第6話

文字数 1,452文字

クリスティーンは学校に行ってもずっと物思いに耽(ふけ)っていた。
「クリスティーン、どうしたの?」
と眼鏡をかけた赤髪のミッチーがそう尋ねてきた時、すでに時刻は12時を指していた。
クリスティーンはやっと我にかえる。
「探偵さんは、また何か事件を考えているんじゃないの?」
少し年長のメアリーがそう言った。
クリスティーンは、にやけた顔を浮かべながら首を横に振った。
「まあ、無理はないよね。あなたのお母さん、今日記者に囲まれてたものね・・・でも、あそこの学校は結構、いろいろあるって私のお父さん言ってたわ・・・」
メアリーは得意気にそう言った。
「いろいろって?」
クリスティーンは身を乗り出してメアリーに尋ねた。
メアリーはギョッとした表情を浮かべた。
「顔が近い・・・まあ、結構このエジンバラでは有名な話なんだけど、あそこの寄宿学校の入学金は高いと有名なんだけど、どうもお偉いさんのご令嬢が多いんですって。でも歴史はないから新興系のお金持ちが多いらしいの。だから、移民とかも多いらしいわ・・・」
それを聞いてピンときたのかミッチーも続けて言った。
「あ、私もお母さまから聞いたわ。最近は特に中国系の人たちが多いらしいわ。その中国系の会社に勤めている会社の人たちが多いってことで、最近地元の人たちからは煙たがられている学校なのなんだとか・・・」
クリスティーンはそれを聞いて、バッと立ち上がった。
「どうしたの?」
メアリーがびっくりしてクリスティーンを見つめた。
「そうか・・・これか・・・」
クリスティーンは虫眼鏡を取り出した。
そして、二人に凛とした顔つきになって尋ねた。
「ちなみに、学校にいる先生とか、職員の人とかの噂は何か知ってる?」
メアリーは上空を見つめて、
「うーん、確かに・・・お父さんが言うには、そこの中国進出を斡旋している人がいて、その人の娘さんと同僚の人が教頭をやっている・・・とか言ってたような・・・」
クリスティーンは虫眼鏡を置いて、とっさにメアリーの手を掴んだ。
メアリーはまたびっくりした顔を見せた。
「ありがとう、メアリーさん!多分、これでわかったかもしれないわ!」
そこでチャイムが鳴った。
クリスティーンたちは血相を変えて、次の授業の教室に走っていった。

下校の時間。
ステラさんのお迎えの車がきて、いつものようにクリスティーンは車に乗った。
何を会話したかは忘れたが、クリスティーンはずっと窓の外を眺めていた。
すると、「ショッピングモール開発、反対!」という仰々しい垂れ幕をクリスティーンは複数見つけた。
「あれ、ステラさん、この変ってなんかショッピングモールが建つ予定なの?」
「ああ、お嬢様。そうですよ。お嬢様はあまりお馴染みがないかと思いますが、エジンバラの人たちは2年前にみんなで反対しました。なんせ、景観を崩す可能性が高いのですから。私たちスコットランド人は古い物を大事にする一方で、新しい物を取り入れてきました。特にこのエジンバラは昔ながらの経験や風習は大事にしております。ショッピングモールを郊外に作ることは問題ではありません。ただ、あまりにもガラス張りでスコットランドに似つかないものを私たちは受け入れるという選択肢はないのです。やはり、先祖あっての私たちですから。紡いでいきたいものはあるのですよ」
クリスティーンは深くうなづいた。
そして、母親にワッツアップでこう連絡した。
「ショッピングモールを開発しようとした人って知ってる?」
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