3.

文字数 824文字

ちょうど三年前。
春が訪れる直前の、ある冬の夜。
まさに今僕が寄りかかっている桜の木に、彼女は宙吊りになったんだ。
彼女の叔父と名乗る男の話をまとめるとこうだ。
その日まず学校に通うと、放課後にイジメグループの奴らに捕まり、彼女は笑いのネタとして辱められたらしい。
そして泣きながら哀れな姿で家に帰ると、今度は彼女を虐待する父親自身に辱められた。
彼女の母親は虐待する父親への恐れで、身を守る為に我関せずを貫いたことのことだ。
今までの仕打ちに加え、世間の笑いのネタ作りや個人の憂さ晴らしとして辱められて、追い打ちをかけられた自尊心が良からぬ企みを考えるのは必然だ。
それで彼女は夜の闇の中、この桜の木にぶら下がったらしい。

後々その話を聞いた時、僕は人目もはばからず今までで、いや、恐らくこの先の将来を考えても一番と言えるほど、泣き叫んだ。
僕が生きられるように支えてくれておきながら君はいなくなるのかよという皮肉と、彼女を失った悲しみの両方が混ざり合い、訳がわからなくなった。
春が訪れる前の雪解けのように消えた少女を思い、猟銃で撃たれた獣みたいに僕は泣いた。

実のところ、僕は知っていた。
彼女があまり表面に出さなかっただけで、裏では僕以上に苦しんでいたことに。
僕が来る前に、一人この桜の木の下で泣いているのを見たことさえあった。
でも僕は彼女にとても支えてもらっていたのに、彼女を助けることができなかった。
僕自身にそんな力はなかった。
周りに相談しようかとも考えた。でも中学生の僕の周りの大人と言えば、イジメを見て見ぬ振りをする人間か、「全て神に祈り、あとは神に任せなさい」と言う人間しかいなかったから、相談する気も失せていた。
でも何がどうであれ、僕が彼女を救えなかったのは事実。
中学一年で飛び降りた友人に引き続き、僕はまた苦しむ人を見殺しにしたのだ。
僕は、かけがえのないものを、失くしてしまったのだ。
僕は本当に馬鹿野郎だ。
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