道に迷う君の夢

文字数 996文字

僕の名はフェスト。夢の中を旅しながら、みんなの吉夢を悪夢に変えて、みんなの不幸を楽しむアクマ。眠っている君は僕のことに気づけない。だから君の幸せを全部さらけ出してもらうよ。今日はどんな美味しい夢を観られるのかな、今から楽しみだよ。

今宵の夢路、きっと夢心地。




おや、あそこに嬉しそうなひとがいる。おめでとう、君は僕に出逢えたんだ。今日は君の幸せを食べてあげる。さあ、君の全てを魅せてごらんよ。


***




目の前には文字が読めないデタラメな看板とうねる道が数本。数キロ先は闇。どこに続く道なのか、どれを選ぶべきなのか検討がつかない。

私はいつもそうだ。多様な選択肢を求めるくせに、選びきれず、どれを選んだとしても最下級と呼びたくなる選択を掴み取ってきた。ハズレくじを引く才能が秀でている様子。必然的に、自分の選択を、もとい自分を信じられなくなった。この先の道も選びたくない進みたくない。私は、どうしたらいい。


***


なるほど、君は迷うことが大好きなんだね。看板の前で俯く姿、なんて可愛いのだろう。うん、わかった。君は迷いたいんだね。だけど残念、もうそれはできない。僕がここにいるからね。じゃあ、悪夢の世界へおいでませ。


***




目の前には文字が読めないデタラメな看板とうねる道が数本。数キロ先は闇。どこに続く道なのか、どれを選ぶべきなのか検討がつかない。

けれど、いつもと違うアイデアが湧いてきた。

この中で、私が私に納得できる道は、どれか。


先は見えないし、どんな結果を得るかもわからない。だからこそ、少し考えてみることにする。私が好きなことは何か。何をしている時に生き生きするか。どのような環境下で集中しやすいか。この大事な時間を、何に捧げたいか。

ふむふむ。確信も自信もないけれど、こっちの方向だと思う。いえ、こっちの方へ進みたい。

少なからず、流されて選んだ道ではないから、どんな結果であったとしても私が私の判断を責め自己評価を下げることは、もう、ないと思う。間違えてもいい、失敗してもいい、後悔も少しだけならしてもいい。完璧じゃなくていいから、私は私を選んであげたい。


***


うわあ、歩き出した。大好きな迷いとサヨナラしたんだね。立派な悪夢だ、とっても美味しい。嬉しいでしょう、大好きなことができなくなって。楽しいでしょう、いつもと違う君。


さあて。次は誰の夢を観ようかなあ。
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