文字数 361文字

際限なく続く声が辺りを覆いつくして
その間に鬱屈した風景が切り取られて
湖の淀んだ水面を眺める
淡い光は無数に降り注いで
暗い夜と数々の沈黙を照らす
昼間そこには影があって
それでも湖の蓮は視界に緑色に映っていた
冬の雪が降った日は過ぎていき
今は春の穏やかな風が吹いている
しばらくの間に煙が宙を舞い
ほとりを包み込んでいた
冬の終わりの音色は僅かな輝きを帯び
静かな部屋の中でそれは溶けていく
過ぎてしまえば何もなかった
通りを走る車は視界の外へと消えていく
街の音はしばらく続いたが
今ではもう束になって消えてしまい
気が付けば淡い月の光は
それを消し去ろうとしていた
塵になって霧散していく煙のように
気が付けばなくなってしまうのかもしれない
ただ落ち着いた音色が
辺りに広がっていく
傷ついた目は次第に暗闇に慣れて
流れていく景色の中で
まだ夢を見ている気がした
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