城塞都市エリコ
文字数 772文字
ダビデは言った。遊女ラハブとメイクラヴできるものと思っていたら、旅人を名乗るふたり組の客が加わったからである。
ダビデは童貞であり、相応に純情であった。
「はじめては高台の見晴らしのいい家で、までは合ってたんだがなあ。レビ人の側妻※とかロトの娘※の薄い本じゃイマイチ抜けない体質には厳しいかもしれない」
※レビ人の側妻:旅の途中、大量のホモに掘られそうになった夫の身代わりとなって殺された女性(士師記19章)
※ロトの娘:地上に現れた天使たちを守るため、荒ぶる男たちに差し出されそうになった二人の娘。幸いその場では処女が守られたが、その後やむなく父ロトとの間で子を為すことになる(創世記19章)
※誇張ではなく本当にそういう話です
ダビデが窓の下、城壁のふもとで眠るミカルを眺めてたそがれていると、声をかける者があった。見よ、横入りしてきた旅の男たちであった。男たちは言った。
「あなたはダビデ殿、でしたか。我々ははるか東方よりエジプトを目指して旅する者です」
「あなたはどちらまで?」
男に興味はないと思いつつ、ダビデは答えた。
嘘を言うのも面倒だし、どうせ冗談と思われるだろう。そう考えて正直に答えたダビデに男たちは首を捻った。
「ペリシテ……?」
「母艦ということは海賊の名前か何かですかな?」
ペリシテの攻撃はイスラエルに集中していたが、その脅威は広く知れ渡っているはずであった。いかに遠方からの旅人であろうとも知らないことなどあるだろうか。
不審に思い尋ねようとした時、ラハブの家の戸を叩く者があった。
「守衛所の者である! この家に外患誘致の疑いありにて取調べを行う! 疑いが誠であれば死罪は免れぬと心得よ!!」