午前２時。
文字数 1,643文字
わ、もう来てたの？
神楽坂くんこそ早いですね。まだ集合時間よりも15分も早いのに。
遅れたら嫌だからさ。
女の子を１人でこんな時間に待たせるの嫌だし。
たまーに男の子らしいこと言いますよね。
腐っても男さ。
それじゃ、行きますか。
当然ながら、改札口はシャッターが閉まってますので、改札を通らずにホームへ行きます。
柵越えか、線路を歩くかになるのかな？
柵越え出来るならいいんですけど…。
いや、あれくらいの高さなら多分…！
神楽坂くんが骨折して運ばれていく未来が見えます。
ごめんね、危ない方になっちゃって…。
仕方ないです。人には得手不得手ありますから。
夜とはいえ、貨物列車は通ります。気をつけていきましょう。
※この物語はフィクションです。
※線路内に侵入することは、大変危険ですので絶対に真似しないでください。
※また、法律で罰せらます。
線路歩くなんて初めてだよ…
あと200メートルも歩けばホームですよ。
一応怖いので小走りで行きましょう。
うん…！
わっ…
やっぱり転びましたね…。
痛い…
ほら、行きますよ。
ありがと。
ん？あれって…
なんですか？
あーっ！！
声が大きいよ…！
あれですね！赤い列車！
ちょうどここ、ホームの柵の境目だね。
多分、ここから下がると…。
消えましたね！
視認出来るのはこの柵の範囲内、ってことでしょうか。
時間は…1時52分。
2時よりも前から出現してたのか。
消える時間も調査したいところですけど、今日はこのまま乗り込んじゃいましょう！
なんかちょっと楽しくなってきたよ！
行こう！
よいしょっ。
麻矢さん、手貸して…
この段差上がれませんか…。
駅のホームってちょっと高いよね…。
これは僕落ちたら上がれない。
ありがとう。
おおぉ！近くで見ると、なかなか…。
結構古びた車両ですね。
三両編成だ。
乗客は誰もいない、そりゃそうか。
運転席にも…誰もいないよ。
本物の幽霊がお友達なのに、今更こんなので驚きませんよ。
それもそうだね。
…すごいな。時刻案内まで出てるよ。
電光掲示板、もう消えてるはずなのに。
2時発…何行きって書いてあるんですかあれ？
読めないです。
うん、僕も読めないや…。
とりあえず乗ってみましょう。
ドア開いてますし。
次は内部調査だね。
なんかひんやりしてますね。
あ、冷風が。冷房ついてるんですね。
電気もちゃんとついてる。
全体的に古いけど、破損してる箇所もないね。今でもちゃんと整備されてるみたいだ。
真ん中の車両も見てみましょう。
ってもう先に見てるんですね。
特に変わったものは無いね。
ん？網棚の上に何かあるよ！
なんですか！
雑誌？…あ。
…見なかったことにしよう。
神楽坂くん、持って帰ってもいいんですよ。
いらないよ！
あ、ちょっとそれ取ってもらえますか？
えぇ！？もう触りたくないんだけど…
じゃあこれどうぞ。
ゴム手袋なんてよく持ってるね…
現場検証っぽいでしょ？
今度から僕も持ってくる！！
あ、それで雑誌を。
何する気なの…。
気づきませんか？
これ、表紙だけでもわかると思うんですけど。
人といる時にそういうもの見たくないんだけどなぁ…。
ただのアダルト雑誌だろ？
神楽坂くん、エッチなの見る時、こんなの見ます？
いや、ちょっとこれは古すぎる…あ！
古すぎますよねこれ。
雑誌の状態はそこまで劣化してないのに。
あ、ほら。1989年9月。
18年前…。
桜田さんが殺されたのも、確か18年前って…。
私にはどうも偶然に思えないんです。
いや、でもまだ材料が足りないよ。
もっと何か見つけないと。
最後の一両も見に行こう！
ところで神楽坂くん…。
どうしたの、深刻そうな顔して…。
本当にいらないですか…？
変に勿体つけて言うなよ！
いらないってば！
お待たせいたしました。
2時丁度、恵西駅発。………行き。普通列車。
間もなく発車いたします。
ドアが閉まります。ご注意ください。
アナウンス！？
でも姿はどこにも…。
ドアが閉まった…。
普通に動き出しましたね。
本当に、何も普通の列車と変わりませんね。
とりあえず外の様子は…。
…残念ながら既におかしなところに迷い込んでしまっているみたいですよ。
