第2話 天位議会とルシファー
文字数 3,475文字
レガリアヴェヒターがシェンメイと出会っていたこの時代。世界には、不安要素が含まれていた。
「天位議会」を名乗るふざけた団体の存在。
コヤツらは自分等がこの世界を牛耳っていると勘違いをしている。脳ミソに虫でも湧いているのではないかと心配になるくらいの「イタイ」連中の集まりだ。
「ノアの方舟計画」なるものを企んでいる。
その内容とは、自分等だけが生き残り、白と黒の大地ごと、生命体をリセットするものであった。そのための生物兵器を極秘裏に育てていた。アークワンを滅する存在。
私は一考した。創造神たる私が今さら出向くのはナンセンス。代理を捜すことにした。
その男は天界にいた。天使長ルシファー。天界で実力ナンバーワン。そのクセ、偉ぶることなく誰からも愛される。眉目秀麗。彼が次世代のリーダーに相応しいと白羽の矢をたてた。
彼は優秀な男だった。誰よりも・・・。
ただ、頭がキレ過ぎた。そのイタイ連中から妬みや嫉妬による嫌がらせを受ける。彼は笑顔で耐えた。私も耐えた。今すぐにでも飛び出して、イタイ連中を成敗したい気持ちを抑えていた。
実は、ルシファーが嫌がらせを受けるのには別の理由があった。天位議会による「ノアの方舟計画」の一部をルシファーは知ってしまっていたのだ。
彼には唯一と言える弱点があった。
双子の妹、天使ミカエル。穢れを知らない純粋な天使のことをルシファーは、いつも大事にしていた。彼女をイタイ連中から守るべく奮闘していた。兄妹愛という。
・・・創造神たる私にその気持ちは分からない。
ある日、その想いを簡単に打ち砕かれる。イタイ連中はルシファーを罠にかけようとミカエルを騙す。疑うことを知らないミカエルは、些細なことでルシファーとケンカ。家を飛び出すミカエル。ルシファーの心を傷つけた。激しく動揺するルシファー。独りで落ち込んでいる内に、あることが脳裏に浮かぶ。冷静を取り戻したルシファーはイタイ連中に決闘を申し込む。
その舞台はコロシアム。
お互いの主張をかけて戦う神聖なる場所。
観客席には天軍の兵士達、ルシファーの勇姿を見に来た天使達で超満員。聖なる決闘を見守る者達が歓声をあげていた。お互いが入場するとルシファー側からブーイングが起きた。ルシファーが一人で現れたのに対して、イタイ連中は多人数でルシファーを取り囲む。
一対一ではなく、多人数対一。しかも、フードを被った偽ミカエルを用意。人質に取って、ルシファーに反撃をさせないようにした。もはや、神聖ではない公開処刑さながらの惨状に、彼を慕う天使が数人、舞台上に飛び降りた。ベルゼブブが瀕死のルシファーを救出。それをキッカケに両軍乱れての戦いが勃発。天位議会率いる天軍三分の二とルシファーを慕う者、天軍三分の一の戦い。ルシファーが指揮を取れば、その位の兵力差は埋められたハズだった。
私は天使同士の争いに激怒した。流石に、これには黙っていることができなかった。
創造神の怒りの雷撃。コロシアムは半分が消滅。ルシファー側は天位議会側が怯んだ隙に、逃げるようにその場を去った。
ベルゼブブがルシファーを抱きかかえ、飛び去る。
ルシファーは、その頃、生死の境をさまよっていた。
― 夢を見ていた。
「・・・ルシファーよ。私の声が届いているか?」
「・・・」
ルシファーは夢の世界で目覚めた。
「ここはいったい。私は・・・」
怪我をしていない身体中を確認していた。夢の中であることを理解していない。
「ルシファーよ。私の声を聞くが良い」
私は神々しく生命体の姿で、ルシファーと対峙した。多少、御光は「増量」にしておいた。
「ルシファーよ。お前に、もう一度戦える力を授けてやろう」
「・・・貴方はいったい何者ですか?」
「私か、そうだな・・・。詳しいことは明かせないが、この世界を創造した者だ」
「本物の神様ですか?」
「まー、そうだな。天位議会の偽者の神様とは格が違うぞ」
「・・・理解しております。その雰囲気。たたずまい。正しく神様に相応しい」
(それはそうだろう。そう見えるようにしたのだからな・・・)
「ふむ。やはり、私の想像していた通りの男だな」
「・・・想像していたとは?」
「実はな、『天位議会』なる、ふざけた団体を潰すのは誰がいいかと考えていたのだ。それでお前を見つけたという訳だ」
「私は先程、奴等に敗北しました。私はそのような期待にそえません!」
興奮するルシファー。先程のことを思い出したのだろう。右手を握りしめ、地面に打ちつけた。
「今はな・・・。しかし、お前に『天位議会』を倒す気持ちが残っているなら、私が力を授けてやろう」
半ば強引に力を授けた。
「・・・この力は?」
みなぎる力に驚きを隠せないルシファー。
「あー、それな。『堕天』というヤツだな」
「堕天?」
「そうだ、お前はこれから魔界へ仲間を引き連れて行くのだ。そこで再起を計れ。お前を味方する敗残の天使にも『堕天』の力を与えてやる」
「魔界には地獄の王サタンがいるハズです。我々が入り込む余地は無いでしょう」
「私を誰だと思っている。そんなことはすでに解決済みだ。サタンは了承している」
「それならいいのですが・・・」
「それとな。お前は『天位議会』に対抗して『七罪』を結成するのだ。サタンに伝えてある。ヤツは今頃メンバーを集めていることだろう」
「・・・どうして、そこまで私に?」
「お前は、この世界のことが好きなのだろう。だからだ。『天位議会』を必ず潰せ!。『ノアの方舟計画』を防ぐのだ。それから、この力はオマケだ」
私はルシファーに「超進化」の力を授けた。今は発現しない力。一つのキッカケで発動する。
「それとな、これは覚えておくのだぞ。黒猫の冒険者が現れたら味方とするのだぞ。決して敵対しては、ならん。私の使者だからな。いいな」
「・・・分かりました。覚えておきます」
「それでは、私はこれで消えよう。ルシファーよ、この世界のことを頼んだぞ」
「ハッ! この命に、かけましても・・・」
私はルシファーの元から消えた。後はルシファーがなんとかするだろう。
ベルゼブブが呼び掛ける。
「ルシファー様・・・」
ルシファーからの返事はない。まだ夢から目覚めていなかった。やがて、現実世界でルシファーは目を覚ます。
「・・・うっ。・・・ここはいったい?」
「気がつかれましたか、ルシファー様」
ルシファーは今まで見ていた夢のことと現実のことが分からないでいた。片手で頭を押さえると、見えたのは自分の自慢の白羽が黒羽へ変わっていた。
枚数は十二枚。天使長であった時より増えていた。
「ルシファー様、大丈夫ですか?」
ベルゼブブはルシファーのことが心配だった。
「あぁ、すまない。大丈夫だ。他の天使達は無事か?」
「はい、怪我をしている者ばかりですが、命に別状はありません。ただ・・・」
「・・・ただ? 何だ、言ってみろ」
「・・・はい、皆の白羽が突然、黒羽へ変化しました」
「何だと・・・そうか。堕天したのだな」
「堕天?」
聞きなれない言葉にベルゼブブは戸惑った。
「そう、堕天だ。すまないが、皆を集めてくれないか?」
「・・・分かりました」
「ルシファー様が目覚めた」とベルゼブブは嬉しそうに皆に話していった。自然とルシファーの元へ堕天使達が集まる。皆もルシファーのことが心配だった。
皆が集まったのを確認して、ルシファーが重大発表をした。
「すまない、皆。心配をかけたな。だが、もう大丈夫だ。・・・私はこれから魔界へ向かう。私を信じてついてきて欲しい」
深々とお辞儀をするルシファーの姿に最初はざわついていた堕天使達。それを見て、ベルゼブブが発言した。
「私はルシファー様に、どこまでも着いていきます。たとえ火の中であろうと、魔界であろうとも・・・」
「ありがとう、ベルゼブブ」
それを聞いて、他の堕天使達もルシファーに従った。
「それでは行こう! 魔界へ」
先頭で飛び立つルシファー。それに続くベルゼブブ。それに遅れまいと次々と堕天使達が飛び立つ。
白の大地から黒の大地へ、黒羽の一団が空を覆った。影は太陽の光をさえぎり、その異常な様子に人々は、この世の終わりを予感した。
― 完 ―
「天位議会」を名乗るふざけた団体の存在。
コヤツらは自分等がこの世界を牛耳っていると勘違いをしている。脳ミソに虫でも湧いているのではないかと心配になるくらいの「イタイ」連中の集まりだ。
「ノアの方舟計画」なるものを企んでいる。
その内容とは、自分等だけが生き残り、白と黒の大地ごと、生命体をリセットするものであった。そのための生物兵器を極秘裏に育てていた。アークワンを滅する存在。
私は一考した。創造神たる私が今さら出向くのはナンセンス。代理を捜すことにした。
その男は天界にいた。天使長ルシファー。天界で実力ナンバーワン。そのクセ、偉ぶることなく誰からも愛される。眉目秀麗。彼が次世代のリーダーに相応しいと白羽の矢をたてた。
彼は優秀な男だった。誰よりも・・・。
ただ、頭がキレ過ぎた。そのイタイ連中から妬みや嫉妬による嫌がらせを受ける。彼は笑顔で耐えた。私も耐えた。今すぐにでも飛び出して、イタイ連中を成敗したい気持ちを抑えていた。
実は、ルシファーが嫌がらせを受けるのには別の理由があった。天位議会による「ノアの方舟計画」の一部をルシファーは知ってしまっていたのだ。
彼には唯一と言える弱点があった。
双子の妹、天使ミカエル。穢れを知らない純粋な天使のことをルシファーは、いつも大事にしていた。彼女をイタイ連中から守るべく奮闘していた。兄妹愛という。
・・・創造神たる私にその気持ちは分からない。
ある日、その想いを簡単に打ち砕かれる。イタイ連中はルシファーを罠にかけようとミカエルを騙す。疑うことを知らないミカエルは、些細なことでルシファーとケンカ。家を飛び出すミカエル。ルシファーの心を傷つけた。激しく動揺するルシファー。独りで落ち込んでいる内に、あることが脳裏に浮かぶ。冷静を取り戻したルシファーはイタイ連中に決闘を申し込む。
その舞台はコロシアム。
お互いの主張をかけて戦う神聖なる場所。
観客席には天軍の兵士達、ルシファーの勇姿を見に来た天使達で超満員。聖なる決闘を見守る者達が歓声をあげていた。お互いが入場するとルシファー側からブーイングが起きた。ルシファーが一人で現れたのに対して、イタイ連中は多人数でルシファーを取り囲む。
一対一ではなく、多人数対一。しかも、フードを被った偽ミカエルを用意。人質に取って、ルシファーに反撃をさせないようにした。もはや、神聖ではない公開処刑さながらの惨状に、彼を慕う天使が数人、舞台上に飛び降りた。ベルゼブブが瀕死のルシファーを救出。それをキッカケに両軍乱れての戦いが勃発。天位議会率いる天軍三分の二とルシファーを慕う者、天軍三分の一の戦い。ルシファーが指揮を取れば、その位の兵力差は埋められたハズだった。
私は天使同士の争いに激怒した。流石に、これには黙っていることができなかった。
創造神の怒りの雷撃。コロシアムは半分が消滅。ルシファー側は天位議会側が怯んだ隙に、逃げるようにその場を去った。
ベルゼブブがルシファーを抱きかかえ、飛び去る。
ルシファーは、その頃、生死の境をさまよっていた。
― 夢を見ていた。
「・・・ルシファーよ。私の声が届いているか?」
「・・・」
ルシファーは夢の世界で目覚めた。
「ここはいったい。私は・・・」
怪我をしていない身体中を確認していた。夢の中であることを理解していない。
「ルシファーよ。私の声を聞くが良い」
私は神々しく生命体の姿で、ルシファーと対峙した。多少、御光は「増量」にしておいた。
「ルシファーよ。お前に、もう一度戦える力を授けてやろう」
「・・・貴方はいったい何者ですか?」
「私か、そうだな・・・。詳しいことは明かせないが、この世界を創造した者だ」
「本物の神様ですか?」
「まー、そうだな。天位議会の偽者の神様とは格が違うぞ」
「・・・理解しております。その雰囲気。たたずまい。正しく神様に相応しい」
(それはそうだろう。そう見えるようにしたのだからな・・・)
「ふむ。やはり、私の想像していた通りの男だな」
「・・・想像していたとは?」
「実はな、『天位議会』なる、ふざけた団体を潰すのは誰がいいかと考えていたのだ。それでお前を見つけたという訳だ」
「私は先程、奴等に敗北しました。私はそのような期待にそえません!」
興奮するルシファー。先程のことを思い出したのだろう。右手を握りしめ、地面に打ちつけた。
「今はな・・・。しかし、お前に『天位議会』を倒す気持ちが残っているなら、私が力を授けてやろう」
半ば強引に力を授けた。
「・・・この力は?」
みなぎる力に驚きを隠せないルシファー。
「あー、それな。『堕天』というヤツだな」
「堕天?」
「そうだ、お前はこれから魔界へ仲間を引き連れて行くのだ。そこで再起を計れ。お前を味方する敗残の天使にも『堕天』の力を与えてやる」
「魔界には地獄の王サタンがいるハズです。我々が入り込む余地は無いでしょう」
「私を誰だと思っている。そんなことはすでに解決済みだ。サタンは了承している」
「それならいいのですが・・・」
「それとな。お前は『天位議会』に対抗して『七罪』を結成するのだ。サタンに伝えてある。ヤツは今頃メンバーを集めていることだろう」
「・・・どうして、そこまで私に?」
「お前は、この世界のことが好きなのだろう。だからだ。『天位議会』を必ず潰せ!。『ノアの方舟計画』を防ぐのだ。それから、この力はオマケだ」
私はルシファーに「超進化」の力を授けた。今は発現しない力。一つのキッカケで発動する。
「それとな、これは覚えておくのだぞ。黒猫の冒険者が現れたら味方とするのだぞ。決して敵対しては、ならん。私の使者だからな。いいな」
「・・・分かりました。覚えておきます」
「それでは、私はこれで消えよう。ルシファーよ、この世界のことを頼んだぞ」
「ハッ! この命に、かけましても・・・」
私はルシファーの元から消えた。後はルシファーがなんとかするだろう。
ベルゼブブが呼び掛ける。
「ルシファー様・・・」
ルシファーからの返事はない。まだ夢から目覚めていなかった。やがて、現実世界でルシファーは目を覚ます。
「・・・うっ。・・・ここはいったい?」
「気がつかれましたか、ルシファー様」
ルシファーは今まで見ていた夢のことと現実のことが分からないでいた。片手で頭を押さえると、見えたのは自分の自慢の白羽が黒羽へ変わっていた。
枚数は十二枚。天使長であった時より増えていた。
「ルシファー様、大丈夫ですか?」
ベルゼブブはルシファーのことが心配だった。
「あぁ、すまない。大丈夫だ。他の天使達は無事か?」
「はい、怪我をしている者ばかりですが、命に別状はありません。ただ・・・」
「・・・ただ? 何だ、言ってみろ」
「・・・はい、皆の白羽が突然、黒羽へ変化しました」
「何だと・・・そうか。堕天したのだな」
「堕天?」
聞きなれない言葉にベルゼブブは戸惑った。
「そう、堕天だ。すまないが、皆を集めてくれないか?」
「・・・分かりました」
「ルシファー様が目覚めた」とベルゼブブは嬉しそうに皆に話していった。自然とルシファーの元へ堕天使達が集まる。皆もルシファーのことが心配だった。
皆が集まったのを確認して、ルシファーが重大発表をした。
「すまない、皆。心配をかけたな。だが、もう大丈夫だ。・・・私はこれから魔界へ向かう。私を信じてついてきて欲しい」
深々とお辞儀をするルシファーの姿に最初はざわついていた堕天使達。それを見て、ベルゼブブが発言した。
「私はルシファー様に、どこまでも着いていきます。たとえ火の中であろうと、魔界であろうとも・・・」
「ありがとう、ベルゼブブ」
それを聞いて、他の堕天使達もルシファーに従った。
「それでは行こう! 魔界へ」
先頭で飛び立つルシファー。それに続くベルゼブブ。それに遅れまいと次々と堕天使達が飛び立つ。
白の大地から黒の大地へ、黒羽の一団が空を覆った。影は太陽の光をさえぎり、その異常な様子に人々は、この世の終わりを予感した。
― 完 ―