第25話 運命

文字数 1,637文字

君はスタッと床に着地した。その後間をおいて、ゴロゴロと卿の首が床を転がり、マグマにドポンと音を立てて落ちた。

君は膝をついた。その後、バタンと倒れる。

安堵と疲労が一気に襲いかかって来て、目眩に襲われる。


君のぼんやりとした視界に輝くような銀髪が映り、君は目を閉じる。
レオは君を抱き上げると、シュッと跳び上がった。

君の後ろで、サーター卿の巨体が倒れる音がしたと思うと、地面がガタガタと揺れた。
さっきのところで倒れていたら、君は下敷きになって死んでいただろう。

「さっさと戻ろう。宿命の水晶玉とやらを回収してさ」
レオはそう言うと、ナルフの近くまで走っていった。
「おい、大丈夫かい?」
ナルフは顔を上げた。
「我は、唯、魔法を使いすぎた…。少々、疲れたのだ」
「そうか、歩けるかい」
「ああ、問題ない」

レオはナルフが立ったのを確認すると、レオは君をそっと床に寝かせ、サーター卿の死体に近づいた。
「これだこれだ」
レオは、卿の懐に大事にしまってあった水晶玉と、一緒になって入っていた銀のベルを自身のナップサックに投げ込むと、君のもとへ急いだ。
「戻ろう」
彼はもう一度君を抱き上げた。ナルフもレオに続いてヨロヨロと階段を登った。


君たちがノーンのいた玉座に戻ると、ヴァルキリー達が君とナルフをベッドへと素早く連れて行った。レオはノーンの前に跪き、宿命の水晶玉を彼女に手渡した。
「サーター卿は、倒されたのですね」
「ギリギリでしたけど」
レオはそう言って弱々しく笑った。ノーンはそれを聞くと、目にいっぱい涙を浮かべて頭を下げた。
「レオ、今日はゆっくりと、あなたの仲間とともに休みなさい。十分に休息が取れた後にでも、私と話をしましょう。あなた達、お客様を連れていきなさい」
ノーンがそう言うと、一人のヴァルキリーがレオのもとに駆け寄った。
彼女は、こちらです、と言って横の廊下をさすと、部屋までの道を案内した。
「あなたが、本当に、あのサーターを倒したのですか」
移動中、彼女はレオの前をあるきながらそう尋ねた。
「はは、倒したのは僕じゃないさ。空気が読めない、ちょっと抜けてる女の子が倒したんだよ」
彼女はそれを聞くと、わっと涙を流した。
「あなた方は、私ら全員の命の恩人でございます。私らもあなた方とサーターを倒しに行きたかったのですが、ノーン様に行ってはいけないと…」
彼女は涙を慌てて手で拭うと、首を振った。
「いけない、私ったら。お疲れのところ、申し訳ございません。私はノラと申します。先にお食事にいたしましょうか、それともお体をお流しになられますか」
レオはうーんといって、こう答えた。
「エイミーに会わせてくれ」
彼女はそれを聞いて頷いた。
「こちらでございます」

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君は目を覚ました。
最初に目に入ったのは、白い天井、そして流れるような銀髪。
「あ、起きたかい?」
レオは君の顔を覗き込むようにして君を見ていた。君は一つあくびをすると、上体を起こした。
「ナルフは?」
君は隣のベッドが空なことに気づいてそう聞いた。
「アイツなら風呂だよ。大事な翼が汚れたとか何とか」
レオはそう言って肩をすくめた。
「レオは、ずっとここにいてくれたの?」
君がそう聞くと、レオはまあねーと言って頭を掻いた。
「どうせ暇だしさ」
君はそれを聞いてクスッと笑った。
「またそんな事言って、レオって素直じゃないよね」
君がそう言うとレオは顔をしかめた。
「どういう意味だい?」
君は笑いながら言う。
「一人で御飯食べるの寂しかったんでしょ」
君がそう言うとレオは目を点にした。が、その後拍子抜けに笑った。
「そうかもしれないね」
「ほら言った」
君もそう言うと、笑い出した。
「私は先にシャワー浴びてくるから、それまで一緒にご飯の約束は待ってて」
君が言うと、レオはノーと首を振った。
「僕もシャワー浴びるから、気使わなくていいよ」
そう、と君は頷いて、枕元に置いてあった着替えを手にして風呂へ向かった。
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登場人物紹介

エイミー、主人公、ヴァルキリーの少女。

レオ、エルフ。エイミーの仲間。顔が良い

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