第45話 真相
文字数 708文字
愛おしげに妹の姿を見つめながら、ジュリオは淡々とした口調で告げた。
「明け方、息を引き取った。……これでもうエレナを守るために僕が生きる必要もなくなった……」
リシャールと梨華は息を呑んでエレナを凝視した。静かに横たわる少女は眠っているようにしか見えない。
ジュリオはリシャールにまっすぐ視線を当て、
「真相を知りに来たんだろう? あの夜、君に眠り薬を飲ませ、モーリス医師の遺体のある部屋まで運んだのは──僕だ」
リシャールは鈍器で頭を殴られたような気がした。何かの間違いだ、と否定しつつ、最も恐れていた事態だった。
かすれた声が喉からもれる。
「なぜ、そんなことを……」
「クリスティナ王妃に頼まれたのさ。エレナの莫大な治療費と引き換えに」
「どうして相談してくなかったんだ !? エレナの治療費ならわたしにだって……」
「つまらない意地さ。君には頼りたくなかったんだ」
そこで一度言葉を切り、妹の髪をそっと撫でてやる。
「知ってたかい? エレナは君が好きだった。だが相手は王族、片想いでかまわないといつも言っていた。病弱で満足に外出もできなかったから、僕がする君の話を楽しそうに聞いていたよ」
無言でたたずむリシャールの脳裏に、三人で花飾りを作って遊んだ記憶が鮮やかに蘇った。
あれはいつの頃だったか。リシャールからは花冠、ジュリオからは首飾り。二人から花を贈られたエレナは顔いっぱいに嬉し気な笑みを浮かべ、彼女自身が花のようだった。
「なのに、君は僕に打ち明けてくれたね。異国の娘を好きになってしまったと。こんな気持ちは初めてだと。僕がどんな思いで聞いていたか、わかるかい? その時、王妃さまに協力しようと──僕は決意した」
「明け方、息を引き取った。……これでもうエレナを守るために僕が生きる必要もなくなった……」
リシャールと梨華は息を呑んでエレナを凝視した。静かに横たわる少女は眠っているようにしか見えない。
ジュリオはリシャールにまっすぐ視線を当て、
「真相を知りに来たんだろう? あの夜、君に眠り薬を飲ませ、モーリス医師の遺体のある部屋まで運んだのは──僕だ」
リシャールは鈍器で頭を殴られたような気がした。何かの間違いだ、と否定しつつ、最も恐れていた事態だった。
かすれた声が喉からもれる。
「なぜ、そんなことを……」
「クリスティナ王妃に頼まれたのさ。エレナの莫大な治療費と引き換えに」
「どうして相談してくなかったんだ !? エレナの治療費ならわたしにだって……」
「つまらない意地さ。君には頼りたくなかったんだ」
そこで一度言葉を切り、妹の髪をそっと撫でてやる。
「知ってたかい? エレナは君が好きだった。だが相手は王族、片想いでかまわないといつも言っていた。病弱で満足に外出もできなかったから、僕がする君の話を楽しそうに聞いていたよ」
無言でたたずむリシャールの脳裏に、三人で花飾りを作って遊んだ記憶が鮮やかに蘇った。
あれはいつの頃だったか。リシャールからは花冠、ジュリオからは首飾り。二人から花を贈られたエレナは顔いっぱいに嬉し気な笑みを浮かべ、彼女自身が花のようだった。
「なのに、君は僕に打ち明けてくれたね。異国の娘を好きになってしまったと。こんな気持ちは初めてだと。僕がどんな思いで聞いていたか、わかるかい? その時、王妃さまに協力しようと──僕は決意した」