第12話 榛名春奈、倉庫内作業中⑤

文字数 1,480文字

…本来、いくら変幻自在(トリッキー)に動く魔法の手(マジックハンド)といえど、榛名春奈の反射神経を持ってすれば、余裕で対応出来るはずだった。

「くっ…このっ!」

しかし、問題は彼女の目の前に1本だけ残った魔法の手(マジックハンド)だった…

下半身に群がる魔法の手(マジックハンド)×3を先程のように手刀で打ち落とそうとすると、残りの1本がブラを狙ってくるのだ。

「どうしてブラを取ろうとするの!?」

その為、彼女はロクに抵抗も出来ずにスカート諸々を剥ぎ取られ、下着姿を晒す結果(ハメ)になっていた。

「もうっ! 返しなさい!」

突如として、自分を襲った不可解な現象に抗議の声を上げる春奈。気付けば剥ぎ取りスキルによって、彼女がいま身に付けているのは、ブラジャーとショーツの2枚だけとなっていた。

「えっ…何よっ!? これっ!!?」

春奈は自分の姿を見て、気色ばんだ声を上げている。その時、どうにかして榛名春奈を脱がそうとしていた当真が叫ぶ。

「ええいっ! もう一度!」

彼はこの状況をチャンスと見て、再び彼女の両腕を掴んだのだ。

「いい加減に…!」

春奈の声に若干の苛立ちが混じる。のんびりとした性格の榛名春奈だが、自身がされている行為に対して、怒りを覚え始めていた。

□□□□

「いっけぇー!! 次はおっぱいだ!!!」

当真の叫びが室内に響き渡ると、その声に応えるようにAIハルナが春奈に向けて宣言する。


『ブラジャーを剥ぎ取ります』

「!? なんですって!?」

今の榛名春奈に残っているのは、下着の上下(ブラジャーとショーツ)だけ…人として、とても無防備に近い状態だった。ここから更にブラやショーツを剥ぎ取られれば、この場から身動きが出来なくなってしまう。


魔法の手(マジックハンド)×4による総攻撃が選択されました』


それに、こんなところでハダカにでもされようものなら、大人の女性としての沽券にかかわる。

「冗談じゃないわ!」

春奈はこれ以上は脱がされまいと、両腕で乳房を抱え込んでブラのガードを強化する。

「なんだか分からないけど、させるものか…!」

そう言って彼女は啖呵を切る。しかし、AIハルナという、榛名春奈自身を模した存在がそれを許さなかった。


『…攻撃開始!』


AIハルナからの号令で、4本ある魔法の手(マジックハンド)の全てが正面から春奈を攻撃しようとする。だが、彼女も先程までのように、されるがままでいるつもりは無かった。

「ふん! もう手加減しないんだからっ!!」

そう言うと、春奈は左足を半歩前へ踏み出し体勢(カラダ)を半身に取り、左手を肩の高さまで持ち上げて、迎撃の構えを見せる。


『…対象からの反撃の意思(カウンターアタック)を確認…パターンを変更し時間差攻撃を選択、榛名春奈の戦術を解析します』


春奈の構え(うごき)に反応したAIハルナは、すぐさま攻撃方法を調整する。そして4本の魔法の手(マジックハンド)の内、2本が上半身へ、残り2本が下半身へと伸びる。

「ひゅっ!」

鋭く呼気を吐き出すと、春奈は先に下方向(ショーツ)へ伸びてきた魔法の手(マジックハンド)×2を叩き落とし、返す刀で上方向(ブラジャー)へと迫る2本の魔法の手(マジックハンド)を跳ね上げ振り払う。

「どうだ!」

威を発して言い放つ春奈。彼女はまるで、その程度の手数(こうげき)では無駄だ、と言わんばかりの表情だ。しかし、すでに榛名春奈の実力(じゃくてん)はAIハルナによって見切られていた。


『解析完了しました。対象の反射速度を考慮し、幻惑的な3方位同時攻撃(デルタアタック)を選択します』

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登場人物紹介

【水森 当真《みずもり とうま》】


本編の主人公 (12)。特に目立った長所もなく、ただ単に溢れんばかりの若さを持っているだけのスケベ小僧。クラスでも埋没気味《モブ》な生徒の一人。

【榛名 春奈《はるな はるな》】


メインヒロイン(22)。今年の春に、私立水上学園中等部に赴任した新任の女性教員。そして、周囲から爆乳と称される程の大きな乳房の持ち主。


活発で人付き合いも良く、身体を動かす事が大好きである。その一方、漫画・小説・アニメ・ゲーム等の在宅趣味も嗜む。娯楽消費者として、インもアウトもバランス良くこなす性格をしている。


また、幼少より道場に通い詰めて、武芸を学んでいた。その影響で、非常時には物事をシビアに捉えるクセがあり、常人より一歩も二歩も見切りが早い。


突如現れた、モンスター達を相手に立ち回り、彼女は強力な職業《ジョブ》とスキルを取得する。その力を使い、生き残った生徒達を守ろうと奮戦する。

【絵堂沙織《えどうさおり》】


4月生まれの23才。私立水上学園中等部に勤める新任の女性教員。榛名春奈とは同期。185センチという見上げる程の高身長を誇る女性。


異世界転移前は、長身巨乳のお姉さんとして男子生徒から人気を博していた。それゆえに、彼女は当真の対戦相手として候補に上がっている…が、それはまだ先の話。


鎧袖一触を好み、テクニカルな春奈とは真逆の戦闘スタイルを得意としている。その恵まれた体格でもって、鬼に金棒という大型武器を操り、敵を一撃で粉砕する生粋のパワーファイター。

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