空手家は何故アッパーやフックを使わないのか?

文字数 718文字

先述した通り、現代空手にはボクシングの技術が取り入れられています。ワン・ツーからのコンビネーションがその代表例です。

しかし、そのコンビネーションにアッパーやフックが組み込まれることはありませんでした。
空手にも「上げ突き」や「(かぎ)突き」といったアッパーとフックに近い技はありますが、これらの技が試合で使われるところはほとんど見たことがありません。

ワン・ツーときたら続けてアッパーやフックも打てば良さそうなものを、何故そうしないのでしょうか?

答えは、ストレートに比べてアッパーやフックは拳を痛めやすいからです。

真っすぐ打ち出すストレートに対し、曲線を描くアッパーやフックは軌道が複雑なため、目標を拳頭の部分で捉えるのが難しいのです。

つまり、アッパーやフックはグローブありきの技だということです。
素手や薄手のサポーターで打つには、拳への負担が大きすぎるのです。

もちろん、そうした実用面だけではなく、「アッパーやフックまで取り入れてしまったら、さすがに日本武道っぽくないな」という印象の問題もあったのかもしれませんが。

ちなみに、アッパーはともかくフックは拳を痛めず安全に打つ方法があります。
拳ではなく「掌底」を使うことです。

試しに道場で掌底のフックを使ってみたら、普段からフックの軌道に慣れていない空手家の皆さんには面白いほど決まりました。

ただし、先生には「そんなもん空手の技じゃねえ!」と怒られましたが…。

おかしな話です。
なぜボクシングのワン・ツーは良くてフックはダメなのか問いただしてみたい衝動に駆られましたが、他の生徒たちの前で恥をかかせるのもどうかと思い、やめておきました。

人に恨まれないようにすること。
これもまた護身術であり、武術です。

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