人喰い熊 6

文字数 586文字

「そう言われても、それ」

マルの腰を指す。

マルの身に付ける鎧に血痕が付着していた。

「ええっ! いつの間にあたし怪我してたの? ジュ、看病してくださいー!」

「おい、違うだろ」

「あ、バレてます?」

「擬態する時、見本にした鎧に付いていたんだろ」

「あーあ、残念っ」

「全く」

「レアー。今、ジュに傷付けられた私の心の傷も治してー」

マルはレアに駆け寄る。

レアは詠唱を中断して、逃げ回る。

「マル! レア!」

ジュは大きな声で呼び戻す。

マルとレアはしょんぼりして歩いて戻ってきた。

レアは再び治療を始める。

「そういえば、マル」

「何ですか?」

「どうして、分泌物の玉を相手の口に当てなかった? 口に当てれば窒息できたのに全て足元と腕に当たっていた」

「ジュはあまり殺害を好まないので」

「そうか、すまないな」

「って言っても、司会者だけは違いますけど」

「そう言えば、司会者は腹部に直撃していたな」

「だって、何かといちいち実況するから煩くてつい…」

「構わないよ。それでも殺していないからね」

「でも、今回は熊達の追撃したから、生存者は居ないと思います」

「ああ。仕方ないさ。それだけの事を人は何年も続けてきたんだ」

「はい」

「仲間が次々と神隠しにあっていると熊の長から依頼を受け、この都市を探って正解だった。真相を見つけるのが長引くとそれだけ犠牲になる熊が増える。山を焼き払ってまで熊を追い込んだのはやり過ぎたね」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み