プロット

文字数 2,020文字

起:
 中学一年生の畑中蓮華は、猫の被り物をしている変わった男子。ある日カナダから、帰国子女の転校生がやってくる。天真爛漫なお笑い大好き女子、佐竹日向だ。日向は蓮華の被り物姿を見るやいなや、自己紹介の最中にも関わらず「アタシと芸人になりましょう! ぜひ、相方になって!」とせまる。
 休み時間も、レンゲを追い回す日向。「レンゲ! その被り物、サイコーね! 猫にしたのはなんで?」「わざわざ、カメレオンやロバにするやつがいるか。無難だから、猫にしただけだ」「なるほど! 猫は老若男女が好きだものね!」
 日向は蓮華の行く先々に、神出鬼没にあらわれては「相方になって」としつこく勧誘した。日向はクラスの笑いの中心。蓮華はすみっこで静かに読書。日向がなぜ自分にこだわるのかわからない。
「お前はこの猫の被り物が珍しいから、おれにこだわってるだけだろ」「助けてくれたじゃない。転校初日の朝、道路で野生のハシビロコウに威嚇され、動けなくなっていたアタシを。わざわざ知らない人にアタシを助けるよう声をかけて自分は、さっさと行ってしまったみたいだけどね。その被り物で、アタシをさらに驚かさないように気をつかってくれたんでしょ」「……ハシビロコウじゃなくて、近所の家から逃げ出したデカい犬な。なんだよ、ハシビロコウって」「ジョークよ! そっちのほうがワクワクするでしょう」
 ついに蓮華は、日向の勧誘に折れ、相方になることを了承したのだった。

承:
 しかしその後、日向は愕然とする。転校先に「お笑い部」がなかったのだ。新しい部活を作るには、部室を自分で確保しなくてはならないらしい。
 〝新しい部活を設立するには、今ある部活に勝負をいどみ、勝利をすること〟。それが部活設立のための条件だった。
「おれたちは二人しかいない。数で負ける部活には勝負はいどめない。今ある部活で少人数で、おれたちでも勝てそうな部活を探して……」「レンゲ! それでは意味がないわ。アタシたちはなんとしても成果をあげなくてはならない。つまり弱い部活に勝っても意味がないのよ」「いや、そんなことはないだろ。勝てればそれで……」「行くわよ! サッカー部をくだし、アタシたちの強さを全生徒に見せつけるのよ!」
 日向はサッカー部との勝負にて、とんでもない運動神経を発揮し、見事に勝利。だが、顧問の先生に「サッカー部を潰すわけにはいかない。大勢の部員が路頭に迷うことになる」と特別校則を発動。「演劇部と共同で部室を使え」といわれる。
 日向は納得がいかず、すかさず演劇部に勝負を挑む。「一週間後、舞台で観客をよりたくさん笑わせたほうが勝ちよ!」舞台にて二人は、演劇部に僅差で勝利する。見事、部室を手に入れる。と思ったが日向は、それを辞退。
「アタシたちの実力を校長先生に知らしめられればそれでいいの。部室なんて、教室のすみでもいいのよ。お笑い部を認めてくれさえすれば!」
 日向はサッカー部や演劇部と、いつのまにか仲良くなっていた。「みんなをハッピーにできない芸人なんて、芸人じゃないもの!」
 あまりにも堂々と進む道を切り開いていく日向に、蓮華は圧倒されていた。

転:
 演劇部に勝ったにも関わらず、校長は「お笑い部は作れない」という。なんと校長は、お笑い嫌いだったのだ。「笑いは学校の風紀を乱す」と断固反対されてしまう。落ち込む日向。
 その時、蓮華がクラスメイトにからかわれている現場を目にする。「おい、被り物とれよ」「そんなんで学校に来ていいのかよ」蓮華は生まれつき顔に大きなアザがあり、それが嫌で被り物をしていたのだ。「アザのせいで、うまく笑えないんだ」「むりに笑う必要なんかない! そのかわり笑いたいときがきたら、アタシがぜったいに、必ず、笑わせてあげるわ!」
 サッカー部・演劇部とともに、二人は「どうやったら、校長にお笑いを好きになってもらえるか」を考える。日向は終始頭を抱えていたが、冷静な蓮華には、とある確信があった。
「なんとか、〝アレ〟がわかれば……」

結:
 二人は、校長にとっておきのギャグを披露する。蓮華が被った、被り物。それは猫ではなく、精巧に作られたハシビロコウの被り物だ。ペリカン目ハシビロコウ科ハシビロコウ属に分類される鳥類である。ジーッと立ちつくし、その深い黒に満たされた瞳で校長を見つめ続ける。
 すると、校長は大笑いをはじめた。「人にはぜったいに〝笑いのツボ〟ってものがある。どんなにカタブツな人間でも、それがわかればイチコロってわけだ」
 蓮華は以前、校長がカラスにジッと見つめられ爆笑しているところを目撃していたのだ。校長は負けを認め、お笑い部の設立が決まった。
「おれ……被り物、取ったほうがいいよな」「ふふ。その猫を取ったら、生まれたときのレンゲになる。そして猫を被ったら、アタシと出会ったときのレンゲ。どちらも、とっても魅力的じゃない!」
 二人のコンビ名は「ハシビロコウ」に決まった。
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