魔界のつぼ - 異世界ショートストーリー
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文字数 1,803文字
どうした、勇者よ。もう後がないぞ?
えーと、魔王!
先方が名乗りをあげている以上、呼ぶときには省略せずに名前を呼ぶこと。
これが最低限の礼儀でござる。
僧侶も応援してるからね!
バルバルちゃんでも、魔王ちゃんでも。
陛下のお名前は、先代が陛下のことを思ってつけられた大切なもの。
それを人間どもに知らしめることが、我等魔族の悲願。
お名前を変えられてしまっては、先代に申し訳が立ちませぬ!
う、うむ……そうだった。
我こそが魔界の帝王、ヴァルドボルグ・ディノバルス様だ!
ヴァルド……。
じゃあ続けて……ヴァルドボルグ・ディノバルス。
それをゆーくんのせいにして!
「意味とか別によくない? 濁点多くてカッコいいじゃん」、と。
えーと……カッコいいよな。な、魔術師?
えーと、僕が貴様を倒す!
魔王ヴァルドボルグ・ディノバルス!!
やるじゃねえか。
ま、魔王さん……!!
ここは、そっとしておくのがよいでござろう。
やりましたな、陛下。
私も長年お仕えてしてきて、これほど心を動かされたのは初めてのこと。
そして人間どもは畏れ敬いながら、その名を称えることとなるのです!!
王国歴794年、魔王バルバルと勇者の戦いは引き分けに終わった。
一説によると魔王は「名義変更の手続きで忙しくなるから、そっちが片付かないと侵攻は無理」と言い残して魔界に帰っていったという。
おしまい
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