2 違和感

文字数 891文字

夕闇が迫り、徐々に冷え始めた。
灼熱の砂漠でルシファが長いコートを着ていた理由がようやく理解出来た。ラクダに乗せてあった荷物を降ろすと、その中から何やら大きな布を一枚取り出してきた。
それは、テントというものらしい。
地面に杭を打ち付け、布の端についている紐をその杭に結び付け組み立てる。すると布は立体的な部屋になり、その中で寝る事が出来るようになるのだ。
メルとナサは、テントというものに凄く見覚えがあった。
アイサイ公国で居住に使っていた天幕そっくりなのだ。違う事といえば組み立てた後の形。天幕は六角形に近い形になるのだが、テントは立体的な三角形である。

この世界にはまだまだ私の知らない事がいっぱいあるんだろうな。

メルは自分の中に新たな知識が入っていく事を想うとわくわくせずにいられなかった。
ルシファは慣れた手つきで素早く組み立てていく。ルシファが組み立てている間、ナサは今晩の食事の準備を担当する事になった。メルはナサが料理しているところを初めて目にする。
ナサはメルの護衛と身のまわりの世話が主な業務で料理といったものは王宮の料理人に任せっきりだった。
大丈夫なのかな……。
と思ったのはナサ自身もだった。
いざ、料理を始めようと器具や食材を並べたものの何をどうすれば料理が出来るのかさっぱり分からなかった。食材は確かこんなに大きくなくて、もっと細かかったような……と今まで出されていた料理を思い出しながら恐る恐る食材を包丁で切り始めた。
結果は、言葉で表せられないぐらい悲惨だった。野菜は、殆ど火が通っておらず皮も芯も残っていて動物の餌のようだったし、味は想像を絶するものだった。
「これ……は……なんというか……まぁ……個性的な味付けだな……」
ナサを気遣ってかルシファは言葉を濁したが、いっその事素直に不味いと言ってほしいとナサは思った。メルはというと、何も言わずにいつも通りぱくぱくと食べ進めている。
「メル様、その、大丈夫ですか?」
当の本人はというと
「ん? 何の事?」
ときょとんとした顔だった。
そんなメルに若干引き気味の二人だったが、ナサはふと思った。

メル様ってこんなに味おんちでしたっけ。
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登場人物紹介

メル(13) 出身:アイサイ公国


アイサイ公国の皇女。


自然を愛する心優しい少女。天然ボケな一面も。

一般常識をあまり知らない。

恐怖心を持つ事はあまり無く、動揺する事も少ない。

常に開放的な心の持ち主で相手の心を誰よりも理解し、寄り添う事が出来る。その為か、人に好かれやすい。


水を自由自在に操る力、水術《ウォーリアン》は、まだ見習い中。


……。

ナサ(20) 


メルの侍女。

冷静沈着で物静か。感情をあまり顔に出さない。


自分とは真逆のメルを心の底から尊敬しており、守りたいと思う。

仮面の少年 (推定10代)


平和な国、アイサイ公国に現れた謎の少年。

白い装束の軍隊を引き連れている事から、上の身分と推測される。


彼の目的とは……。

謎の少女


メルの夢の中に出てきた黒髪の少女。

アイサイ公国の服を着ているが……。


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