その17 ダメパパの子どもたち
文字数 787文字
それで困って、考えて、『ウエストサイド物語』を思い出したのね。トニーにお兄さんを殺されたときのマリア。大泣きして、トニーの胸をばんばん叩くんだけど、でもトニーのこと嫌いにはなれない。そもそもジュリエットがそう。従兄弟を殺されて泣くけど、ロミオを憎めない。
同じかたちで引き裂かれたときに、オフィーリアも、ハムレットを嫌いにはなれないだろうなと。ついていくかもしれないなと、狂わなかったら。
同じかたちで引き裂かれたときに、オフィーリアも、ハムレットを嫌いにはなれないだろうなと。ついていくかもしれないなと、狂わなかったら。
納得しない読者もいるかもしれない。だけど私が思い出したのは、うちの弟が小学生のとき、いちばんの仲良しの男の子とけんかになっちゃったことがあって、親友君が何か投げたら運悪く弟の頭に当たって、弟、頭切っちゃってそのまま病院へ連れていかれて何針も縫ったのね。私はあとで母から聞いたんだけど。
それでね、母が言うには、縫ったあと病院のソファで、弟がぽろぽろ泣き出したんだって。「どうしたの、痛むの?」って訊いたら、「あいつ(親友君)がおれにこんなケガをさせちゃって、どんな気持ちでいるかと思うとかわいそうだ」って。