庚申御遊の宴【第一話】
文字数 833文字
「日は香炉 を照らし紫煙 生 ず
遥かに看 る瀑布 の前川 に挂 くるを
飛流直下三千尺
疑 ふらくは是れ銀河の九天 より落つるかと」
『望廬山瀑布』 李白
**********************
光の束が見える。
暑苦しい夏の夜。
空には雲ひとつなく、星が瞬く。
僕の背後にある大きな滝から、その光は現れた。
発光するバスケットボールくらいの大きさの球が、三つ空中に浮かんでいる。
僕のこめかみを汗が伝う。
僕はとっさに、
「竜燈 だ……」
と、呟いた。
竜燈、というのがなにを指すのか、僕にはわからなかったが、そう呟いた。
その三つの光の球、……おそらくは竜燈が指すものであろうそれは、僕の頭上でぐるぐるまわる。
まわればまわるほど、その数を分裂しながら増やしていく。
分裂した球は、オリジナルの大きさに一瞬で成長する。
ここは丘の上だった。
丘の上の古刹。
寺だ。密教寺院の建物が、滝の横に建てられている。
寺にあかりはともっていない。
光の球はぐるぐるまわったかと思うと、50個ほど集まり、それは束になり、ここから見える、海の方へと、光の尾を引いて飛んでいく。
飛んでいく束になったその光は、確かに〈竜〉の形にほかならなかった。
丘の上の光の束は。
そこから、飛翔して、海へ。
竜燈は、大きな一個の光の球になり、光は海辺で花火のように打ち上がる。
腹にも響く轟音が鳴った。
その打ち上げ花火の炸裂音は、竜の雄叫びと言うにふさわしかった。
これは。
これはまるで。
山祇 と龍神のコラボレーションによってつくられたかのようじゃないか!
僕にはそう思えた。
そして、意識はそこで絶える……。
……………………。
…………。
遥かに
『望廬山瀑布』 李白
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光の束が見える。
暑苦しい夏の夜。
空には雲ひとつなく、星が瞬く。
僕の背後にある大きな滝から、その光は現れた。
発光するバスケットボールくらいの大きさの球が、三つ空中に浮かんでいる。
僕のこめかみを汗が伝う。
僕はとっさに、
「
と、呟いた。
竜燈、というのがなにを指すのか、僕にはわからなかったが、そう呟いた。
その三つの光の球、……おそらくは竜燈が指すものであろうそれは、僕の頭上でぐるぐるまわる。
まわればまわるほど、その数を分裂しながら増やしていく。
分裂した球は、オリジナルの大きさに一瞬で成長する。
ここは丘の上だった。
丘の上の古刹。
寺だ。密教寺院の建物が、滝の横に建てられている。
寺にあかりはともっていない。
光の球はぐるぐるまわったかと思うと、50個ほど集まり、それは束になり、ここから見える、海の方へと、光の尾を引いて飛んでいく。
飛んでいく束になったその光は、確かに〈竜〉の形にほかならなかった。
丘の上の光の束は。
そこから、飛翔して、海へ。
竜燈は、大きな一個の光の球になり、光は海辺で花火のように打ち上がる。
腹にも響く轟音が鳴った。
その打ち上げ花火の炸裂音は、竜の雄叫びと言うにふさわしかった。
これは。
これはまるで。
僕にはそう思えた。
そして、意識はそこで絶える……。
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