第12話 榛名春奈、倉庫内作業中⑤
文字数 1,480文字
…本来、いくら変幻自在に動く魔法の手といえど、榛名春奈の反射神経を持ってすれば、余裕で対応出来るはずだった。
しかし、問題は彼女の目の前に1本だけ残った魔法の手だった…
下半身に群がる魔法の手×3を先程のように手刀で打ち落とそうとすると、残りの1本がブラを狙ってくるのだ。
その為、彼女はロクに抵抗も出来ずにスカート諸々を剥ぎ取られ、下着姿を晒す結果になっていた。
突如として、自分を襲った不可解な現象に抗議の声を上げる春奈。気付けば剥ぎ取りスキルによって、彼女がいま身に付けているのは、ブラジャーとショーツの2枚だけとなっていた。
春奈は自分の姿を見て、気色ばんだ声を上げている。その時、どうにかして榛名春奈を脱がそうとしていた当真が叫ぶ。
彼はこの状況をチャンスと見て、再び彼女の両腕を掴んだのだ。
春奈の声に若干の苛立ちが混じる。のんびりとした性格の榛名春奈だが、自身がされている行為に対して、怒りを覚え始めていた。
当真の叫びが室内に響き渡ると、その声に応えるようにAIハルナが春奈に向けて宣言する。
『ブラジャーを剥ぎ取ります』
今の榛名春奈に残っているのは、下着の上下だけ…人として、とても無防備に近い状態だった。ここから更にブラやショーツを剥ぎ取られれば、この場から身動きが出来なくなってしまう。
『魔法の手×4による総攻撃が選択されました』
それに、こんなところでハダカにでもされようものなら、大人の女性としての沽券にかかわる。
春奈はこれ以上は脱がされまいと、両腕で乳房を抱え込んでブラのガードを強化する。
そう言って彼女は啖呵を切る。しかし、AIハルナという、榛名春奈自身を模した存在がそれを許さなかった。
『…攻撃開始!』
AIハルナからの号令で、4本ある魔法の手の全てが正面から春奈を攻撃しようとする。だが、彼女も先程までのように、されるがままでいるつもりは無かった。
そう言うと、春奈は左足を半歩前へ踏み出し体勢を半身に取り、左手を肩の高さまで持ち上げて、迎撃の構えを見せる。
『…対象からの反撃の意思を確認…パターンを変更し時間差攻撃を選択、榛名春奈の戦術を解析します』
春奈の構えに反応したAIハルナは、すぐさま攻撃方法を調整する。そして4本の魔法の手の内、2本が上半身へ、残り2本が下半身へと伸びる。
鋭く呼気を吐き出すと、春奈は先に下方向へ伸びてきた魔法の手×2を叩き落とし、返す刀で上方向へと迫る2本の魔法の手を跳ね上げ振り払う。
威を発して言い放つ春奈。彼女はまるで、その程度の手数では無駄だ、と言わんばかりの表情だ。しかし、すでに榛名春奈の実力はAIハルナによって見切られていた。
『解析完了しました。対象の反射速度を考慮し、幻惑的な3方位同時攻撃を選択します』
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