第3話(2)

エピソード文字数 2,458文字

「黒潮万歳! 高知の海は最高ぜよ!!

 どうにか精神を正常に戻し、AM9時丁度にワープで出発。俺達は今、高知県高知市の浦戸(うらど)にある、桂浜(かつらはま)という場所におりますです。

「岬先生と岬先生の間にある砂浜先生が、弓型に伸びていて素晴らしい……! 感嘆するぜよ……っ」

 フュルのこの台詞の通り、ここは砂浜が弓のような形をしている。この芸術的な形状、そして松をはじめとする周囲の絶景が互いを引き立たせ、高知県を代表する観光スポットとなっております(高知をメインにしたTV番組、また高知をテーマにした記念切手やポストカードが作られる際は、非常に高い確率で採用されます。そのため、ご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか)。

「ワシ、感激しちゅうぜよ……っ。きっと坂本先生もこの景色を拝んで、感動したがやね……っっ」
「ふふ、よかったわねフュルさん。ずっと来たかった場所の一つに来られて」
「『遠見』でドラマさんを見た時から、龍馬さんが生まれたトコに来たがってたもんねー。おめでとー」

 波打ち際でフュルが万歳三唱をして、仲間の二人が左右から祝福する。
 この子は忘れ物を取りに戻った俺を忘れて転移しそうになるくらい、ウズウズしてましたからなぁ。喜びも一入でしょう。

「潮先生の香り、風先生の匂いも素晴らしい……! 高知県は、第二の故郷やき!」
「ははっ、気に入ってくれて何よりだよ。時間はたっぷりあるから、思う存分満喫してくださいな」

 ここ桂浜は、今いるエリア以外にも見所は沢山あるのです。たとえば、ここから見える『竜王岬(りゅうおうざき)』もそう。ネットの世界では時々『行ってみると、大したことなかったかな』や『行ってみたけど、想像以下だった。ガッカリ』という意見を見掛けるのだけど、やはり立派な『見所』だと思う。自分的にはソコから眺められる雄大な景色がオススメで、良い思い出になると確信しておりますよ。

「今日は一日中天気が良くて、絶好の観光日和だ。ごゆっくりどうぞ」
「師匠、深謝ぜよ! でも行きたい場所先生が多くあって、長居はできんがよね……!」

 そういや、坂本龍馬に関するトコはできるだけ回りたいんだったな。明日明後日は申し訳ないがロクに観光をできないんで、それなりに急がないとだ。

「しかしっ。中途半端で終わらせるのは、桂浜先生に失礼! そして、ワシも嫌やろっ?」
「そこでどうして疑問形になるのか謎だが、まあそうだね。アナタ自身も嫌でしょう」

 憧れの高知県にある、名スポットなんだ。ぜよぜよ娘が、半端にできるはずがない。

「だからワシは、心を開放して楽しむがよっ。全てを曝け出して浜先生を満喫するコトにより、短時間でも長時間に匹敵する満喫っぷりになるがよね!」
「なんか理解できるようで理解できないが…………まーいいや。観光部門の主役はアナタなので、アナタのお好きなようにどうぞ」
「おうぜよっ! それじゃあ師匠、開放して楽しんでくるきね!」

 フュルちゃんはスチャッと手を上げ、左方向に――俺達から遠ざかる形で、ダダダダダと走り出す。
 あの龍馬大好き娘さんは、これから一体なにをするのだろうか? 気になるのでチェックするとしよう。

「ぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよ!」

 まずは砂浜をジグザグに走り、そのあと突然停止。海に向かって片膝をつき、「ぜよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」と吠えた。

「うん、いつも通りよく分からん。それであの子、次はなにをするのかねぇ?」
「ぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよ! ぜよぜよぜよぜよぜよ――ぁっ、すまんぜよっ! ぜよぜよぜよぜよぜよ!」

 再び走り出した彼女は、海と幼女ちゃん(多分お孫さん)を撮影しようとしていた老夫婦の邪魔をしてしまい、まずは謝罪。そのあとデジカメを預かり三人を写してお詫びをし、またまた砂浜をジグザグに走る。

「なるほどなるほど。で、ここからどうなるのかな?」
「ぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよぜよ!」

 フュルは両手を広げて勢いよく跳び、推測するに全身で潮風を味わう。そして綺麗に着地――はせず、ワザと顔面から落ちて砂に顔を埋めた。

「ふごふごふごふごふごふごふごふごふごー!」

 変な子は四肢を楽しそうにバタバタさせ、ソレをやり続けて2分程が経過。なんか面白くなってきたのでムービーを撮っていたら、ムクッと起き上がってまたまたまた走り出した。

「ほぅほぅ、ほぅほぅ。んで、このあとは何をするのでしょうか?」
「そこにいる先生らぁ知っちゅうかえっ? 桂浜先生は、月の名所なが! これはウソじゃなくて、ちゃんと民謡にも出てくるがで!! 今度見に来てみいやっ!!

 勇者魔法使いは俺が教えた知識を大声で発表し、ここでUターン。数々の先生らぁ(観光客様)にビックリされて戻ってきた。

「はいゴールで、すーはーすーはー。観光名所の一つっ、桂浜先生の大地と空気をバッチリ感じ取ったぜよ!」

 帰ってきたフュルは満面の笑みを浮かべ、Vサインでフィニッシュ。
 このお嬢さんは散々走って、120秒以上砂とくっついてたもんな。それはもうバッチリ感じ取れたことでしょう。

「ワシは、ちゃんと満喫したぜよっ。レミア先生とシズナ先生はどうかえっ?」
「あたしもすーはーして、砂さんとか波さんを目に焼き付けたよー。シズナちゃんは?」
「しっかり記憶したわ。全身で、浜を感じました」

 滞在する時間は短かったが、皆満足したようだ。かくいう俺も、数年ぶりに眺められて大満足です。

「それじゃあ師匠、行くぜよっ。次の目的地に!」
「『次』というと、当然アレだよね? フュルちゃん?」
「そうぜよ! 『坂本龍馬像』ぜよ!」

 桂浜には坂本龍馬の銅像があって(ここから徒歩数分の距離)、それも名物の一つ。そこで俺らは浜さんに別れを告げ、近くにある像を目指したのでした。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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