンスターが大量に追いかけてきていた。
「すまん、寝坊した!」
「いやいやいや、そういう問題じゃないでしょ!? なによ、このオーク軍団!」
「いやな、オークの寝床にある金銀財宝を奪ってこいっていう依頼があったから、取りに行ったらこうなった」
「バカか!?」
「お前にだけは言われたくないな」
「あー、もう! どうすんのよ、この状況!」
知るか! と言いたい状況ではない。この、サイコパス脳筋物理魔法使いの言うように、この状況をどうにかしなければならない。どう打破するか。
「なんでこいつら、よだれ垂らしてるのよー」
「アリスさまー。この時期のオークは、発情期なのですよ」
相変わらずリリィの性格はわからないが、分かったことは一つだけある。それは……。
「とりあえず、逃げろー!」
「え、ち、ちょっと!?」
リリィと脳筋物理魔法使いの手を取って、その場からダッシュで逃げ出した。発情期と聞いて、ここで黙ってやられるのを待つわけにはいかない。やられるつもりも毛頭ないが、どちらにせよ、逃げなければ貞操が危ない。
「うおおおおおおおお!」
「あ、こら! 王都内では無闇に走り回るんじゃない!」
憲兵が何か言っていたような気がするが、恐らく気のせいだろう。気にして止まっていたら、ある意味死ぬ。社会的にも物理的にも死ぬ。正直、個人的には他人がどうなろうと知ったことではない。
「はぁはぁはぁ・・・・・・」
「こ、ここまで来れば安心だろう」
「全く、何なのよ。いきなり逃げろって」
「ああ。なんか、発情期らしいんだよ」
「は?」
発情期という言葉を聞いて、脳筋物理魔法使いは身震いをしていた。恐らく、あの変態オークどもに色んなことをされることを想像してしまったのだろう。バカなやつめ。
だがしかし、ここからどうしたものか。オークは、見た目は醜いが、ああ見えて知能は高く、鼻もきく。さらに統率力も高い。人は見かけによらないとは言ったものだな。まぁ、人ではないが。だから、どこに隠れていようともすぐに見つかる可能性は高い。そのため、ずっと隠れているわけにもいかない。
「アリスさまー」
「ん?」
「見つかりましたー」
リリィが指さした先に、オークが大量にいた。振り向いた瞬間、オークがどこから手に入れてきたのか、手に持った巨大なハルバードのようなものを力任せに振り下ろしてきた。
力任せに振り下ろされたハルバードは地面にめり込み、めり込んだ地面を中心として、地面が陥没した。アリスはリリィを抱えて、辛うじてジャンプして避けた。
「うわ、すげ」
「そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけど」
「あいつら、力だけはありますからねー」
建物の上に逃げると、ハルバードを力よく引き抜き、ノーモーションでこちらに向かって投げつけてきた。3人は辛うじて避けることが出来たが、中々の怪力の持ち主である。
あぶねぇ、あぶねぇ。あれが直撃してたら、と思うと命がいくつあっても足りなさそうだ。知能もそれなりに高そうだし、正攻法でいっても叶わなそうだ。
「あー、もう! 逃げも隠れもやめだ!」
「え?」
「あたし、ぶっ倒してくる!」
そう叫ぶと、サイコパス脳筋物理魔法使いは建物から飛び降りて、オークに突撃していった。大体どうなるかは想像に難くない。はずだったが、さすがは脳筋物理魔法使いとはいえ魔法使いだ。影分身をしながら戦っている。
魔法使いって、あんな魔法も覚えるのか。なるほど、影分身は有用そうな魔法だ。
「変なこと考えてます、アリスさま?」
「いんや」
「一応言っておきますと、恐らくあれは魔法使いのスキルではなくて、本人特有のスキルですので、恐らくアリスさまが習得するのは無理ですよ?」
「さぁ、それはどうかな?」
「?」
「さて、助けに行きますかー」
地面を蹴って、アリスも建物の上から飛び降りて、オークの中に飛び込んだ。
「うらぁ!」
飛び降りながら拳を地面に突き立てると、そこを中心として半径一キロが地盤沈下し、建物が全て崩落した。オークも馬鹿力であるが、このアリスも中々馬鹿力である。
「ありゃ?」
「ありゃ? じゃないよ! 建物が全部ぶっ壊れてるんだよ! あんた、あたしより脳筋だろ!」
すると、遠くで笛の音が聞こえてきた。どうやら、憲兵隊の笛の音のようだ。この騒ぎを聞きつけ、駆けつけてきたらしい。
ていうかあいつら、オーク軍団が暴れていたのに今の今まで一体何をやっていたんだ? どこかの警察並みに無能な連中だな。
「ほら、逃げるよ」
「え?」
「逃げないと捕まっちゃいますよ、アリスさま」
アリスの手をサイコパス脳筋物理魔法使いとリリィが引っ張って、その場からダッシュで逃げ出した。姿を見られていなかったのが、不幸中の幸いかもしれない。
3人は、混乱している王都から走って逃げ出し、近くにある山へと逃げ込んだ。RPGなどによくある、岩肌丸出しの山岳地帯のような山で、途中にはほら穴もあったので、そこに身を潜めることにした。
「はぁー(クソでかため息)」
なんだ、今のクソでかため息は。
チラチラとアリスの方を見てくるが、どう見てもお前が悪いという目をしている。
すると、リリィが普段と変わらないテンションでどこからか、桶に水を汲んで戻ってきた。
「これで、しばらくは王都に近づけなくなってしまいましたねー」
「わずか2日で王都を離れることになるなんてね。あーあ、王都にはいい装備とかありそうだったのになぁ」
「誰のせいよ、誰の!」
「・・・・・・」
「全く・・・・・・。あんたのせいで、こっちまで巻き添え食らっちゃったじゃない」
サイコパス脳筋物理魔法使いはブツブツ言いながら、リリィが用意した桶の水を使って、身体をあらっていた。王都に戻れない以上、宿屋に泊まることは出来ない。それはイコールとして、お風呂に入れないということだ。つまり、こうして濡れタオルなどで身体をあらう必要があるということになる。
「お前なぁ、女ならもう少し恥じらいを持ったらどうだ?」
「はぁ? 別にいいじゃんか。ここには女しかいないんだし」
「つってもなぁ」
「なに、あんたあたしの身体を見て欲情でもしてんの」
「バーカ。お前の貧相な身体を見て、誰が欲情するかよ」
サイコパス脳筋物理魔法使いがムスッとして顔でこちらをにらんでいたが、アリスは鼻を鳴らして顔を背け、固い岩の上に荷物を敷いてから横になった。
はー。まさかこんなことになるなんてなぁ。本当なら、王都のふかふかのベッドの上でゆっくり休めてたハズなのになぁ。まさか、こんな固い岩の上で寝ることになるなんて・・・・・・。
「お二人とも、もうお休みになられますか?」
外を見てみると、もう日が傾き始めていた。アリスがリリィたちの元についたのが、お昼を回ってからなので、4~5時間ほど走り回っていたことになる。
「そうだな、休むか」
「はーい。では、アニエスさんもお休みなさい」
「そうね・・・・・・ん?」
「?」
「何で、あたしの名前知ってるの?」
「禁則事項です☆ あ、アリスさまには自分で自己紹介してくださいね」
「えー・・・・・・。ま、気にしても仕方ないかー。疲れたし」
「遅い! まさか、逃げた!?」
「アリスさまは、目の前の敵から逃げることはしませんー!」
「さー、どうだか」
「むー、待ってたら来ますぅー! 絶対来るんですぅー!」
しかし、そんなリリィの願いむなしく、お昼を回ってもアリスは姿を現さなかった。
「ううう。ぐすっ。アリスさま、なんで・・・・・・」
リリィは完全に涙目になっており、今すぐにでも泣き出しそうであった。時間が経てば経つほど、リリィの目尻に浮かぶ涙のつぶは大きくなっており、サイコパス脳筋物理魔法使いが本物の悪者だったら、すぐにでも悪堕ちできそうな様子であった。
「あー、もう! なんで来ないのよ!」
「うおおおおおおおおお!」
「ん? げっ!」
遠くから、砂煙を上げならこちらに向かって走ってくる人影が見えた。綺麗な赤髪が風になびいていた。そして、その後ろからモンスターが大量に追いかけてきていた。
「すまん、寝坊した!」
「いやいやいや、そういう問題じゃないでしょ!? なによ、このオーク軍団!」
「いやな、オークの寝床にある金銀財宝を奪ってこいっていう依頼があったから、取りに行ったらこうなった」
「バカか!?」
「お前にだけは言われたくないな」
「あー、もう! どうすんのよ、この状況!」
知るか! と言いたい状況ではない。この、サイコパス脳筋物理魔法使いの言うように、この状況をどうにかしなければならない。どう打破するか。
「なんでこいつら、よだれ垂らしてるのよー」
「アリスさまー。この時期のオークは、発情期なのですよ」
相変わらずリリィの性格はわからないが、分かったことは一つだけある。それは……。
「とりあえず、逃げろー!」
「え、ち、ちょっと!?」
リリィと脳筋物理魔法使いの手を取って、その場からダッシュで逃げ出した。発情期と聞いて、ここで黙ってやられるのを待つわけにはいかない。やられるつもりも毛頭ないが、どちらにせよ、逃げなければ貞操が危ない。
「うおおおおおおおお!」
「あ、こら! 王都内では無闇に走り回るんじゃない!」
憲兵が何か言っていたような気がするが、恐らく気のせいだろう。気にして止まっていたら、ある意味死ぬ。社会的にも物理的にも死ぬ。正直、個人的には他人がどうなろうと知ったことではない。
「はぁはぁはぁ・・・・・・」
「こ、ここまで来れば安心だろう」
「全く、何なのよ。いきなり逃げろって」
「ああ。なんか、発情期らしいんだよ」
「は?」
発情期という言葉を聞いて、脳筋物理魔法使いは身震いをしていた。恐らく、あの変態オークどもに色んなことをされることを想像してしまったのだろう。バカなやつめ。
だがしかし、ここからどうしたものか。オークは、見た目は醜いが、ああ見えて知能は高く、鼻もきく。さらに統率力も高い。人は見かけによらないとは言ったものだな。まぁ、人ではないが。だから、どこに隠れていようともすぐに見つかる可能性は高い。そのため、ずっと隠れているわけにもいかない。
「アリスさまー」
「ん?」
「見つかりましたー」
リリィが指さした先に、オークが大量にいた。振り向いた瞬間、オークがどこから手に入れてきたのか、手に持った巨大なハルバードのようなものを力任せに振り下ろしてきた。
力任せに振り下ろされたハルバードは地面にめり込み、めり込んだ地面を中心として、地面が陥没した。アリスはリリィを抱えて、辛うじてジャンプして避けた。
「うわ、すげ」
「そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけど」
「あいつら、力だけはありますからねー」
建物の上に逃げると、ハルバードを力よく引き抜き、ノーモーションでこちらに向かって投げつけてきた。3人は辛うじて避けることが出来たが、中々の怪力の持ち主である。
あぶねぇ、あぶねぇ。あれが直撃してたら、と思うと命がいくつあっても足りなさそうだ。知能もそれなりに高そうだし、正攻法でいっても叶わなそうだ。
「あー、もう! 逃げも隠れもやめだ!」
「え?」
「あたし、ぶっ倒してくる!」
そう叫ぶと、サイコパス脳筋物理魔法使いは建物から飛び降りて、オークに突撃していった。大体どうなるかは想像に難くない。はずだったが、さすがは脳筋物理魔法使いとはいえ魔法使いだ。影分身をしながら戦っている。
魔法使いって、あんな魔法も覚えるのか。なるほど、影分身は有用そうな魔法だ。
「変なこと考えてます、アリスさま?」
「いんや」
「一応言っておきますと、恐らくあれは魔法使いのスキルではなくて、本人特有のスキルですので、恐らくアリスさまが習得するのは無理ですよ?」
「さぁ、それはどうかな?」
「?」
「さて、助けに行きますかー」
地面を蹴って、アリスも建物の上から飛び降りて、オークの中に飛び込んだ。
「うらぁ!」
飛び降りながら拳を地面に突き立てると、そこを中心として半径一キロが地盤沈下し、建物が全て崩落した。オークも馬鹿力であるが、このアリスも中々馬鹿力である。
「ありゃ?」
「ありゃ? じゃないよ! 建物が全部ぶっ壊れてるんだよ! あんた、あたしより脳筋だろ!」
すると、遠くで笛の音が聞こえてきた。どうやら、憲兵隊の笛の音のようだ。この騒ぎを聞きつけ、駆けつけてきたらしい。
ていうかあいつら、オーク軍団が暴れていたのに今の今まで一体何をやっていたんだ? どこかの警察並みに無能な連中だな。
「ほら、逃げるよ」
「え?」
「逃げないと捕まっちゃいますよ、アリスさま」
アリスの手をサイコパス脳筋物理魔法使いとリリィが引っ張って、その場からダッシュで逃げ出した。姿を見られていなかったのが、不幸中の幸いかもしれない。
3人は、混乱している王都から走って逃げ出し、近くにある山へと逃げ込んだ。RPGなどによくある、岩肌丸出しの山岳地帯のような山で、途中にはほら穴もあったので、そこに身を潜めることにした。
「はぁー(クソでかため息)」
なんだ、今のクソでかため息は。
チラチラとアリスの方を見てくるが、どう見てもお前が悪いという目をしている。
すると、リリィが普段と変わらないテンションでどこからか、桶に水を汲んで戻ってきた。
「これで、しばらくは王都に近づけなくなってしまいましたねー」
「わずか2日で王都を離れることになるなんてね。あーあ、王都にはいい装備とかありそうだったのになぁ」
「誰のせいよ、誰の!」
「・・・・・・」
「全く・・・・・・。あんたのせいで、こっちまで巻き添え食らっちゃったじゃない」
サイコパス脳筋物理魔法使いはブツブツ言いながら、リリィが用意した桶の水を使って、身体をあらっていた。王都に戻れない以上、宿屋に泊まることは出来ない。それはイコールとして、お風呂に入れないということだ。つまり、こうして濡れタオルなどで身体をあらう必要があるということになる。
「お前なぁ、女ならもう少し恥じらいを持ったらどうだ?」
「はぁ? 別にいいじゃんか。ここには女しかいないんだし」
「つってもなぁ」
「なに、あんたあたしの身体を見て欲情でもしてんの」
「バーカ。お前の貧相な身体を見て、誰が欲情するかよ」
サイコパス脳筋物理魔法使いがムスッとして顔でこちらをにらんでいたが、アリスは鼻を鳴らして顔を背け、固い岩の上に荷物を敷いてから横になった。
はー。まさかこんなことになるなんてなぁ。本当なら、王都のふかふかのベッドの上でゆっくり休めてたハズなのになぁ。まさか、こんな固い岩の上で寝ることになるなんて・・・・・・。
「お二人とも、もうお休みになられますか?」
外を見てみると、もう日が傾き始めていた。アリスがリリィたちの元についたのが、お昼を回ってからなので、4~5時間ほど走り回っていたことになる。
「そうだな、休むか」
「はーい。では、アニエスさんもお休みなさい」
「そうね・・・・・・ん?」
「?」
「何で、あたしの名前知ってるの?」
「禁則事項です☆ あ、アリスさまには自分で自己紹介してくださいね」
「えー・・・・・・。ま、気にしても仕方ないかー。疲れたし」