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エピソード文字数 608文字

 ◇◇

 サワサワと葉の揺れる音がし、冷たい風が頬を撫でる。肌を刺すような寒さに重い瞼を開く。それもそのはず、あたしは降り積もった雪の上に倒れていた。

 周囲は暗闇に包まれ、住宅の灯りも車のライトも、外灯すらない。あるのは夜空に浮かぶ月。

 一体……
 ここはどこ?

 あたしは……
 なぜ、こんなところに……?

 月華(げっか)に拉致され暴行を受け、あたしは山に捨てられたのか?

 ……いや、違う。
 あの時、大きく地面が揺れた。

 あれは巨大地震……?
 それとも……?

 倉庫の床に亀裂が走り、地面が隆起した。床の亀裂は化け物の口のように、大きく裂けた。あたしは穴の中に吸い込まれるように転がり落ちた……。

 ――そのあとの……
 記憶がない。

 体を動かそうとしたが、月華に受けた暴行で節々が激しく痛む。寒風は容赦なく傷付いた体から体温を奪う。

 ふと、無残な美濃の姿が脳裏に浮かんだ。傷付いた喜与や那知、璃乃。助けに来てくれた信也……。

「……美濃。信也……!喜与!那知!璃乃ー!」

 声を上げ名を叫ぶ。痛む体を起こし草むらを捜したが、美濃の姿も喜与達の姿も何処にもなかった。

 美濃や喜与達は……
 まさか……雷竜会に……。

 みんなを助けなければ……
 早く助けなければ……。

 (かたわ)らに落ちていた木の枝を杖代わりに、足を引き摺りながら雪の積もる山道を歩いた。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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