一番偉い奴は大体ヤバい法則 3
文字数 1,439文字
その後はまぁ。
ある意味で街の伝説になった、半日以上に渡る地獄の鬼ごっこである。
謎の黒髪は、遠慮も配慮も一切なく街の地形まで変えるほどの大破壊をついでとばかりに撒き散らしつつ、逃げ続けるカインをどこまでも追いかけて来た。
何をどうしようが一切諦める事もなく、しかも体力にもそれなり自信があったカインですら力尽きる位の長時間追いかけ回しても余裕のまま、結局倒れたカインを平然と回収して帰って行ったのだ。
ロヒムの中央。
解析本殿。
ソコが見えた頃にはカインは気を失っていたので、最初に入った時のことは覚えていない。
気づけば見知らぬ天井だった。
そりゃもう確実に見覚えがないと言い切れるのは、記憶の限り布張りな天井なんてものをカインが見たことなかったからだった。ついでに言えば、目覚めたときはソコが解析本殿だと言うことすら知らなかった。
だから一体どんな恐ろしい場所にいるのだろうと、まず得体の知れなさにぞっとした。
「起きたか」
「うおっ!?」
そしてすぐに声をかけられれば当然驚くに決まっている。
ついでにそれが自分を散々追いかけ回した声だとすぐに思い出した……ので、逃げるのは諦めた。
無理である。
普通に全力出しても逃げ切れず捕まってここにいるらしいのに、一体どうやって逃げるのか。しかも見知らぬ建物にまで連れてこられ、現在地もわからない状態で。
そこまで覚悟を決めたカインは、大きなため息を吐いて、自分が転がされていたソファーの上に再度沈み込んで天井を見上げる。
「お前、何なの? マジで何様なの。俺なんか追いかけ回して何したいの」
変態なの? とは辛うじて口に出さなかった。
それこそココで命が消えそうな気がしたので。
ただ、とりあえず怖いので黒髪の方は見れなかった。何しろ単純な体力でも腕力でも解析でも全部負ける相手である。多分頭脳とかも余裕で負けている。それは鬼ごっこで察した。つまり思いつく限り大体の能力全部、カインが負けている。
そんな恐ろしいものがこの世に存在するなんて、この世は不公平すぎる。
「今頃誰何とは。随分呑気なものだ」
「いやお前。逆に、ここまで呑気に尋ねられるような状況あったか?」
出会った。
睨まれた。
追いかけられた。
此処までにあった出来事なんてそれだけである。ゆっくり会話するような瞬間などなかったと思うのだが、この化け物的には違うのだろうか。そんな事を思っていたカインに、その化け物は答えをくれる。
「オレ様はケテル。ここの主人だ」
「はぁ。ここって言われても何処だか知らねーんだけど……って」
なんか聞いたことある単語があった気がする。
あまり賢くないという自負のある彼だが、それでも一応学校に通いそれなりに勉強はしてる訳で。だから授業などで学んだことであれば、稀に頭の片隅に残っている筈で。可能性があるとすればその辺りしかないだろうとカインは考えて。
「…………けてる?」
明らかに単語として成立していそうなのはそれしかないと気づく。
名前。の、はずだ。
この黒髪の。
名前?
「ケテルって、お前、それ、セフィラの」
ヤーフェの抱える第一のセフィラ。
この国の王よりも偉い、世界でも限られた、特別な名を持つ解析士。
世界の中央に仕える絶対者。
確か、その人の名がそう、だったような。
「さすがに貴様のような凡愚でもこの名は知っているようだな」
気のせいか、呆れたような色の混じる声でケテルは肯定した。
これが二人の最初の出会い、その顛末だった。
ある意味で街の伝説になった、半日以上に渡る地獄の鬼ごっこである。
謎の黒髪は、遠慮も配慮も一切なく街の地形まで変えるほどの大破壊をついでとばかりに撒き散らしつつ、逃げ続けるカインをどこまでも追いかけて来た。
何をどうしようが一切諦める事もなく、しかも体力にもそれなり自信があったカインですら力尽きる位の長時間追いかけ回しても余裕のまま、結局倒れたカインを平然と回収して帰って行ったのだ。
ロヒムの中央。
解析本殿。
ソコが見えた頃にはカインは気を失っていたので、最初に入った時のことは覚えていない。
気づけば見知らぬ天井だった。
そりゃもう確実に見覚えがないと言い切れるのは、記憶の限り布張りな天井なんてものをカインが見たことなかったからだった。ついでに言えば、目覚めたときはソコが解析本殿だと言うことすら知らなかった。
だから一体どんな恐ろしい場所にいるのだろうと、まず得体の知れなさにぞっとした。
「起きたか」
「うおっ!?」
そしてすぐに声をかけられれば当然驚くに決まっている。
ついでにそれが自分を散々追いかけ回した声だとすぐに思い出した……ので、逃げるのは諦めた。
無理である。
普通に全力出しても逃げ切れず捕まってここにいるらしいのに、一体どうやって逃げるのか。しかも見知らぬ建物にまで連れてこられ、現在地もわからない状態で。
そこまで覚悟を決めたカインは、大きなため息を吐いて、自分が転がされていたソファーの上に再度沈み込んで天井を見上げる。
「お前、何なの? マジで何様なの。俺なんか追いかけ回して何したいの」
変態なの? とは辛うじて口に出さなかった。
それこそココで命が消えそうな気がしたので。
ただ、とりあえず怖いので黒髪の方は見れなかった。何しろ単純な体力でも腕力でも解析でも全部負ける相手である。多分頭脳とかも余裕で負けている。それは鬼ごっこで察した。つまり思いつく限り大体の能力全部、カインが負けている。
そんな恐ろしいものがこの世に存在するなんて、この世は不公平すぎる。
「今頃誰何とは。随分呑気なものだ」
「いやお前。逆に、ここまで呑気に尋ねられるような状況あったか?」
出会った。
睨まれた。
追いかけられた。
此処までにあった出来事なんてそれだけである。ゆっくり会話するような瞬間などなかったと思うのだが、この化け物的には違うのだろうか。そんな事を思っていたカインに、その化け物は答えをくれる。
「オレ様はケテル。ここの主人だ」
「はぁ。ここって言われても何処だか知らねーんだけど……って」
なんか聞いたことある単語があった気がする。
あまり賢くないという自負のある彼だが、それでも一応学校に通いそれなりに勉強はしてる訳で。だから授業などで学んだことであれば、稀に頭の片隅に残っている筈で。可能性があるとすればその辺りしかないだろうとカインは考えて。
「…………けてる?」
明らかに単語として成立していそうなのはそれしかないと気づく。
名前。の、はずだ。
この黒髪の。
名前?
「ケテルって、お前、それ、セフィラの」
ヤーフェの抱える第一のセフィラ。
この国の王よりも偉い、世界でも限られた、特別な名を持つ解析士。
世界の中央に仕える絶対者。
確か、その人の名がそう、だったような。
「さすがに貴様のような凡愚でもこの名は知っているようだな」
気のせいか、呆れたような色の混じる声でケテルは肯定した。
これが二人の最初の出会い、その顛末だった。