第25話次の実験の準備に取り掛かる事になった

文字数 1,424文字

それから数日が経った日のことであった。
急遽、雨宮リーダーからの召集がかかり、不思議なマリモから抽出された3種類の新型化合物を使用しての、今後に向けた実験について議論をする事となった。
そこで当初からの予定であった免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボを加えての相乗効果を確認する実験と、もう一つの実験として予定されていた生薬の一種である冬虫夏草や朝鮮人参を加えての実験について、色々な意見を戦わせることとなった。
そこで先ず、冷静沈着な橋本君からの発言があった。
「私としましては今回の実験に於いて、3種の実験とも失敗に終わったことを踏まえまして、次の実験には全く違う発想が必要だと思うのです。
そこで斬新なアイデアが出て来るまでの間、各々で考える一定の期間を設けてみては如何でしょうか?」
すると周りからは
「それもそうだな」
という同調する声も聞こえてきた。
しかし井上君からは別の意見も出てきた。
「私は違います。
当初の予定通りオプジーボを加えての検証をすべきだと思います。
それともう一つ予定されていた生薬と混合させてみるという方の実験ですけれども、私としましては冬虫夏草と朝鮮人参だけを使用するのではなく、それらも含めて三大漢方と言われている鹿茸とをブレンドしたものを新型化合物と混ぜ合わせて、より高い効果を望むべきだと思っております」
するとその意見に同調する者も何名か現れてきたのであった。
そこで雨宮リーダーの先導のもと、多数決をとる事にした。
このまま当初の予定通り、オプジーボや生薬に新型の化合物を混合させる実験を継続するのか?
それとも現在の実験は一度中止して、別の実験法を時間をかけて模索するのか?
その二者択一の選択は挙手によって判断が下されることとなった。
そしてリーダーの掛け声により、各々が自分の考え方に責任を持ち、挙手をしていった。
その結果、4対3の僅差ではあったのだが、このまま実験の継続が認められた形となったのである。
しかしその結果に俺の心の中では、どこか煮え切らないものを感じていた。
俺は今回の実験での芳しくなかった結果を踏まえて、実験の一時停止の方を選んだのだが、多数決により押し切られてしまった。
俺自身もオプジーボや生薬との混合実験に対して全く期待していない訳ではないのだが、不思議なマリモの残量に対する限られた実験回数に関しては、大きな危機感を持っていたのである。
現に今回終了した実験に於いて、不思議なマリモ1個分の新型化合物は全て使い切ってしまった。
そこでこれから続けて行く実験には、空調ルームに保管してあるもう1つの不思議なマリモを粉砕して、新たに成分を抽出しなくてはならないのだ。
しかし、その1個から抽出する貴重な成分である新型化合物の量も限られてはいる。
そこでもし、次回の実験でも良い結果が得られなかった時には、窮地に追い込まれてしまう事になってくる。
俺はどうしても八ヶ岳の山中に、1つだけ残してきた不思議なマリモを、再び取りに行くという事だけは阻止したいと思っていた。
その後、雨宮リーダーから今後の実験日程についての説明があり、年末年始の休みが明けた1月の8日から早速、新たな作業に取り掛かるという事が発表された。
そして一人ずつに雨宮リーダーからの労いの言葉を掛けてもらい散会となった。
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