第54話 就任お祝い:2023年7月

文字数 1,211文字

(駿河大輔が、南山洋子の社長就任をお祝いする)

2023年7月。日本。関東地方にあるレストラン。

大輔が、洋子のアマゾネス・ウーマンズ・パートナー社の社長就任のお祝いをしてくれるという。この話は、少し前から出ていたが、日程の調整で延びていた。大輔は、「前回は、フォーマルなレストランたったので、今回は、ちょっと、趣向を変えてみたい」という。洋子は、大輔から「環境に優しいビーガン料理はどうですか」と聞かれたので、「ビーガン料理は、食べたことがないので、いいわ」と返事をした。
大輔は説明した。
「ビーガン (vegan)というのは、菜食主義、つまり、ベジタリアンと似ているので、間違えられることもあるのですが、ビーガンは動物性食品をいっさい取りません。つまり、卵・乳製品・はちみつも口にしません」
「ビーガンに良い点があるんですか」と洋子が聞いた。
「そうですね。第1に、動物を殺し、動物から搾取しないので、残酷ではありません。第2に、水資源や環境への負荷が小さくなります。なお、ビーガニズムには、食事だけを問題にする場合と、衣食住全てを問題にする場合があります」
ウェイターが2人にメニューを持ってきた。
「さて、何にしましょうか。お好きなものはありましたか」
大輔が聞いた。
「ビーガンと聞くだけでドキドキして、何をオーダーしたらよいのか、わからなくなります」
洋子が答えた。
「そうですよね、二人とも、ビーガン初心者ですから、メニューを見ても、よくわかりませんよね。それでは、この『今日のお薦めコース』はどうでしょうか」
「おまかせメニューですね。いいですわ」
「ワインはと言いたいところですが、今日は、車を運転しているので、ソフトドリンクにしましょう」
しばらくすると、前菜、スープ、サラダ、肉料理が運ばれてきた。洋子が、驚いたのは、料理が変わっていたからではない。その逆で、ビーガンでない普通の料理と区別がつかなかったからである。
「ビーガン料理に肉が出てくるとは思いませんでしたわ」
洋子が、肉をナイフで切りながら言った。
「最近、アメリカで、ビーガン料理の人気が出ている理由のひとつは、ビーガンではない料理との差が小さくなっているからなんです」
「この肉料理は、合成肉なんでしょう。それに、バターの香りもするわ」
「ビーガン・バターといって、バターの代用品もありますので、普通と変わらない調理ができます」
「私は、てっきり、コオロギ・パウダーでもつかった料理が出てくるのかと思っていました」
「コオロギも環境負荷が小さい注目の食材です。しかし、コオロギは、動物性タンパク質なので、ビーガン料理ではつかいません」
「あら。そうですよね。コオロギは動物なので、入っている訳はありませんね。うっかりして、混乱していました。ビーガン料理は、素材は、日本の精進料理に近いでしょうが、食べてみると、普通の肉料理なので、料理の目指している方向が違うと感じられます」
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