第63話 美しい夢
文字数 655文字
ユウとの短い日々は、美しい夢だったのだ。ずっと孤独に生きて来た自分に対する、神のささやかな贈り物だったのかもしれない。
本当に、夢のような毎日だった。かつては、身が引きちぎれそうなほどに、今では当たり前のように、毎日、行彦のことを思い、行彦との思い出だけを心の支えにして生きて来た。
きっと自分は、そうやって一生を終えるのだと思い、それでかまわなかった。だが、思いがけず、ユウが目の前に現れ、すべてが変わったのだ。
無邪気でかわいいユウと心を通わせる幸せ、美しく官能的なユウの体に、我を忘れて溺れる淫らな時間。こんな日々が永遠に続けばいいと思ったが、心のどこかで、そんなはずがないと感じてもいた。
終わりは、あまりにも早くやって来た。だが、仕方がない。これでいいのだ。
ユウには、いや、有希には、自分など必要ない。彼の人生には、自分などいないほうがいいのだ。
彼の前には、無限の可能性が広がっている。自分が、それを狭めることなど許されない。
彼には、しっかり者の母親がついている。自分なんかが、彼の人生に関わるなど、おこがましい限りだ。
どうということもない。今まで、長い間過ごして来た、慣れ親しんだ、もとの生活に戻るだけだ。
夕方遅くに、マンションに帰り着いた。鍵を開け、中に入る。
「あぁ……」
ドアを閉めたとたんに、口から情けない声が漏れた。よろよろと部屋に上がり、床にへたり込む。
部屋のどこを見ても、そのすべてにユウの思い出が染みついている。
「ユウ!」
伸は、声を上げて、長い時間、泣き続けた。
本当に、夢のような毎日だった。かつては、身が引きちぎれそうなほどに、今では当たり前のように、毎日、行彦のことを思い、行彦との思い出だけを心の支えにして生きて来た。
きっと自分は、そうやって一生を終えるのだと思い、それでかまわなかった。だが、思いがけず、ユウが目の前に現れ、すべてが変わったのだ。
無邪気でかわいいユウと心を通わせる幸せ、美しく官能的なユウの体に、我を忘れて溺れる淫らな時間。こんな日々が永遠に続けばいいと思ったが、心のどこかで、そんなはずがないと感じてもいた。
終わりは、あまりにも早くやって来た。だが、仕方がない。これでいいのだ。
ユウには、いや、有希には、自分など必要ない。彼の人生には、自分などいないほうがいいのだ。
彼の前には、無限の可能性が広がっている。自分が、それを狭めることなど許されない。
彼には、しっかり者の母親がついている。自分なんかが、彼の人生に関わるなど、おこがましい限りだ。
どうということもない。今まで、長い間過ごして来た、慣れ親しんだ、もとの生活に戻るだけだ。
夕方遅くに、マンションに帰り着いた。鍵を開け、中に入る。
「あぁ……」
ドアを閉めたとたんに、口から情けない声が漏れた。よろよろと部屋に上がり、床にへたり込む。
部屋のどこを見ても、そのすべてにユウの思い出が染みついている。
「ユウ!」
伸は、声を上げて、長い時間、泣き続けた。