強くなること②

文字数 676文字

「終末の騎士団に、入団したいとな?」
「はい……」

 村長は鋭い視線をキールへと向けた。以前のキールの行いを、村長たちも忘れた訳ではないのだ。キールは緊張した面持ちで口を開く。

「以前の自分は、強さだけを求めていました。でもそれは、間違いだって気付いたんです」

 ただ強くなるだけなら、きっと身体を鍛えることで強くなれるのだろう。だが、

「大事なのは、強くなることじゃない。どうして強くなりたいのかだと、思います」

 マルクの純粋な疑問が、キールの間違いを指摘してくれた。それで気付くことが出来た。日常の尊さを。

「俺はもう、この村にモンスターを近づけさせたくない」

 この思いは自分勝手と言われるだろうか。
 でも、キールにとっては譲れない思いに変わっていく。

「だから、終末の騎士団に入って、村を立派に守れる、騎士団員になりたいんです」

 真っ直ぐと村長の目を見て言い切るキールの視線を、村長も真っ直ぐに受けとめた。そしてその重い口を開く。

「良かろう……。だが、入団試験は厳しいと聞く。その厳しさにも耐えられると言い切れるかね?」
「もちろんです!」

 村長の言葉にキールは間髪入れずに答えた。どんな試練でも、この思いがあれば乗り越えられる。キールにはその自信が不思議とあった。

「分かった。キールよ。村を離れるが良い。マルクのことはワシらに任せなさい」
「ありがとうございます!」

 村長の許しを得たキールは翌日、村を出る。マルクはキールの背中を、涙を堪えて下唇を噛みながら見送った。
 キールは必ず強くなって村へと戻ってくることを誓い、この日、新たな一歩を踏み出したのだった。 
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