第22話 シンディ・ローパー

文字数 855文字

 武道館のコンサートまで、行ってしまったのである。
 当時大学生だったぼくは、サークルの先輩とふたりで行った。
 ちょうど「ピースボート」という団体の船になんかにも乗った後だった。パラオ諸島(今はベラウ共和国になっていると思う)の一軒のショップで、シンディ・ローパーの顔写真がプリントされたTシャツを買ってしまってもいた。

 そのシンディ・ローパーの顔写真のTシャツを着て、ぼくはサークルの先輩と武道館近くの駅で待ち合わせたのである。
「もう、熱狂的ファン、という感じですねぇ」先輩が笑って言った。
 今から思い返しても、もう二度とあんな行ないはできない。
 シンディ・ローパーのTシャツを着て、シンディ・ローパーのコンサートに行く…

 案の定、まったく記憶にない、コンサートの中身。ぼくは何を見ていたのだろう?
 そもそも何で行ったのか? 好きだったのだろうけれど。

 シンディ・ローパーは、中島みゆきが異常にハジケて歌ったら、もしかしたら、ああなるのかもしれない、という気がしないでもないミュージシャンだった。
 ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで、たしかロディ・パイパーというプロレスラーのセコンドなんかにも付いて、激を送っていた姿も、テレビで見た気がする。
 ともあれ、’80年代に、確かに存在、大きな何かを発散していたミュージシャンだったと思う。

 そのアルバム「トゥルー・カラーズ」は、FMから録音したカセット・テープで聴いていた。2、3年前に、TSUTAYAでレンタルして、MDに録音してしまったりした。
 マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」とか、「タイム・アフター・タイム」、最近自動車のCMで使われている「アイコ・アイコ」なども入っているから、けっして悪いアルバムではない。

 ’80年代に、出てくるべくして出てきたアルバムであり、それがぼくにとってのシンディ・ローパーだった。
 表面を、スラ~ッと流しそうめんみたいに流れるだけ、という印象は拭えないが。
 でも、そういう時代だったんだナ、なんかサ。
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