第1話

文字数 1,205文字

 【畦道(あぜみち)】田と田との間の細い道。
 【農道】農作業、農作物の運搬などのために耕作地や田畑の間に作られた道。
 【スーパー】[形動]飛び抜けて優れているさま。きわめて強力なさま。また、複合語の形で用いて、以上、過度、超過、などの意を表す。「—な効果」「—デラックス」「—ヘビー級」
(いずれも goo辞書から引用)

 「昨日(きのう)のぅ、スーパー農道の砂越(さごし)から遊佐(ゆざ)方面でのぉ、ネズミ捕り(速度違反取締)やってたぞ。」
 地元温泉の朝風呂の常連からの情報だった。
 スーパー農道? 病院職員をはじめ、居酒屋の客など庄内の地元の方々から「スーパー農道」なる言葉を頻回に聞く。それは県道? 市道? よく分からないが彼らはそれが当たり前のように話す。辞書から調べた単語を(つな)ぎ合わせると、「飛び抜けて凄い農作業、農作物の運搬などのために耕作地や田畑の間に作られた道」となる。
 調べたところ、スーパー農道は、途中で短距離区間の県道や国道をはさんではいるが、庄内平野東部を南北にほぼ直線的に貫く、全長約 55㎞ に及ぶ広域農道である。通過する市町村は、山形県鶴岡市 ~ 東田川郡庄内町 ~ 酒田市 ~ 飽海郡(あくみぐん)遊佐町(ゆざまち)の2市2町に及ぶ。ちなみにほぼ伴走する JR羽越本線の最寄りの駅でいうと、藤島(ふじしま)西袋(にしぶくろ)余目(あまるめ)、北余目、砂越(さごし)、東酒田、酒田、本楯(もとたて)、南鳥海、遊佐(ゆざ)の10駅にもなる。
 出勤前に、余目から地元温泉の朝風呂に行く途中、余目、砂越、東酒田付近のスーパー農道を走りながら、何故、スーパーなのかを考えた。
 カーナビではスーパー農道なる表記はない。国道、県道よりも細い線で、田んぼの農道と同じ太さの線で記載されている。ところが実際は全線2車線で道幅が広い。路側帯がある区間もある。
 そして見渡す限りの直線区間が(つな)がっている。ほぼ全線が白のセンターラインで追い越し可である。制限速度、駐車禁止などの道路標識がない。あくまで農道なのだ。
 たまに酒田市街に通ずる東西に走る道路との交差点に信号がある。何とスーパー農道には右折レーンまで付いている。
 そして交通量が多い。並走する国道 345号線よりも車の往来は多く、大型トラック、トレーラーなどがバンバンすれ違う。その合間をぬって、農道の主役の軽トラが爆走する。速度違反の交通取り締まりもある。
 周囲は田んぼ、ビニールハウスで、農家が点在し、道路脇にお墓があったりして先祖代々の土地であることを感じさせる。道路の海側には防雪柵が延々と続き、冬に吹き荒れる北西の海風とそれによる地吹雪(じふぶき)が脳裏に浮かぶ。視界を遮るものはない。(はる)か遠くに鳥海山が見える。(写真1↓ スーパー農道の路肩から鳥海山を臨む)

 先祖代々の農地を貫く全長約 55kmに及ぶほぼ直線の道路をあくまで農道と呼び、しかもスーパーという接頭語までつける。そこに先祖代々、米を作り続けてきた農耕民族としての誇りを感じた。

 んだんだ。
(2024年4月)
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み