庚申御遊の宴【第十三話】

文字数 512文字






「雀一羽落ちるのにも神の摂理がある。無常の風は、いずれ吹く。今吹くなら、あとでは吹かぬ。あとで吹かぬなら、今吹く。今でなくとも、いずれは吹く。覚悟がすべてだ。生き残した人生など誰にもわからぬのだから、早めに消えたところでどうということはない。なるようになればよい」

 猫魔はまた、『ハムレット』の同じところを引用する。

「なんじゃそりゃ。関係あるのか、猫魔」

「最善の生き方をするためには、覚悟して自分が最善だと思うことを成すべきだろうなぁ、ってな」

 ヂャンヂャンガラガラおどりが始まった音が聞こえ出す。

「始まったか……」
 破魔矢式猫魔は、大きく深呼吸した。


「今夜が庚申待の日なのに間違いないんだろうな、猫魔!」
「間違いない」
「僕は、最善を尽くす」
「なにもできないと思うぜ。沙羅美さんの計画はこの村が抱えるには大きすぎる。破綻を見ていても、罰は当たらないと思うぜ」

「もうひとりいるだろう。伽藍マズルカ。あいつは一体なんなんだ」

「確かめたいなら、行ってこいよ。特に止めもしないさ」


 僕は玄関で靴を履き、駆けだした。
「僕は愚者だから、経験で学ぶしか……ないんだ!」



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登場人物紹介

破魔矢式猫魔(はまやしきびょうま):探偵

小鳥遊ふぐり(たかなしふぐり):探偵見習い

萩月山茶花(はぎつきさざんか):語り手

百瀬珠(ももせたま):百瀬探偵結社の総長

枢木くるる(くるるぎくるる):百瀬探偵結社の事務員

舞鶴めると(まいつるめると):天狗少女。法術使い。

更科美弥子(さらしなみやこ):萩月山茶花の隣人。不良なお姉さん。

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