第14話看護師 文子

文字数 989文字

午後一時半、少しやつれた顔の若い女性が入って来た。
飛鳥が、「文子さん、こちらに」と促すと、フラフラと歩いて、飛鳥の前に座る。

そして、ため息。
「うーーーメチャ疲れた」
「飛鳥君、手を握って」

飛鳥は、文子の手を握る。
「夜勤明けですね、お疲れ様」
ついでに、手のひらマッサージまでするので、文子は「気持ちいい・・・」と、眠たげな声。

飛鳥の指は、やさしく文子の手を揉みほぐす。
「看護師さんも身体は使うし、神経も使う」

そこまで言って、手を一旦離して、甘くしたミルクを文子の前に。
文子は、そのミルクを、ゴクゴクと飲み干してしまう。

飛鳥はやさしい顔。
「上の階に、簡単な宿泊施設がありますよ、仮眠します?」

文子は首を横に振る。
「飛鳥君といたいの、だから行かない」
そして、飛鳥と指を絡めてしまう。

「子供の頃は、お姫様ごっこしたよね」
「私がお姫様で、飛鳥君が王子様」
「飛鳥君が、花束をくれて、うれしかった」

飛鳥は素っ気ない。
「そんなことありました?」

文子は、指の力を強くするけれど、飛鳥は泣きそうな顔。
「あの・・・痛いです、それ」
文子は力を緩めない。
「意地悪言うから、王子様にお仕置きなの」

キッチンから香苗が顔を出した。
「はい、文子姫、もっとお仕置きしていいよ」
と言いながら、湯気が立つ緑色のリゾットを文子の前に置く。

緑色のリゾットからの香りに惹かれたのか、文子は、あっさりと飛鳥から指を離す。
「へえ・・・バジルとベーコン・・・細かなチーズのリゾット?」
「いい香り・・・ざすが・・・香苗さん」
と、勢いよく食べ始める。

飛鳥に余裕が戻った。
「おかわりもありますので、遠慮せず」
と言いながら、甘めのカフェラテを置く。

文子は、それも美味しそうに飲む。
「我がままな医者と患者に囲まれてね」
「もう、今日は私も切れる寸前で」

飛鳥は黙って聞いている。

文子
「飛鳥君が患者なら、病室に入りびたるかも」
飛鳥
「残念ながら、病気も怪我もありません」
文子
「飛鳥君、子供の頃は、すぐに風邪を引いた」
飛鳥
「いろいろとご迷惑を」
文子
「夏に一緒にプールに行ったよね」
飛鳥
「文子さん、溺れかけた」
文子
「飛鳥君に抱きかかえられて・・・お姫様だった」
飛鳥
「文子さん、可愛いビキニだったけれど」

文子は顔が赤くなる。

飛鳥
「おへその近くに、ホクロがあった」
文子は、飛鳥とまた、指を絡めてしまう。
「見たい?」

美鈴は、少し離れて、ヤキモキ顔になっている。
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