詩小説『私を作家にさせた恋』3分の文学。失恋した人へ

エピソード文字数 847文字

私を作家にさせた恋

恋はレンタルビデオだ。

忘れた頃に観返せば、あの日みたいに蘇る。

もう何度と見返したわ。
次のシーンも読めるほど。そう、あの台詞一語一句覚えるほどに。

もう何日延滞したことだろう? 返却出来ずに、部屋に転がる。

ふらつき棚を探してみても、新作はまだ出てないようだ。

うん、恋はレンタルビデオだ。

五畳ほどのアパートを飛び出した。
宛てもなく夜の街を歩く。
賑わう雑踏を擦り抜けて、街灯りの中へ。
私はただの通行人。
匿名希望、だけど捜索願い。
交差点で見上げた月は、満月が少し欠けだしてた。

私を捨てた彼が、私を作家にさせた。
ドラマチックな再会で、ハッピーエンドなクライマックス描いてる。
殴り書きの物語。

私を作家にさせる。

恋はレンタルビデオじゃない。

録画されたみたいに、巻き戻しはできやしない。

レンタルは出来たとしても、私の物にはなり得ないから。

全米が涙した物語ではない。片隅の、私の、地味な物語。

二泊三日、いや、当日返却でも良い。借りようと棚を探しても。

カードをお作りになられますか?
いいえ、恋はレンタルビデオじゃない。

目まぐるしく廻るこの街に、取り残された公衆電話みたい。
見向きもせずに通り抜けてく通行人を、ただ静かに見送るだけ。
クモの巣をつけるその扉を誰しも開けることはないのだろう。
まるで、私みたいだ。
手紙に認めるとしたら、緑の電話の下に置かれた、電話帳くらいに分厚くなるわ。

呆気なく散ったこの恋が、私を作家にさせた。
空港で入れ違いになったキャリーバッグ。
私のじゃないのにナンバーロックが開いた。
向こうから私と同じ色と形のキャリーバッグ転がしてやって来る彼。
「これ? あなたのですよね?」
って、そんな再会を描く。
ロックのナンバーは彼との記念日。
殴り書きの物語描く。

私を捨てた彼が、私を作家にさせた。
ドラマチックな再会で、ハッピーエンドなクライマックス描いてる。
殴り書きの物語。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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