第一幕(2)
文字数 571文字
すなわちゲセン暦の秋、第一の月の二十二日。
惑星同盟エキュメンの使節として僕がこの星に降り立ってから、すでに半年が経過していた。
地球の、しかも亜熱帯育ちの僕には、厳しい土地だ。冬の星、ゲセン。
まだ秋の初めというのに氷点下だ、地面にはうっすらと雪が積もっている。
着ぶくれてふるえている僕を見て、エストラヴェンは不思議そうに言ったものだ、
エストラヴェンは僕を夕食に招待してくれた。パンの実と粗砂糖[あらざとう]、とぼしい食材をたくみにしつらえた繊細な料理の数々。すばらしい晩餐だった、グラスをたえずかきまわしていないとビールの上に薄氷がはってしまうという点をのぞけば。
ともあれ、まさかそれが首相としての彼に会う最後になるとは、僕は夢にも思っていなかった。
エストラヴェン自身も思っていなかったにちがいない、それとも――彼のことだ、予期していたのだろうか?