(8)

文字数 232文字

「ごらんよ!」
 ふいに、きつねが、ふさふさのしっぽをゆらして、ささやきました。

 さっきまでまっ白だった、くじゃくの王さまの尾羽が、ほら。

 ほんのり、ばら色になってきたのです。

 ほんとうは、王さまは、だいぶ前から目がさめていたのでした。
 でも、みんなの胸が、あんまりあたたかくて、きもちよくて……

 もうすこし、このまま、ねたふりをしていようかな。
 していたいな、と、王さまはおもいました。


 土の上では、雪だけが、しずかに、しずかに、降りつづけていました。


(おしまい)
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