第7章 – 土砂降り 〜 2010年 3月末(9)

文字数 734文字

 2010年 3月末(9)
 


 順一は、今あるウインドウを消し去り、次から次へと再生させていった。

 まるで何かに取りつかれたかのように、

 次々と変化するディスプレイを見つめ続ける。

「父さん! 見ない方がいいよ! 止めてくれよ!」

 そんな言葉を聞けば聞くほど、
 
 順一は頑なになっていくようだった。

 ――嘘だ……嘘だ……。

 そう心で叫びながら、同じ動作を繰り返し続ける。

 そしてついに、運命の瞬間がやってくるのだった。

 ――まさか……そんな!?

 順一は目を覆いたくなるような光景に、

 思わず大声を上げていたのである。

「なんだこれは! どうしてこんなところに……唯がいるんだ!」

 そんな叫びと共に、鋭い視線を武へと向ける。

 すると武は既に、ディスプレイに映る動画など見ていなかった。

 画面を食い入るように見つめる順一の横顔を、

 ただひたすらに凝視していたのだ。

 そしていきなり合ったその目には、溢れんばかりの涙が溜まっている。

 彼はそんな涙を見て初めて、

 武も辛いんだということを知った。

 画面には無言のまま蠢く白い裸体が2つ……明らかにその動きは、

 カメラの位置を意識したものだった。

 そこからは、力による一方的な強引さが、

 さらにありありと伝わってくるのである。

「どうして……今まで黙っていたんだ……?」

「誰にどう言えばいいんだよ! 父さんに言えば良かったの? 言ったら父さ
 ん、どうしてくれてたんだよ?」

「それにしたって……これじゃまるで……」
 
 ――強姦じゃないか……!?

 順一には浮かんだその台詞を、
 
 言葉にすることなどできなかった。

「初めは……こんなんじゃなかったんだ。こんなのじゃなくて、もっとお遊び
 っぽいやつだったんだよ。だから俺……仕方ねえなって……」
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