第3話

文字数 747文字

「コンピュータソフトに勝ったら100万円」お金よりも価値があったこと

 ニコニコ動画のイベントで「コンピュータソフトに勝ったら100万円」という企画があった。浜松から東京まで出かけた。将棋だけを映像にすると極めて地味な番組になってしまう。だから、あおりとか秒読み(ときよみ)ちゃんというかわいい女の子に秒読みなどをさせる。私の番になった時に秒読みちゃんが私にインタビューした。
「どこからいらっしゃいましたか?」
「はるばる、韓国からやって来ました、というのはうそで浜松からです」
秒読みちゃんが爆笑。しかし
「おい、音声入ってないよ」
スタッフが怒った。秒読みちゃんはマイクをつけた。このやり取りは番組を観ていた方には分からなかったと思うが、秒読みちゃんを笑わせて視聴者を喜ばせるという私の狙いはうまくいった。今、真相は明かされた。なぜ、笑ったのか? 実はこれが実話なのだ。
 私には将棋の思考法をまとめて言語化した「将棋思考法」がある。これの成果が発揮されるのだろうか? 私はヘッドホンをしてノートパソコンでの対局に向かった。私はアマ強豪の立石さんの戦法「立石流」で立ち向かった。20分切れ負けなのに突然数分コンピュータソフトが考え始めた。そして、角(かく)が端に回り、中央を狙った。その角は方向転換を繰り返していった。見たこともない手で何を考えているのか見当もつかなかった。が、数手後に恐ろしい狙いがあったのだ。後に「くるくる角」と呼ばれる戦法はプロ棋士も採用している。私はコンピュータソフトに圧倒された。その時の手順は、順番の流れも配置もとても美しく合理的で、私は世の中にこんなものがあるのかと驚き「こんなものをつくってみたい」と衝撃を受けた。
 この人生観を変えた体験は100万円以上の価値があった。
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