第115話 お見舞い②

文字数 1,959文字

 昨日病院に行った時熱が高かったのでインフルエンザの検査をやった。
 結果は陰性だったが、念のため熱が下がっても2~3日は学校を休む様に言われた。

 高熱の所為か体力がごっそり無くなっているので今日も学校を休んでいる。

 ベッドに横になりながらチラッと時計を見る。
 まだ11時前だ。

 寝れば時間が早く過ぎるのだが、昨日結構寝てしまったのであまり眠くない。
 学校が無いとこんなにやる事がないんだな。

 撮り溜めたアニメでも見ようかと思いベッドから起き上がると同時にインターホンが鳴る。
 ウチは共働きなので平日に荷物が届くことは無い。

 勧誘か何かだと思い無視をすることにした。

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 何度もインターホンを鳴らされてイライラしていると、今度はスマホの着信音が鳴った。

 こんな時に誰だ? と画面を確認すると、授業を受けているはずの南からだった。
 俺は慌てて通話をタップする。

「もしもし、どうしたんだ? 今授業中だろ?」
「そんな事はどうでもいいの! どうして玄関開けてくれないの?」
「もしかして今鳴らしてたのって南か?」
「そうだよー、早く開けておくれ~」
「ちょっと待ってろ」

 通話を切り慌てて玄関まで行き、ドアを開けると

「ヤッホー! お見舞いに来たよー」
「いや、学校はどうした?」
「今日は臨時休校らしいよ」
「おかしいな。柚希は学校に行ったんだけどなぁ」
「まぁまぁ、細かい事は気にしない方が長生きできるよ」
「全然細かくないだろ」

 と俺が言うと、ワザとらしく頬を膨らませ

「む~、トモは私が来ちゃ迷惑だった?」
「そんな事はない、というか凄く嬉しい」
「だったら問題ないね! ささ、部屋に案内して貰おうか」

 こうして半ば強引に家に上がり込んできた。
 部屋に案内すると

「おー! ここがトモの部屋か~」
「とりあえずここに座ってくれ」
「アイアイサー!」

 といって座布団の上にピョンと座る。
 俺も座ろうとすると

「トモは寝っ転がってていいよ、病人なんだから」
「その病人に玄関を開けさせたのは誰だろうな」
「まぁまぁ、お見舞いの品も持ってきたから」

 と言って鞄をゴソゴソやりだした。
 そして薬局の袋を取り出して

「じゃじゃーん! はい、これ」
「ありがとう」
「開けてみて開けてみて」

 と急かすので袋を開けてみると

『これで自信回復! 精力増強赤マムシドリンク』

「……何? これ」
「買うの凄い恥ずかしかったよー。なんかジロジロ見られるしさー」
「そりゃ見られるだろ! 女子高生がこんなモノ真っ昼間から買ってたら!」
「えー、ネットで調べたら元気になるって評判だったんだよ?」

 それは違う所が元気になるんだよ! とは言えず

「まぁ、気持ちは嬉しいよ、ありがとう」

 と言ってドリンクを袋に戻すと

「飲んでくれないの?」

 と不安げに聞いてくる。

「あ、後で飲むよ。折角南が買ってきてくれたから大事に飲みたいんだ」
「ハイそれ嘘ー! トモは嘘吐く時どもるんだよねー。ほら、見ててあげるから飲んで!」

 俺にそんな癖があったとは!?
 くそ! こうなったら飲んでやる! ただの栄養ドリンクだしな!

「わかった、飲むから落ち着け」

 そう言って袋からドリンクを取り出す。
 箱は大きいのに中身は小さかったので一気に飲んだ。

「うぇ! 変な味だな。それに喉が熱く感じる」
「良薬口に苦しって言うしね。効いてる証拠だよ」

 あまりのマズさに近くにあった水を一気飲みする。

「あ、それは……」

 水をほぼ一気飲みして

「あー、まだ喉が熱い。ってどうした南?」
「え? う、ううん。何でもない」

 おかしな南だなと思っていると、ある事に気づいた。

 あれ? このペットボトルの水は俺のじゃない!
 という事は必然的に南の物になる訳だから……。

「ご、ごめん! 無意識に手を伸ばした先にあったからつい」
「べ、別に大丈夫だって! 今時間接キスなんかで動じるなんて小学生までだよー」
「そ、そうだよな」
「そうそう」
「「ははは」」」

 南の奴、気にしないとか言いながら顔真っ赤にしやがって! 余計意識しちゃうじゃないか!
 とりあえず話題を変えないと!

「そ、そういえば本当に学校は大丈夫なのか?」
「う、うん。私は部活さえ出れればいいかなーって」
「そ、そうか」
「……」
「……」

 気まずい! こんな時どうしたらいいんだ!
 とりあえずこの空気を何とかしないと!

「そ、そういえば何も出してなかったな。今コーヒー淹れてくるよ」

 と言って立ち上がると

「べ、別に気にしなくていいって。トモは病人なんだから。私は自分で水買ってきたし!」

 と言った後に、その水を俺が飲み干した事を思い出したのか慌てた様子で

「や、やっぱり学校行こうかなー、あははー」
「そ、それがいいよ。うん」

 玄関まで見送り、ドッと疲れが出たので自室に戻り眠りについた。
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