詩小説『大学四年生』3分の青春。全ての学生へ。

エピソード文字数 916文字

大学四年生

授業をサボって、非常階段へ逃げ込んだ。身を隠したくて。独りになりたくて。

居眠りばかりしてたら、単位も取り損ねた。

煙草を吹かす。階段の隙間から顔を覗かせる蒼い空を見上げた。思わず眼を細めるくらいに眩しくて。くわえ煙草のまま座り込んだ。

顔馴染みの居ない教室は、なにかが変わろうとしていることを教えている。もう、あんなに、はしゃぐこともなくなるだろう。もう、あんな無茶、出来ないだろう。「はい、卒業、解散、解散」なんて都合が良いぜ。

煙草の煙が浮かんで伸びた。それで蒼い空に溶けてしまった。黄昏が俺に迫ってくる。後悔は道連れに誰も知らない旅が始まる。

朝まで呑み明かしたってどこか寂しくて。
皆、顔を揃えて黙り込むその空間が寂しくて。
家路に着く友の、その背中が寂しくて。
どうやら俺の身体はぽっかりと大きな穴が開いてしまったみたいだ。

俺とお前、ポンコツの車で夜の街へ繰り出したよな。
あのスタジアムではしゃいだよな。
誰かのゴールを観て騒いでた。まるで自分が何かを手に入れたかのように。
揺れることのないゴールネットの前で。

煙草を切らして紙の箱を握り潰す。コーラの泡みたいにこの胸は溢れそうだ。
バスケの話でも良い。女の子の話でも良い。いつもと変わらないくだらない話を隣でしてくれないか? いつもと変わらない顔して聞いてやるから。

だって、寂しすぎるんだよ。忘れ物を取りに行ったら、渡り廊下に誰も居ないんだぜ。静か過ぎる一本道が終わりを知らせてるんだ。

いったい、何に卒業出来たというのだろうか? あの娘にもこの気持ちを言いそびれたままだ。あの席を見つめて、髪を掻き毟り、思い出の曲をイヤホンで聴いてるんだ。

次の居場所も見つからないまま。思い出となったこの場所に立ち止まったままでいるんだ。まだ君に間に合うかな?

いや、やめとこうか。

なんでもないや。

煙草を切らした。一本くれないか? お前の加え煙草にも火をつけてやるから。話をしないか、いつもの非常階段で。

あの娘に伝えてくれないか、この気持ち。返事は聞かないから。

ごめん、俺、泣いてるみたいだ。

空に溶けてった煙の中で。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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