3 ✿ Marie Escape 【マリー エスケープ】

文字数 1,175文字

咲良たちが、自習研修を始めた頃。


とらわれのマリー・ローゼンクランツはというと。

描きませんよ…

マリーはイスの上で、座禅をしていた。


 ぐぅううう~…

さっきから、おまえの腹が鳴りっぱなしだぞ

死んだって、殺されたって、絶対描きません!


画家として、絵画修復士としてのプライドです!

強がりも、いい加減にしろよ
誘拐犯「王 憂炎」は椅子から立ち上がり、マリーにナイフの切っ先を向けた。
描かないなら、死んでもらおうか
ふんっ!
おまっ……これ……

魔法に免疫は? 

私だって、魔女の端くれです

マリーは勝ち誇った様子で、流し目をくべた。
奇遇だな…
なにがです?
似たようなヤツを、うちも雇っているんだよ
ウィザードを!?

連れてこようか?

うちの用心棒は手加減を知らないぞ。

パブロフ兄弟。

その界隈では有名だそうだが、おまえも魔女なら知っているか?

(どこの犬ですか、それは。知らんのです)
(兄弟で、用心棒で、ウィザードが二人以上? これは逃げにくくなる)
マリーはうつむき、「おびえた表情」をつくった。
分かりました、描きます
お。やっと折れたか
でも、その前に
マリーは絵具をつかみ、見張りの男に差し出した。

何度も言っていますけど、こんな安物の絵具じゃ、すぐに偽物だってばれます。


ニセモノを売るにしても、少しは質の良い絵の具を用意してもらわないと

わ……分かった。上に聞いてみる
憂炎が、絵具へ手をのばした、その時。
マリーがチューブから真っ赤な絵具を飛ばしたのだ。

目、目が! 見えな…!!


ぎゃあ!

マリーは、男の股間を蹴飛ばした。

  エオーリシ

αιώρηση

絵具でもかぶって目を覚ませです
憂炎の顔にさらに絵具をぶちまける。


右手の指をくいっとふると、部屋のあらゆるものを浮かばせ、上から横からぼっこぼこにする。

ついでに絵具も飲めです。


水抜きの仕返しです

彼の鼻にチューブを二本さし、絵具を押し出す。

フガガガ……グガッ!!

さらにマリーは真っ白なキャンバスを両手でつかむと。
魔女をあなどるな、です!
しめに思いっきり男の頭に叩きつけ、彼を昏倒させた。
あ……う……ぁ……

ん、死んでない。

これは正当防衛なのです。

頭はヤラれたかもしれませんが。


――さ、今のうちに

憂炎のズボンのポケットから鍵を奪うと、廊下へ出た。


外に面した窓を開ける。

ふむ、5階ですか。

なにか、箒の代わりになりそうなものは……

お、おい。おまえ……!!


どうやって外へ……

もう1人の誘拐犯「王 雲嵐」は、目をしろくろさせた。
(むむ。迷ってる暇無し。でもパンツは見えるかもです)
マリーは窓を飛び出すと、外の配水管につかまり、ツゥーッとすべり下りていった。
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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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