(8)奇妙なクエスト(後編)

文字数 14,369文字

公都到着から四日目<夜>
公都キルグスタン
 北街区――


 鬼灯達が見張りを務めてからの数日で幾つか分かったことがある。
 ひとつは見張りを終えて休息に入る真夜中過ぎに、建物内をうろつく(・・・・・・・・)人の気配(・・・・)がはっきり感じられるということ。
 家人か他の者かは分からぬが、老婦人以外の複数の気配が建物を出入りしているのは間違いないようで、残念なことに何をしているのかまでは分かっていない。
 それというのも老婦人に出された条件が二人の行動を効果的に抑制しているためである。
 これが外から鍵まで掛けられて寝泊まりする部屋に閉じ込められているのなら、“是が非でも暴いてやろう”と二人の敵愾心あるいは好奇心を嫌が応にも煽ってしまうのであろうが、いつでも室外どころか戸外へ抜け出せる環境が、逆に失格(・・)を誘っている(・・・・・・)ようにも感じられ、扉を開けるのを躊躇わせてしまうのである。
 巧みと云えば巧み――真実はもっと単純な話しであったとしても、依頼主の思惑通り雇われ者達が大人しくしている事実に変わりはない。
 ただ一言付け加えるならば、鬼灯達が扉を開けぬのは“途中退場”という不名誉を選ぶ道理が二人になかっただけにすぎないということだ。
 そしていまひとつは、見張り番の際、鬼灯が試しに持ち場を離れると、行く手を遮るように(・・・・・・・・・)、どこからともなく人影が現れるということ。
 これもはじめの印象とは裏腹に、実際には人っ子一人ない無人の区画というわけでもなく、最低でも“見張り番を見張る者”が配置されていたのだと、この一事で示されたことになる。

「要するに、ここには私たち以外にも何かの活動をしている者達がいることになります――恐らく私たちのような“一時的な雇われ者”と違う“正規の関係者”なのでしょうが」
(それがし)たちだけのけもの(・・・・)扱いされてる感じがして癪に障るね」
「所詮は“部外者”ですから。実際、無心に役目を果たしていたら、何日経ってもここで何が行われているかの見当もつかなかったはずです」

 自分達を除けば、と暗に己の明晰さを誇るのへ、「それにしても夜が更けてからが本番て……何の仕事をしてるんだろう」と扇間が思案げに呟けば、鬼灯があっさりと答えを出す。

「おそらく“囚人の搬送”など人目に触れたくない作業を真夜中にやっているだけでしょう」
「それなら、そういう重要任務にこそ、某たちを使えばいいのに」

 そう口にしながらも扇間の顔にさほど不満は見られない。
 はじめはとんでもない任務をやらされたと思っていたが、“真夜中が本番”となれば話し全く別になる――つまり鬼灯達はあくまで脇役も脇役で、まさに肩書きが【見習い】である以上、大して期待されてないであろうことと、そもそも“本当の用心棒”を別に雇っていても不思議じゃないということだ。そうなれば――

「まあ、無理に深入りする必要もないでしょう」
「無難な裏方でよかった、て?」

 『探索者』を目指すのはあくまで都に溶け込むための隠れ蓑にすぎぬと思えば、端役として扱ってもらった方が都合がいいに決まっている。その鬼灯のあっさりした態度に扇間は軽く首を振る。

「ここでただ、まんじりともせず(・・・・・・・・)、刻の流れに身を任せているのはたまらないよ」
「確かに。私も“何もしない”という苦行をはじめて知りました」

 そう鬼灯が相づちを打ったところで、聞き覚えのある風切り音と共に背後で物音がする。

「「――っ」」

 二人が素早く振り向いて目にしたのは、建物の入口に繋がる石段の影にて地に突き立つ一本の“矢”だ。
 昨日の曇り空と違って今夜は星明かりが十分にあり、夜目が利く二人ならば見逃すことなどありはしない。 
 それ(・・)が鬼灯達を直接狙わなかったことと人目に付かぬ石段の影をあえて選んだ理由を鬼灯達はすぐに知ることになる。

「……せめて木桶のない反対側にしてくれればいいのに」

 鼻をつく刺激臭に顔をしかめながら、扇間が矢尻の根元に巻き付いているもの(・・)に気付いて広げてみれば、想像したとおり細かい字が書き連ねられた(ふみ)であった。

「秋水殿ですね?」
「……みたいだね」

 あまり驚いた様子がないのは、昨日からすでに接触を図っていたからであり、今後の連絡手段もその時に取り決めしていたためでもある。
 ただ最初のやりとりが本当に依頼主側に覚られていないかどうかまでは、正直なところ判然としない。泳がされている(・・・・・・・)という見方もあるからだが、それを言い出すと切りが無いため、その件について気にするのはやめている。

「へえ……この“倉”はどうやら“牢獄”としての役目のほかに秘密があるみたいだね」
「秘密?」
「そう。さすがは秋水殿……そのヘンもきっちり見極めたらしいね」

 矢文にあるのは短文だ。
 必要最低限の単語を羅列し、要点のみを確実に相手に知らしめる。記述されていた単語は、調べ上げねば分からぬ内容を示しており、わずかな日数でそこまで把握した秋水達の力量に扇間は思わず唸りを上げる。

「……これで彼女の話(・・・・)にも信憑性が出てきましたね」

 矢文の内容を知った鬼灯の口元がうっすらと綻んだ。それは今日の朝方、二人が与えられた個室でまどろんでいたときに起きた出来事を思い起こしてのもの。

 ――いつも見られているようなんだ。

 言葉尻に冷たい印象を受けた槍の女戦士のものとは思えぬ動揺――いや、明らかに“不安”を含んだ声が今でもはっきりと耳の奥に残っている。
 情報があまりにも足りないため、そして老婦人が迎えにきて話しが途切れたこともあり、今の今まで忘れていたのだが。

「……もしかしたら、彼女も同じ情報を持っていたのかもしれませんね」

 物憂げな鬼灯の瞳はすでに今朝の出来事に舞い戻っているようであった。

         *****

刻を少し遡る
 個室の鬼灯達――


「――聞こえましたか?」
隣から(・・・)だね」

 はじめから目覚めていたかのように、応えた扇間が静かにベッドから下り立ち、その一点へと身を寄せる。

「聞こえるか――?」
「――はっきりと」
「!」

 声を掛けておきながら、すぐに応答あるとは思ってもみなかったのだろう。明らかな驚愕が壁向こう(・・・・)から伝わってきて、扇間がかすかに苦笑を漏らす。
 声は床に近い壁板の下方に小指を通せるくらいの節穴があり、そこから洩れてくるのを二人はすぐに気付いていた。

こういうの(・・・・・)は契約違反と云ってなかった?」
「それは謝る……だが」

 痛いところを扇間に突かれて、声の主――女であると分かれば槍の戦士に違いない――はバツが悪そうな口調で昨日の一件(・・・・・)について素直に陳謝する。だが金貨の報酬を無上のものとした彼女が、それを手放すことになろうとも、こうして接触を図ってきた事実こそが肝要と気付かぬ二人ではない。

「何があったんだい?」
「手短に伝える――共闘したい」
「はあ?」

 理由よりも先に用件を口にする彼女に、何を切迫しているのかと扇間が思わず傍らの相棒と視線を交わし合う。
 それにしても、見張り番の任務からは考えにくい突拍子もない話しが出てきたものだ。

「共闘ね……そうはいっても何のため? それにどうやって」
「互いに“何か”があったとき、助け合えればそれでいい。もちろん、“悪さ”に付き合えというわけじゃない。あくまで理不尽な目に遭わされるとき、互いに命を守り合えれば(・・・・・・・・)いいだけだ――」

 一体何を彼女は想定しているのか?
 しかもその言い方からすれば“依頼主からの理不尽”ということか?
 確かにこの依頼がまともなもの(・・・・・・)とは思えない。
 ただだからといって、すぐに命に関わるような話しに――あまりに深刻すぎるその内容に、彼女の話を鵜呑みにするのもまた危険すぎると云わざるを得ない。

「もう一度聞きます――何があったんです?」

 再び確認したのは鬼灯だ。はぐらかされては困ると強い意志を語気に込めて彼女に突きつける。

「……気がする」
「何です?」

 慎重すぎるのか、彼女の低い声が聞き取れず鬼灯が珍しくわずかな苛立ちすらみせて問い返す。

 コンコン――

「「!」」
「――ちっ」

 柄にもなく舌打ちしたのは鬼灯。だがそれだけ彼が焦っていることの表れでもあった。
 現に叩かれた扉は彼女の個室のものであり、間の悪いことに老婦人が“本日の務め”に就かせるためお迎えに来たのは間違いなく、しかしながら、肝心の話しはまだ何も聞けていない状況だ。

「教えてださいっ。一体何があったのかを!」
「視線だ――」

 コンコン――二度目は強めに叩かれる。軽い苛立ちさえ感じさせる音に、あまり待たせてしまっては老婦人に怪しまれてしまうだろう。もはや一刻の猶予もない。

「――今行く。支度くらいさせてくれ!」

 壁向こうで彼女が声を荒げた。それでも作った時間はごくわずかだ。
 成り行きを見守る扇間がそわそわして鬼灯が再度ささやき怒鳴る(・・・・・・・)という器用な真似で問い重ねる。

「視線とは、誰の視線です?」
いつも見られて(・・・・・・・)いるようなんだ(・・・・・・・)――すまん、行くぞ。共闘の件は頼む」
「――っ」

 彼女が壁際から離れたのが感じられた。
 視線?
 一体何を云っている?
 二人に何とも言えぬ焦燥だけを残して彼女は部屋から出ていってしまった。

「……“見張りを見張る者”のことだよね?」
「素直に捉えればそうなりますが」

 鬼灯が扇間に同意しかねるのは、拭えぬ違和感があるからだろう。だから逆に問いかける。

「ただその程度のことで“身の危険”を感じるものですか?」
「……」
「それに共闘という提案自体、今の私たちの状況で成立するものでしょうか……いやつまりですね」

 鬼灯は考えを巡らせながら言い直す。

「別々の場所で見張りに立ち、個別に寝室で過ごす私たちのどこに互いの危険な状況を察して上げられ(・・・・・・・)るのか(・・・)、ということです」
「ああ、確かに」

 ようやく鬼灯の意図を呑み込めた扇間が大きく頷き理解を示す。あまりに接点がなさすぎて、助け合う機会さえ得られないというのは当然すぎる指摘であり、下手をすれば、相手の危地さえ気付かぬ事もあるというのも頷ける。

「叫ぶ、とか?」
「泣き、喚き、笑う……まあ、それもひとつの手法でしょう」

 いや最後のどうなんだよ、と扇間が小声で指摘するのを鬼灯は無視して話しを進める。

「彼女が“どういう状況を想定していたか”というのも答えを導く手掛かりにはなるでしょうね」
「え、じゃあもう――」
「わかりません」

 実にあっさりと否定した鬼灯はそれでも嬉しげに「ひとつはっきりしたことが――」そう扇間に告げる。

「今後の展開に“希望”が見えてきましたね」

 いや何の希望だよ、と扇間は小声で指摘したのだが、やはり鬼灯に無視されるのであった。

         *****

再び四日目の夜
 見張りに立つ鬼灯達――


 “倉の秘密”と“槍の戦士が抱いた不安”とを繋げれば、相棒に見えずとも鬼灯にだけは見えた筋道があった。

「これは何かが起きずにはいられない状況ですね」「……」

 胡散臭げな扇間の視線を鬼灯は柔らかな笑みで受け流す。信じる信じないに関わらず事実は変わりないと諭す託宣者のごとく。

「まあ、矢文でも“襲撃者は倒せ”というのだから、何も問題はないでしょう」
「けど理由がね……“『クレイトン一家』が敵”と云われても……それにどうして襲撃者の正体が分かったんだろう」
「その辺は秋水殿を信じるしかないでしょう」

 色々と疑問は尽きないが、矢文での連絡である以上限界はある。今は鬼灯の云うとおり、秋水を信じて行動するしかないのだろう。
 前向きに捉えるならば、“一度は任務から遠ざかったと思った境遇が、実は本筋に絡んでいた”という好機にみて素直に喜べばいいのだろう。と――


 ――――っ
 !!
 ――!
 ! ――……


 物音を耳にしたのは気のせいか。
 だが連続する緊迫感が空気を伝わり、二人の肌に何かを感じ取らせたのは確かだ。
 それは二人にとって馴染みのある争いの気配(・・・・・)

「今のは――」
「建物の向こう側だ」

 応じる扇間が鬼灯と顔を見合わせる。
 目顔で交わしたのはずばり――“依頼を破談にするか否か”である。
 意図的にこの場を離れれば、任務失敗は免れないし、場合によっては状況の悪化も見込まれる。損得勘定で判断するなら選択の余地なく“動かない”が正解だ。それでも今朝の出来事が、二人に選択を迫るのだ。

「鬼灯さん――」
「行きましょう。我ら諏訪の侍に、女子(おなご)を見捨てる道理はありません」

 云うやいなや、二人は脱兎のごとく駆けだした。建物の端を目指し、早足をゆるめることなく角を曲がれば前方に映るのは斧を支えに仁王立ちする人影だ。

「! ――おい、何やってる?!」
「気付いたろ? 助けに行くんだよっ」

 驚く斧戦士に扇間が明快に告げれば、彼も傷だらけの顔を不器用に破顔させた。

「だったら俺も行くぜ」
「契約は?」
「しゃあねえだろ。どのみち気に入らねえ依頼だったんだ」

 報酬に拘るかと思ったが、案外人情味のある男らしい。豪快に笑い飛ばしながら、契約そっちのけで三人の男達が一丸となってさらに奥へと走ってゆく。
 ちなみに斧戦士が守っていたところには、建物の出入口はなく、高い位置に大きめの格子窓がひとつきりあるだけであった。

「へっ……やっぱり同じ建物のぐるりを見張らされてただけかい」
「だとするなら、彼女一人で出入口を守っていたことになりますね」

 もしかしたらそちらは大きな玄関があるのかもしれないが、何となく鬼灯達と同じ大きさの扉があるだけのような気がしてならない。
 ここまで走ってくる途中で争いの気配は収まってしまっている。二人の気のせいでなければ、某かの決着が付いたと考えるのが妥当だろう。ならば考えられるのは二択しかない。果たして――

「これは――」
「……誰もいねえな」

 鬼灯達がいた位置からはるばる建物の裏側まで走ってきて辿り着いたのは無人の地。そこにいるはずの槍の戦士の姿はどこにも見えず、三人は当惑して早足をゆるめ、ゆっくりと立ち止まっていた。

「どこに行ったんだ……?」
「ふむ……争ったような形跡はありますが」

 星明かりの下、顔を近づけ地面に残された跡をじっくりと眺める鬼灯。そこへ扇間が別のものに二人の視線を促す。

「扉が開いてる……」

 鬼灯達がいたところと同じ造りの出入口があり、その扉がわずかに開いているのを扇間が気付いたのだ。
 あらためて周囲を見ても人影はないし、物音も聞こえてこない。それは中に対しても同様であったが扉の変化だけは一目瞭然だ。

「……入った賊を追いかけたな」

 斧戦士の憶測に「それにしては静かだね」と扇間が疑問の声を上げる。

「けれども唯一の手掛かりなのは確かです」
「なら決まりだな」

 斧を振り上げ、戦士が勇ましく扉へ近づいてゆく。不自然なのは確かだが、ここまできて立ち尽くしているだけでは何も解決しないし、手遅れになっては元も子もない。
 危険を承知で飛び込んで、彼女の安否だけでも明らかにする必要があった。すでに契約違反もしている以上、気にするものは何もないのだ。

「俺はガルフだ」

 飛び込む前に戦士が名乗る。奇しくも背を預ける形になった以上、彼が何を望んでいるかは言うまでもない。

「某は扇間」
「鬼灯です」
「馴染みのねえネーミングだ。やはりこの辺の者じゃねえな……ま、よろしく頼むわ」

 異種間交流があるくらいだ、民族の違いなど屁でもないのだろう。
 手早く挨拶を済ませた斧戦士ガルフが扉に手を掛け、無造作に開け放つ。
 眉をひそめたくなるくらいに軋み音をたてた扉が朧気な星明かりを屋内へと誘う。
 さすがに飛び出してくる者もなく、光量の足りない暗がりの奥が大広間になっていることを辛うじて視認する。

「おい、得物は?」
「いらない」
「無手術か……そっちのあんたは?」
「刀です」
「無手にカタナね……想像もつかねえ組み合わせだな」

 困った顔で思案してガルフはすぐに意を決めたようだ。

「俺が先頭に立つ――いいな?」
「お好きに」

 ガルフの背にほどよい緊張感を感じ取れる。ずかずかと踏み込んでいきながら、それでいて不用心でもなく、軽く掌中で柄を回し滑らせ、斧刃の向きを回転させながら独自の拍子をとっていた。
 実に安心できる背中だ。
 いつぞや見せた自信は決して過信ではなかったようだ。

「……誰もいねえな」

 ガルフの小声がやけに大きく聞こえてしまう。屋内には正規に雇われた用心棒の類いがいるものと思っていたが間違っていたようだ。
 試しに大広間から右の廊下に入ってみたが人気はなく、一定間隔で並んだ扉の列が妙に不気味であった。
 扉は出入口と同じく金枠で補強された頑丈そうな木製扉で部屋の中を目にすることはできない。太い木材を横に滑らせる(かんぬき)式で施錠されているのを見るまでもなく、そこに囚人が囚われているのは間違いあるまい。

「ふん、やっぱりそういうことか」

 屋内の造りを目にして、ここがどういう役目を負っているかガルフも気付いたらしい。いや、彼の場合は依頼主が“労役商”であることを知っていたはずだから妥当な推測か。

「それにしても、ずいぶんと不用心じゃねえか……?」
「あるいは死体をうまく隠しているだけかもしれませんよ」
「だとすると、侵入者はどこにいる?」

 建物の端まで見通せる廊下に人影がないと見極めて、ガルフが少し会話に意識を向けてくる。ここに隠れるところがあるとすれば、それは牢獄の一室になってしまう。そんなところへ自ら入ったとでもいうのか?

「あそこ……他と違って錠前までついてる」

 扇間が指差すまでもなく他の二人も気がついていた。造りはまったく同じでありながら、一室だけ大振りの錠前が付けられたさも特別そうな扉が確かにある。

「開けられた様子はないですね」
「倒した警備を隠すくらいなら、このくらい用心しててもおかしくねえだろう」

 今さら何を躊躇うと、ガルフが斧を振り上げ錠前に向かって叩きつけた。
 廊下に響き渡る金属音に各部屋から物音や「何だ何だ?!」と囚人達のわめき声が聞こえてくる。どうやら寝た子を起こしてしまったようだが、承知の上での行動だ。

 ガギッ
 ゴギッ

 意外に丈夫な錠前も三撃目にはごとりと落ちた。

「うおっ……刃が欠けちまった」
「これだけの錠前を壊したのですから。むしろ凄い破壊力ですね」
「へっ。そりゃあ当然だろう」

 鬼灯に褒めそやされて機嫌を変えるガルフを横目に扇間が「よいせ」と極太の閂を外しにかかる。

「……なんだ、これは?」

 室内には牢獄として機能する最小限度の家財が一切無く、それどころか床石がすべて引き剥がされ、その下の土まで掘り起こされて無残な姿を晒していた。
 補修工事にしたってやりすぎな気がする。

「ずいぶんと深い穴だね……」
「こっちにランタンがあるぜ」

 入口からは死角になっていた部屋隅に棚が置かれており、そこに並べられた道具らしきものをガルフが発見する。
 用途と使い方を教えられ、三人がそれぞれにランタンを手にしたのはもちろん、さらに先へ進むためだ。
 見つけたロープに括ったランタンをすでに穴の奥へ降ろして底の様子は探り終えているし、穴に掛けられた梯子もふたつ並べてあって探索を続けるに支障はないとの判断もあった。
 何より鬼灯がもたらした情報が背中を押す。

「実はこの“倉”には“秘密”がありまして」
「“咎人”の件……じゃなさそうだな」

 さすがに気付くガルフに鬼灯は首肯する。

「依頼主はここで、貴族の“隠し財産”を捜しているらしいのです」
「え?」

 戦士のいかつい顔が間抜けた表情になるのを「わかる」といった風に鬼灯が受け止める。彼らも“悪事”に関する情報ならば、何となくそうかと受け入れられる流れがあったのだが、秋水からもたらされた情報には“隠し財産”の発掘という予想外の話しが記されてあり、今のガルフのように違う方向で驚いたのを思い出す。
 ただし、鬼灯達の認識にも間違っているところがある。それは矢文の主は秋水であったが、情報を掴んだのはトッドだということだ。

         *****

刻を少し遡る
公都キルグスタン
    東街区――


 広い室内の入口から最も離れた奥にある長椅子(ソファ)にトッドは居心地悪そうに対面の男と会談していた。
 無論、周りを囲む荒くれ者達が威圧的にガンを飛ばしてくるからでも、“数の力”を背景に余裕の態度で椅子にふんぞりかえっている対面の角刈り中年にビビっているわけでもない。
 だが相手はそう見ないだろう。

「それで、天下の『五翼』様が一体何だってこんな裏街へやって来たんだ? あのオバサン(・・・・・・)があんたの色目に叶ったとは、どうしても思えねえんだがね」

 その途端、ドッと周囲に下卑た笑いが溢れてトッドが肩をすくめる。

「云っただろ。別にお宅らの商売(・・・・・・)を邪魔するつもりはねえんだ。ただネレンセさんと話しをさせてもらえばそれでいい」
「話しね……まったく、あんたを引っ張り出したのは誰だい? ソボチ家か? 分家が善良ぶって顔を突っ込む話しじゃないだろう」
「だからそういう話し(・・・・・・)じゃないって、さっきから云ってるだろ……」

 おかしな風に勘繰る相手にトッドが少々うんざりした調子を声に込める。先ほどからこれの繰り返しで堂々巡りなのだ。だが相手は何を根拠にしているのか、一向に聞く耳を持たずに自分が考えたストーリー展開に固執する。

「分かってるだろ? こっちはそもそもの雇い主である本家のクレイトン家の意向に添って身柄を保護してやってるんだよ。どう考えたって正当性はこちらにある――ソボチの奴に云ってやればいい。“彼らが責任を持ってきちんと対応してくれると云いますから、ご心配には及びません”てな」
「……保護が聞いて呆れるぜ」
「あ?」

 トッドの呟きに敏感に反応した角刈りの顔から余裕の表情が消え、ヤクザものらしい剣呑な光が瞳に宿る。
 実に手慣れた豹変ぶりだ。
 たいがいの人間なら驚き戸惑い、そして何よりもその落差に(・・・・・)必要以上の恐怖を感じて一瞬でケリが着いただろう。
 だが、この辺の連中になら十分通じる眼光も高レベルの『探索者』であるトッドには“怒れる子猫”程度の怖さしかない。

「“偽の証文”で借金漬けにして、抗う気力も奪ってからなし崩し的に軟禁してるだけだろ。叩けば埃が出るやり口で、そっちこそ必死こいてオバサンをものにする(・・・・・)のはどうかと思うぜ」
「てめ――」
「どんだけ“熟女好き”だ――てな?」

 そうしてトッドが挑発的に唇の端を器用に吊り上げてみせれば「野郎……」「ふざけやがって!!」と周囲から罵声が上げられ、場が剣呑な空気に包まれる。そこへ――

「ちょいと言い過ぎだな、『五翼』の旦那よ」

 一触即発の状態を別の緊張感に切り替えたのはトッドの背後から掛けられた声の主だ。
 ボスとトッドを取り囲んでいる下っ端達と一線を引くようにして、先ほどから普段通りの位置で寛いでいたのは二人の男。彼らだけがボスと同じレベルの上等な酒瓶を手にしている事実だけで、この組織内で別格の存在として扱われていることが窺えようというもの。
 その物腰に優雅さはないが、深く腰を落ち着けている割に、悪戯に斬りかかっても無駄だと思わせる空気を身に纏っている。つまり裏組織で用心棒の類いとして飼われている『荒事師』であろうとトッドは見積もっていた。
 実際、この部屋に入ってからトッドがとりあえずその動向を気に掛けていたのは彼ら二人だけであり、場に与える影響力は発言によって周囲が静まり返ったことで十分知れた。
 まるで示し合わせたように二人がゆっくりと立ち上がり、何も気負うことなく腰の剣に手を掛ける。

「どうせ話しは平行線だ――ここは東の流儀(・・・・)で片を付けるしかないでしょう」
「そうですよ、ボス。ここは東の流儀で――俺たち(・・・)に任せてくれませんか」
「……」
「噂じゃ『五翼』は引退したらしい」

 ボスの無言を“躊躇(ちゅうちょ)”と見た左耳のない剣士が「今ならやれる」と情報を伝えながら暗に決断を促す。

「もはや『銀翼』も『震撃』もいないんですよ……ボス、そいつぁただの遺物(・・)よ」
「旦那も、ここは出直した方がいいと思いませんかね?」

 右耳のないもう一人の剣士が薄ら笑いを浮かべてトッドを見やる。
 よほど自信があるのだろう。
 そして確かにトッドも片耳のない二人の剣士の噂に聞き覚えがあった。

「『音無し』だったか? 売り出し中の剣士の噂を耳にしたぜ」
「それは光栄だなあ」
「試してみるかい、あんたにっとての“音の有無”を」

 二人が互いに間を広げるのを感じつつ、トッドは小さくため息を吐いた。
 東街区は下層階級の者が多く“貧民通り”も少なからず存在している。ここはその“通り”にあえて設けられた裏組織の根城だ。当然のように殺すつもりで仕掛け、死体は汚物処理と一緒で豚の餌にする――という感覚が通常運転の別世界である。
 トッドとしても好んで命の取り合いをしたいわけではなかったのだが。

「最後にもう一度だけ聞くぜ……話しをさせるつもりはねえんだな?」

 腰をもぞもぞさせる動きを止めて、トッドがしっかりと角刈り中年の眼光を受け止める。倍の殺気で返さないのは、取り乱させて無用な争いを引き起こさせないためであったが。

「……お前らの時代(・・・・・・)は終わったんだよ」
「!」
「やっちまえ」

 実にあっさりと角刈り中年が号令を下して、動いたのは二人の剣士(・・・・・)だけではなかった(・・・・・・・・)

 すべては二人の陽動(ブラフ)だ。

 「自分達だけで相手するぞ」と思わせて、はじめから全員で襲い掛かるつもりだったのだ。
 騎士のように誇りや矜持に頓着することなく“勝てば良い”というのが「東の流儀」であり、そこから繋がる「俺たち」とは「全員で」に置き換えられる――片耳のない剣士達が強調していたのは、下っ端達にその事を伝えるためだったわけだ。

 どらぁ!
 死ねやっ
 くたばれ!!

 これまで同じ手口を使っているのだろう。
 息を合わせて一斉に躍りかかってくる下っ端達に対し、トッドは出し抜けに後方宙返りで長椅子(ソファ)の裏に回って苦も無く避けてしまう。

「はぁ?」
「ちょ――」

 そんな真似ができるのか?! と驚き戸惑う下っ端を置き去りにして、振り返ったトッドが、抜き放った両手の短剣に白刃が叩きつけられていた。


 ――――ギギィン!!


 それは片耳のない両剣士が繰り出した手加減抜きの一撃だ。トッドの回避方法を予想したわけでなく、状況に合わせて戸惑うことなく自然に身体が動いた結果にすぎない。
 その一事こそが彼らの技倆を物語る。

「――受けやがった」
「おもしれぇなあ」

 確実に殺ったと思った斬撃を受けられて、驚いたのは彼らの方らしい。トッドは表情を変えずに、視線を一方に固定させたまま、両剣士の動きを見定める。

「驚くのはお互い様だ。俺は通り抜けるつもりでいたんだがね」
「ハッ――そこまでサービスするつもりはねえよ」

 左耳のない剣士が噛み合った剣に力を込め、それに合わせるように右耳のない剣士の剣にも力が加わった。
 背後で蠢く下っ端達の気配でトッドを釘付けにする理由は明らかだ。

「――っ」

 さすがに声を殺して、背後から下っ端がナイフを振り下ろしてくるのをトッドはどう避けたか。

 ふいに両腕の力をゆるめて、二剣の圧力に圧し負ける形で軽く身を退き、瞬時に二剣をやり過ごしたところで体術(スキル)『瞬歩』で一気に両剣士の間を抜き去っただけだ。

 周囲からすれば、すべては一瞬の出来事。

 だが、レベル7の『白羽』という領域に立つトッドからすればわけもない芸当だ。それだけ彼らとの身体能力には圧倒的な開きがあるのだ。

「味な真似をしてくれる……」
「そうじゃない」

 負け惜しみを口にする相棒に右耳のない剣士が否定することで気付かせる。認めないと死ぬぞ、との意味を込めて。

「あれが『五翼』というわけだ」
「……ふん」

 右耳のない剣士が素直に受け入れたのは、この時点ですでに、二人の下っ端が死体となって転がっているのに気付いたためでもある。

「…………」

 眉間や心臓へ精確に突き立てられた投げ短剣(スローイング・ダガー)を角刈り中年が唖然とした表情で見つめているのが少し滑稽でもあったが。
 先に見せたトッドの曲芸は、回避だけに非ず攻撃を兼ね備えていたことに見て見ぬ振りをするほど剣士も愚かではなかった。
 どういう人物を敵にしたのか、ヤクザ者達はここにきてはじめて気付いたわけである。

「おい、おめえら分かってるんだろうな――?!」

 身を震わせて、怒声を張り上げたのは角刈り中年だ。すでに退けぬ状況を、殺らなければ殺られる状況を察しての掛け声だろうが、必死さが出ている時点でジリ貧と思わせてしまう。
 だが、彼らからすればケツに火を付けるくらいが丁度いいのだろう。

「この野郎!!」
「ボケがぁ!!」

 喚くは自身を鼓舞するためか、突進していく下っ端達の影に、剣士らが身を潜めて必殺のタイミングを計る。
 だがトッドは、その戦術ごと潰しにかかる。

 右手を振って投げ短剣(スローイング・ダガー)を先頭に立つ下っ端の太腿に突き刺し。

「ぐぅっ」

 下っ端がしゃがみこんでその姿が(あら)わになった右耳のない剣士へ、左手を振って三本の投げ短剣(スローイング・ダガー)を叩きつける。

「うおっ」

 驚くは当然。
 物語の主人公でもあるまいし、飛燕の速さで飛来するダガーを叩き落とすなど、一流の剣士であっても容易にできる芸当ではない。
 攻撃と違って防御というのはすこぶる難しいものであり、まして三本もの飛来物など――。
 一本でも防いでみせた腕前を剣士の矜持として、右耳のない剣士が二本の凶器を胸と腹に受けて(くずお)れる。そこへ、

「くおあっ」

 身体ごとぶつかってきた別の下っ端を、トッドは己の芯を横ステップでずらす(・・・)と同時に短剣で迎撃し、間髪入れずに下っ端の影から疾らせてきた左耳のない剣士の剣を――正確には持ち手の手首を蹴り上げた。

「――っ」

 左耳のない剣士から剣が離れて天井に突き刺さる。想像だにせぬあしらわれ方(・・・・・・)に呆気にとられ動きを止めた剣士の傍らで、しかし、何かが蠢き立ち上がってきた。

「これで……終われるかよっ」

 肺を痛めて吐血する右耳のない剣士が、眉を怒らせ屍鬼の形相でトッドに一歩づつ迫ってくる。それを無言で受けて立つトッドは、革鎧に縫い付けられた短剣帯(ダガー・ベルト)から二本を抜き取り両手に構えた。

「『斥候(スカウト)』の俺が受ける道理はないんだがね……」

 軽口のような口調とは裏腹に、あくまで生真面目な表情で。
 その言葉さえ届いていないだろう。
 右耳のない剣士が小細工抜きで真っ向正面から襲い掛かる。
 それは純粋な剣技(スキル)『朧月』――ただし巷で『音無し』と怖れられた、高速の刃を隠し味とするものだ。


 ――――ッ
 ファ……ゥ


 黄金の軌跡が朧に月を描き、それを破砕するかのごとく三本の短剣突きが迎え撃った。

「――ハッ。なんだよ……今の真似は?」

 ごぶり、と血を吐いて右耳のない剣士が倒れた。
胸に新たに生まれた赤黒い三つの点が致命傷となって。
 今の一瞬、朧な月を描かせずに途中で黄金の斬線を消し去ったのは無論トッドの技だ。
 『音無し』と呼ばれた自慢の高速剣技をさらに上回る速さでねじ伏せられては、文字通りぐうの音も出まい。
 剣士の遺骸に手向けるようにトッドが技名を葬る。

「短剣技(スキル)『刺突閃』――俺にとっては必殺技ってやつだ」

 今回は攻撃のみに目立ったが、短剣の技は創意工夫が基本にある。それは圧倒的なリーチの欠点を克服すべく“小回りが利く”という長所を工夫で活かそうとしたからでもある。
 だからこそ、戦技の中でも稀な“すべての技が攻防一体”を旨として形成されたのが短剣術であった。つまり、今回トッドが繰り出した技は状況に応じて防御として繰り出すこともあるというわけだ。
 トッドの場合は三段突きで攻撃し、三段突きで迎え撃つという感じか。ちなみに蜂の大群から発想したと言われる『刺突閃』の理想型は、記録によれば『蜂千禍(ほうせんか)』という技に至るとある。それを額面通りに受け止めるなら――

 終わってみれば実に呆気ない幕切れだ。
 噂の剣士がその強さを霞ませられ、実力を疑われかねない形であっさり沈められてしまうとは。
 部屋に満たされていた殺気はすでにない。
 事切れた右耳のない剣士の脇を通り抜け、膝を折り、戦意を喪失した左耳のない剣士を素通りして、再びトッドは角刈り中年の前に立った。

「……あ……」

 中年は声にならぬ声を出す。言葉にならないのは、そもそも何を云いたいか本人も分かっていないからだろう。
 まだ生き残りの下っ端はいるものの、たった今見せつけられた『五翼』の――いやトッドというたった一人の圧倒的戦力に、彼の拮抗心などとっくにへし折られていた。

「最後までやるか……?」

 トッドの問いかけにぶんぶんと力一杯角刈り中年の頭が振られた。必死の形相で両手も振る。

「ネレンセさんは?」
「そこの奥だ」

 力一杯指差された方へトッドは足を向けた。
 二つ目の部屋で扉に掛けられた閂を外して中に入る。
 ただひとつの家財道具である粗末なベッドにひとりの中年女性が項垂れたまま腰掛けていた。

「ネレンセさんだよな?」
「……?」
「そうだ、俺はここの連中とは何の関係もねえ。ただわけあって、あんたに話しを聞きたくてここまできた」

 前もって用意していた小袋をトッドはベッドの上に放り投げた。かすかに聞こえた音がまぎれもない硬貨のそれと気付いて中年女性の目の色が変わる。
 面倒ごとは御免だし、聴き取りはスムーズにいきたい。ならば相手にとって好条件を提示すれば商談は速やかに成立するって寸法だ。

「教えてくれればそれ(・・)をやる」
「……何を知りたいの?」

 置かれた状況を理解していれば、飛びつく以外に手などない。幸いにも冷静な判断をするだけの能力が彼女にはあり、胆力の方も辛うじて機能しているようだ。

「あんた、クレイトン家の女中頭だったよな?」 
貴方も(・・・)“手記”を……」
「まあ、そういうこった」

 トッドが知る話しではなかったが、“流れ”からここの連中も同じ目的であったと理解した。しかもクレイトン家の者か近しい者が書き残したのであろう“手記”とやらが存在し、それが目的に近づく一番のネタであると知れたのは実に運が良い。

 “馬車の男”が口にしていた“秘密”とやらが気に掛かり、トッドは手始めにヨーヴァル商会が街の一画を購入した件について調査を開始していた。
 すぐに分かったのは、その一画が貴族の別邸があったということ。お気に入りの愛人を囲うために、大きな邸宅を建築して住まわせていたらしい。
 貴族の名はクレイトン。
 昔はそれなりの権勢を誇ったらしいが今は失脚しており、はじめは残されていた別邸も都で頻発する大火のひとつに巻き込まれて焼失し、現在に至っているというわけである。
 その貴族の別邸が何か関係しているのは間違いない。そこでトッドは当時を知る関係者を捜し始め、女中頭であったネレンセを見出したのであった。

「それで……?」

 トッドは余計なことを口にせず、ネレンセに話しをさせるように誘導する。

「“手記”ならここの連中に渡したわ」
「そうか」
「でも――!」

 取引が反故になると焦ったのだろう。手元にあった小袋を素早く手に取り握りしめ、意を決したようにトッドを見る。何か切り札があるらしい。

これ(・・)は私のものよね?」
「当然、聞かせてくれる内容によるな」

 冷たく突き放されて、彼女はごくりと唾を呑む。
いや口が渇ききっているのだろう、何度も嚥下を試みるがうまくいかないようだ。

「……あ、あいつらに云ってないことがあるわ」
「……」
「きっと役に立つものよ――あの方が遺された“隠し財産”に辿り着くために」
「――へえ?」

 思わぬ言葉だ。それも金の匂いが濃厚な。
 まるで『斥候』職としての勘がはしゃいで(・・・・・)いるようだ。
 トッドは久しぶりに、胸の奥で好奇心が疼くのを感じずにはいられなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み