第45話よし、前祝いで乾杯だ

文字数 1,325文字

到着後、お座敷へと通され、雨宮リーダーの掛け声のもとビールでの乾杯で始まった。
俺以外の全員がまだ30代という事もあり、酒量も次第に増えていったのだが、それ以上に底無しの食欲に度肝を抜かれたのである。
最初に用意されたお通しを軽くペロリと平らげてから、注文した刺身の舟盛り、もつ鍋、焼き鳥、サラダ、枝豆、餃子、鶏の唐揚げ、ピザ、揚げ出し豆腐と、あっという間に皆んなの胃袋の中へと消えていった。
そして最後の締めにと、お茶漬けを注文した頃であった。
店内が喧騒でざわめく中、何処からともなく、今日おこなった実験についての感想が聞こえてきた。
「今日の実験でマウスの体内が金色に光ったのにはビックリしたよなあ」
「そうだよな、もしかして鳳凰と孔雀の影響を受けて、あのマウスから羽が生えてきたりして?」
「アハハ、馬鹿だなあ。
そんなこと、あり得るはずが無いだろう。
それよりも明日になったら、からだ全体が金色になっているんじゃないか?
世界初のゴールドマウスの誕生だよ、アハハ」
俺の耳には色々な面白い会話が聞こえてきていた。
しかしそのような話題が出て来ているという事は、皆んなも今日の実験に於いて何らかの手応えを感じ、そしてその結果、いままでの鬱憤を 晴らすことができ、気が楽になったからであろうと嬉しくも思った。
更に俺は、他のことも考えていた。
「俺は鳳凰の子孫が、現代でも生き続けている孔雀だという事を信じて疑わない。
そして800年前まで八ヶ岳の山中に棲息していた鳳凰の遺物が、不思議なマリモなんだ。
その不思議なマリモと、現代にも生き続けている孔雀の飾り羽にあるDNAとが、混ざり合わさる事によって化学反応を起こし、奇跡を生み出してくれるのだとも信じている。
しかし鳳凰がこの世から姿を消してから、もう800年という長い年月が過ぎ去ってしまっている。
孔雀が代々、鳳凰から受け継いできたDNAも世代を追うごとに、そうとう薄くなってきている事であろう。
だけど俺は、今回の実験に懸けていた。
これで最後だと思っていた。
どうか明日の検査の結果で、マウスの腫瘍に奇跡が起きていてくれ」
俺は、そう願わずにはいられなかった。
そうこうしている内に、最後の締めにと注文しておいたお茶漬けも各々に行き渡った。
それを皆んな黙々と美味しそうに掻き込んでゆき、午後8時過ぎに本日の慰労会は終了したのであった。

そして翌日の朝9時になり、7名全員がミーティングルームにリフレッシュした状態で集合した。
その後、昨日動物実験に使用した2匹のマウスたちのいる飼育室へと向かい、そして再会をした。
すると昨日よりも格段に血色が良くなっており、順調に回復してきているという印象を受けたのであった。
しかしまだ2匹とも横たわったまま眠り続けていたので、そのまま掬い上げ、ケージに移し替えてから別棟にある検査ルームへと連れて行った。
そこで血液による腫瘍マーカー値の測定と、CT画像診断用の撮影をしてもらう事になった。
その後、昼休みを挟み、モニターの置いてあるミーティングルームへと全員が集合した。
そして先ほどの検査結果の検証をする事となったのである。

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